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逃亡代行  作者: 横瀬 旭
第三章(一)
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岬めぐり

https://note.com/yokoze_asahi/n/n0d9a2169202d

 赤い電車から降りて駅を後にした私は、やはり海沿いの道を歩いていた。


駅前のコンビニで缶ビールを買い、日暮れ時の道をゆっくり歩く。前にもこんなことがあったような気がする。


 駅からだいぶ離れると、車と人の通りは少なくなった。


岬めぐりのバスが私を追い越して、前方にあるバス停にハザードランプを点けて停車した。


乗客が降車するのかと思いきや、後続車を全て先に行かせた後に、発車した。


 しばらく歩いていると、上り坂が多くなり、海が見えなくなった。農道に折れる道があったため、そちらへ歩みを進めた。


すっかり日が沈み、何を作っているのかよくわからない畑が道の両側に広がっている。


街灯のない道に入り、道幅も普通乗用車が一台しか通れないほど狭くなった。


 私は月の暗い明かりを頼りにつづら折りになっている道を進む。誰ともすれ違うこともなく心細い道を、ただ一人で歩き続けている。


 遠くの方に灯りが見えた。


私は少しだけ心強くなった。一人で真っ暗な道を歩いている私以外の存在が、道の先で光を灯している。


 光の主はやはり灯台だった。緑色の大きな瞳で、狭い湾の入口を照らしている。人里離れた岬で、ただ一人立ち、海を照らす姿は、とても凛々しかった。


「君はこんな寂しい場所で自分の仕事を全うして立派だね」


 私は彼の前に立ち、海を眺めた。船の灯りらしきものが、ポツポツと闇の中に落とされている。


海を見たことがない人間には、これが海だとは思えないのではないか。


真っ暗闇の広大な大地に見えなくもない。


 長く歩き続けて疲れ果てた私は、灯台に身を預けてしばらく眠った。


私は灯台守の夢を見ていた。

剱崎灯台

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