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なにがともあれ、大企業督川ホールディングスに到着した。
圭たちは裏口から入ることにして、警備員の様子をうかがっていた。
警備員といっても中身は麻倉組の組員がほとんどだろうと統一は言う。
圭「ふぅ、疲れた。ところで督川ホールディングスって何の会社なんだ?」
様子を伺ってから、2、30分くらいだろうか。
集中力が切れてきた圭はひょんなことからこんな質問をした。
統一「それはな…」
もも「それは?」
統一の真剣な表情。
震える拳はそれを物語る。
強ばった雰囲気。
溢れてくる緊張感。
統一の頑なに開かなかった口が開く。
統一「知らん」
圭「紛らわしいわっ!」
秋次「なんですか、期待させておいて…」
呆れて秋次は言った。
統一「いや、でも裏で闇と通じているのは確かや」
全員は息を飲む。
圭「闇っていうのがよく分からないんだが、簡単に言えばヤクザとかそういうのか?」
秋次「それもありますけど、闇は外国のマフィアやいろんな組織でできている巨大組織なんです」
圭「へぇ…目的は?やっぱり麻薬とかか?」
「それだけじゃないわ」
女性の声に全員が凍りつく。
聞いたことがある。
それは凛々しく、たくましい女性。
圭「あ、あなたは…」
圭「冷夏さん!」
圭たちに声をかけたのは冷夏だった。
いつの間にか周りの組員はいない。
組員と交替ごうたいで見回っているようだ。
隠れていたのだが、見つかる。
冷夏の眼力はやはりただ者ではない。
続けて冷夏は言う。
冷夏「闇というものは非日常そのもの。闇の本質は平和にすごしているものには見えない。破滅、絶望、そして、それを裏と表の天秤にかけるように研究であらゆる人物を復活させようとしている」
秋次「ある研究ですか?」
統一「闇に関係している研究っていえば…。まさか、クローン技術か!?」
統一は知っていたように言った。
冷夏「ピンポン!さすがね」
圭「クローンって、あの羊のDollyみたいなのか?」
圭はとりあえず、高校で習ったことをいう。
冷夏「そう、でも人間でのクローン開発は禁止されている…。でもね、闇、あなたが知らない世界ではそれを平気でしているのよ」
統一「厄介やな…」
統一は思い込むように顔をしかませる。
冷夏「そして遂に日本でも実験台にあのお方が復活した」
秋次「あのお方?」
冷夏「おっとそこまで。ここから先は私を倒してから聞きなさい…」
パチンッ!と冷夏が指をならす。
すると、冷夏の周りに麻倉組の組員が現れた。
もも「まだいたの!?」
冷夏「前に言ったように壊滅させてあげるわ。さあ、休む暇は与えない。いくぞ、本田圭!」
圭「ちょ!俺は…」
圭は冷夏との勝負は避けたい。
『冷夏は嫌々こんなことをしている』
そう思ったからである。
冷夏「ハァァアアア…」
冷夏から白い息が出る。
まだそんな季節ではないのだが、冷夏のあまりの熱さで蒸気が出ているのだろう。そして、冷夏は放つ。
滅裂顔面掌!
冷夏は気を溜めて素早く圭の顔を狙う。
圭はそれをすれすれで避ける。
圭「掌底で俺の顔に致命傷を負わせる気か」
でも、『明らかにおかしい』
圭はそう思った。
一向に圭は冷夏に手を出そうとしない。
ついに、冷夏は言った。
冷夏「あんた、私に本気出さないと死ぬわよ!」
冷夏は真剣な表情そのもの。
冷夏の瞳はギラギラと輝き、何かを覚悟したような、そんな顔だ。
圭は確信する。
圭「なぜそんなに…」
冷夏「え」
圭「なぜそんなに僕に本気にさせようとするんです!?」
冷夏「…」
『冷夏は本気を出さないどころか、自分自身を犠牲にして、自分を本気にさせようとしている』
圭はそう確信した。
圭「そのまま俺を殺したらいいのに…」
冷夏「…」
圭「いつもの冷夏さんらしくない。いつも俺を殴ったり蹴ったりしても平気で笑ってる。それが冷夏さんだろ!!」
圭自信でも変なことを言っていることは分かっている。
だが、それが冷夏なのだ。
今の冷夏はどうみても『自分を本気で倒してください』と言ってるようなものだ。
圭「そんなの冷夏さんじゃないだろ。なあ…」
圭は冷夏の瞳をずっと見つめる。
本当の冷夏を見つけるために、本当の冷夏を助けるために。
圭「一緒に戦ってくださいよ!!!!」
圭はそう叫ぶ。
圭と冷夏の距離は5メートル。
圭はただ叫ぶ。
冷夏「…」
冷夏は黙りこむ。
「…」
冷夏を誰かが見ている。
陰から誰かが。
冷夏「…!」
圭「どうしたんだ?」
冷夏は何かを見ていたような気がした。
冷夏「…分かったわ」
冷夏そう呟く。
圭「本当ですか!?」
覚悟の表情で。
冷夏「私の答えはこれよ」
そう言った瞬間、冷夏は圭に向かう。
八卦花散弾!
冷夏は殴り掛かる。
圭「うわっ!」
血しぶきがあがる。
圭は槍の先を見る。
鋭い槍は冷夏の脇腹に刺さっていた。
圭「れ、冷夏さん!!」
思わず反射で圭は振りかぶってしまった。
冷夏「ま、負けたわ…」
冷夏は吐血し、倒れる。
傷口を抑えてそう言った。
秋次「れ、冷夏さん!血が!」
周りの敵はすべて倒れている。
すべて片付いたようだ。
まだ戦場にいるのは二人。
圭「れ、冷夏さん…何で…」
圭は声を震わせて言った。
冷夏はわざと槍を食らった。
本気の冷夏ならそんなことでは負けないと圭でも分かる。
ポタポタと地面の一ヵ所一ヵ所が赤に支配されていく。
冷夏「な、何いってん…の…ハア…ハア…あ、あんたが…勝った…のよ…」
冷夏はうつ伏せに倒れる。
圭「れ、冷夏さん!!」
もも「冷夏さん!」
統一「は、はよ応急処置を…」
周りの敵を倒したももたちはすぐに冷夏のもとに駆けつける。
その時、麻倉組員がまた中から出てきた。
圭「麻倉組…ゆるさない!!!!!!」
圭の顔は鬼そのもの。
麻倉組員は思わず後ずさりする。
圭は麻倉組員に飛びかかろうとした。
すると、何かが圭の足首を掴んだ。
圭「冷夏さん、まだ…」
冷夏がうつ伏せになりながら、精一杯掴んでいた。
そして言った。
冷夏「私のことはいい!早く行け!!」
圭は後悔した。
冷夏を少しでも疑ってしまった自分を恨む。
圭「な、なんで…。だ、だって…冷夏さん…」
冷夏「いいから早く!」
圭「だ、だめです…。僕には冷夏さんを見捨てることはできない!」
冷夏「見捨てる?まるで私が死ぬみたいな言い方ね」
圭「…!」
冷夏「冗談じゃないわ!」
統一「お、おまえ…」
もも「冷夏さん!?」
統一とももが驚いたことも無理はない。
冷夏が血だらけになりながらも立ち上がる。
そして、言う。
冷夏「私は生きるの…生きてあんたたちと関ヶ原を止めるのよ…。死んで…たまるかァァァァアアアアアアアアアア!!!!!!」
冷夏は莫大な気を放つ。
向こうにいる麻倉組員が震えるほどに。
地面が震撼している。
冷夏は立ち上がる。
統一「しゃあないなぁ。圭、お前は先に行け!ワイとももと秋次は冷夏を援護する、心配しないで行ってこい!」
統一はそう言って、圭の背中をポンッとたたいた。
圭「…」
圭はためらったが、全員のために会社の裏口の中に入っていく。
秋次「行ったみたいですよ?」
もも「冷夏さん、大丈夫?」
冷夏「だ、大丈夫よ。あいつら、いい度胸だわ。あいつらに本当の戦いというものを教えてあげるわ!!!」




