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逃亡代行  作者: 横瀬 旭
第三章(二)
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死霊の宿

https://note.com/yokoze_asahi/n/n2a8c1951f8a6

 予約したホテルを目指し、バスに乗り込んで一時間ほど経った。海沿いの駅からバスに乗り込んだ時は暑くて防寒具を全て取ろうかと思っていたが、標高が高くなるにつれ気温が下がり、現在は暖房の効いた車内で防寒具をしっかり着込んでいても少し体が震えている。


 ホテルの前のバス停でバスを降りた。湖の畔にあるホテルで、湖の向こうには高い山が聳える。


その山の麓には森林があり、その森林は「スーサイド・フォレスト」という名で自殺の名所として世界的に有名だ。湖畔にあるいくつかのホテルは、森林で死にきれなかった人たちが営んでいる。


 私が予約したホテルもそのホテルだった。予約時間ちょうどにホテルに入り、カウンターには従業員がいた。宿帳を記入し食事の時間や場所、お風呂の場所を説明され、最期に


「知っていると思いますが、従業員は樹海で死にきれなかった人たちです。部屋の外やお風呂で人気もないのに音が鳴ることがありますが、気にしないでください」


と言って鍵を渡された。


部屋に入り窓からの景色を眺める。湖と高い山が一望できる。山に向かって仁王立ちして腕を組んでみても、その山の高さや大きさには惨敗する。湖のすぐ側には、野営の準備をしている人々がいた。


 夕食の時間までテレビを見て時間を潰し、時間ちょうどに夕食会場であるレストランへ向かった。


すでに食事が用意されていた。卓上に自分の部屋の番号が書かれた立て札があり、そのテーブルにつく。


食事は和食だった。焼き魚や刺身、天ぷらや漬物によくわからない食べ物。この時期にはありがたい鍋もあった。


食事を終え、部屋に戻りビールを飲んで早い時間に寝た。


 翌朝、早朝に目を覚まし日の出の時間を見計らって屋上にある露天風呂へ向かった。


辺りは少しずつ明るくなっている。風呂からは、山の麓に広がる森林と、その手前の湖、それに顔を向けて止まっている自動車と日の出を待つ人々がたくさんいた。


 日の出の時間を少し過ぎると、稜線から光の粒が溢れた。


一日で一番寒い時間に、温かいお湯を着て日の出を拝む。これ以上のことは無いと思った。


 朝食も同じように提供された。チェックアウトの際はカウンターに鍵を置くだけだった。


チェックイン時に会った従業員はどこに行ったのだろうか。

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