11.狂気
「お!
カレーがあるじゃねえかー!
ここの好きなんだよー!
あー、くそっ!俺はたけのこ派なんだよなー!」
悟と新一が男性を尾行している頃、京也たちはリュックから買った資材を取り出して中身を確認していた。
「あ、でも、新一君が、カレーは匂いが強いから、早いうちに冷たいまま食べるって言ってたよ」
弥彦がテンションを上げる京也に口を挟む。
「んなこと分かってるよ。
てか、俺は温かいご飯に冷たいレトルトをかけるのが好きなの!
むしろ大歓迎だぜ!」
「そ、そうなんだ、お、面白いね」
喜ぶ京也に、たじろぐ弥彦だった。
「で、でも、警察の人があんなにいて良かったよね。
あそこにいれば、安心なんじゃないの?」
弥彦がそう話すと、京也は嫌そうな顔をした。
「それはやめとけ。
あんなとこ、そう長くは続かねえよ」
「どういうこと?」
吐き捨てるように答える京也に、香織も聞き返す。
「きっかけは、そうだな。
スーパーとかの在庫が尽きた時か、略奪者が乗り込んできた時か、鬼に向けて警官が発砲した時か、もしくは、警官か商店の店主が逃走者に選ばれた時だな」
京也は金髪の頭をがしがしかきながらそう述べた。
「人間ってのはアホな生き物だ。
群れれば群れるほど一人を大事にしなくなる。
しかも、元々は全然知らない他人だ。
今は正義感やら使命感やら、こうなる前の倫理観やらで体裁を取り繕っているが、そんなものはすぐに剥がれる。
残ったものは利己だ。
自分と、自分が手を伸ばして守ってやりたいと思う者以外はどうでもいいという身勝手な現実だけだ。
たぶん、あそこが一番最初に崩れる集まりなんじゃねえか?
だから、新一たちも物資を手に入れたら、すぐに戻ろうとしたんだと思うぜ?
尾行に気を付けながらな。
あいつらは、他人なんて信用ならないってことを、よく分かってるんだろうよ」
京也の言葉に、弥彦はぽかんと口を空けていた。
「京也、あんた、意外と頭いいのね」
「意外とは余計だ」
香織の皮肉に、京也はけっと言いながら返していた。
「2人とも、大丈夫かなぁ」
香織は荷ほどきの手を止めて、窓から見える空を見上げた。
「くそっ!
あいつらっ!
最悪だっ!」
その頃、悟と別れた新一は、工場から見えた光景に声を抑えて悪態を吐いていた。
そこでは、並べられた子供が、呼び出された鬼によって蹂躙されていた。
あの時の、体育館のように。
「薄汚い大人どもがっ!
そんなに自分勝手にしたいなら、俺もそうしてやる。
全員、必ず惨たらしく殺してやるからな」
自分の瞳に狂気の色が覗いていることに、この時、新一はまだ気付いていなかった。




