第03話 各藤 愛・・・キッチンで迷子のレシピ
「家庭科の授業、今日も出せなかった・・・」
各藤 愛は、自分のスケッチブックを閉じた。
そこに描かれていたのは、料理のイラスト。見るのも描くのも好き、でも、実際に作ろうとすると、指が止まる。
「どうせ焦がすし、手順もわからないし・・・」
料理が"できないこと"が各藤のなかで、人としての未完成みたいに感じていた。
その日の放課後偶然クラスメイトの小林恵子がスケッチブックを開いているのを見かけた。すごく自然に描かれていて、魅了した。
「あの人最近変わったなぁ」各藤のなかに少しだけ"憧れ"が芽生える。
帰宅後、各藤は、スマホに向かって言葉を打った。
まいどん:料理のできない自分を責める。
〈マイドント ユーミードゥ〉を起動しますか?
送信 光 接続
《接続:合山 光》
交換条件:明るく見せる人の"自己肯定力"を貸し出します。
「光ちゃん?あの?いつもほんと明るい」
違和感があるまま呪文を唱える
my don't you do me
胸の奥があったまった。
♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦
各藤は焦げ付いた卵焼きを見ながら
「ちょっと形かわいいかなぁ・・・」
笑えた自分にちょっとびっくりする。
"ダメな自分"にちょっとだけ発見ができた。
次の日、各藤はクラスにホットケーキを持ってきた。
不格好だけど、メープルシロップがたっぷりかかっていた。
"昨日のヤツよりマシよね"心の中で呟き、笑顔はぎこちなくても、本物だった。
数分後、スマホが振動する。
《交換完了》
あなたの変化:「できなくても、つくっていい」と思えました。
チェンジ・エンドレス




