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圭「俺があいつをやる」
圭は壁に掛けた練習用の槍をつかんで構える。
服部家の反逆者。
たぶんあの時の圭の発言からだろう。
圭は責任を感じていた。
蒼はリーダー格だ。
ならば自分がやらなければならない。
圭は自分をそう責める。
しかし、圭の前にももが立つ。
もも「いや、ここは私がやるよ」
一同は驚く。
ももが戦うところなど見たことがない。
圭「何で…!」
もも「だって、圭は刃物と戦ったことがないでしょ?」
刃物という者は相手の動きを大きく制限される。刃物と対峙したことがないものなら尚更だ。
圭「それはお前も同じじゃないのか!」
ももはその答えをニッコリと笑顔で返す。それが何を示唆しているのか、圭には分からない。
もも「自分の問題は自分で片付けたいの」
あくまでこれは圭の発言からではなく、服部家のことからだろう。
圭「分かった」
圭はどうしても曲がらないと思い、止めるのを断念した。
蒼「そりゃ仕事が早く済みそうで助かるわ。それじゃあ、もも以外の方たちは遊んでなさい」
そう言って蒼は指をパチンとならした。
周りの黒装束が動き出す。
そして、一斉に家の中に入ってくる。
ここは4階で、黒装束が来た距離も結構ある。すごい跳躍力である。
冷夏もああやって入ってきたのか、と圭は驚かされる。
ももが言う。
もも「私に構わず自分を守って!」
黒装束はかなり速い。
あっという間に圭の懐へと入った。
圭「ひっ!?」
手にはクナイ思い切り黒装束はそれを圭へ突き刺そうとする。
圭は思わず恐怖心で怯んでしまう。
冷夏「八卦翔飛弾!」
そこへ冷夏がサポートに入る。
圭の目の前にいた黒装束はボコボコに蹴られて横に吹っ飛ぶ。
冷夏「自分を守ろうとしても無駄よ!相手が刃物ならそんなの一突よ」
冷夏は圭へとそう忠告する。
そこで待ってなさい、と圭に告げた冷夏は敵に向かっていった。
秋次「風の刃!」
風が黒装束を2人吹き飛ばす。
そして、秋次は敵2、3人にまた向かっていった。
圭は茫然としていた。
自分は何も出来ていない、自分の発言によってこんなことが起きているのに。
自分はまだ山に籠っていた方がいいのではないか、と後悔する。
統一の言っていることは正しかった。
こんなことじゃあ、何も守れない。
もも「蒼も戻ったのね。しかも私を殺すって…」
蒼「当たり前じゃない。あなたは今、東軍から出て行った裏切り者。服部家ではもう、その話題でもちきりなんだから」
笑顔で蒼はそう言う。
もも自身もこういうことは予想していた。それが思っていたよりも早かった。
圭の家も特定されている。
伊賀衆。
ももが思っていたよりも衰えてはいない。情報収集能力はずば抜けている。
蒼「私たちは古来から犬として育てられ、服部という自体の存在を隠して情報収集をしていたよね。でもね半蔵様の残留思念の力で人間に戻れる機会を得られたの。また始まる関ヶ原の合戦のために。そのくらい分かっているのでしょう?はい、ご丁寧な説明も終わり。反逆者はあなたで最後よ」
もも「そんな…」
人間になった理由。
どうせそんなことだとは思った。
しかし、蒼は昔からの仲間だ。
正直、戦いたくはない。
そう思っているうちに蒼は襲ってくる。
蒼「鎖鎌!」
蒼は鎖鎌をももへ投げる。
鎖鎌はももの体に巻きついた。
もも「あっ!?」
蒼「そのまま切り刻んであげるわ!」
鎖が巻き付くにつれ先についている鎌がももを捉えようとする。
一突き。
鎌が思い切り突き刺さった。
蒼「………木。変わり身!?」
しかし、鎌はももを捉えてはいなかった。巻き付かれているのはももではなく木だった。
もも「私はこんなこと…したくない」
蒼「なっ…!?」
ももは蒼の後ろにまわりこんで蒼の両手を後ろでつかんでいた。
蒼「痛っ!」
もも「蒼止めよう?蒼は私の友だ…」
蒼がいない。
ももがつかんでいたのは木だった。
もも「え…?」
いつの間にか蒼はももの後ろにいた。
蒼「だって、ウザいじゃん!」
もも「えっ…」
ももは目を丸くする。
もも「ウザイって私が…?」
昔から仲がよかった。
苦しいときも哀しいときもいつも一緒だった。
もも「蒼…!どうしちゃったの?それって服部家に命令されてるだけでしょ?」
ももは蒼がそんなこと言うわけないと思っていた。
信じたかった。
今、蒼は本気で言ってはいないと。
しかし、蒼から返ってくる答えはあまりにも辛辣だった。
蒼「はぁ?どうもこうもしないわ。私はおまえが昔から嫌いだった。それだけよ」
蒼は妖笑する。
ももは体が硬直して動けない。
蒼「もう分かったでしょ?」
ももは信じたかった。
ここで何もしなくても蒼が手を止めてくれると。
しかし、もし止めなかったら。
後ろにいる圭はどうなるのか。
もも「…」
ももははっきりしなければならない。
昔を守るのか、今を守るのか。
答えは出ている。
だが、それでは蒼を裏切ることになるかもしれない。
蒼「何も言わない。フフッ、余程ショックだったのねぇ。じゃあもうそのまま死になさぁい!」
瞬、と蒼は鎌を振り切った。
蒼「…!?」
しかし、手応えがない。
蒼「ほら、あんただってそうじゃない」
ももは404号室から電柱に飛び移っていた。
もも「あなたが殺す気なら私もあなたを殺します」
蒼「くっ、口だけは達者ね」
蒼は焦る。
ももの目つきがさっきとは違う。
感情が見えない、一つの感情を捨てた少女の目だった。
もも「行きます」
蒼の体に寒気が走る。
蒼の鎖鎌を握る手は震え始めた。
ももは蒼へと向かう。
倒れている黒装束から武具を奪ったのか手には左手には鎖鎌、右手には短刀を握っている。
蒼「も、ももォォォオオオオオオ!!」
蒼は焦燥感を振り切るように、前へと出る。
しかし、もう遅い。
手を鎖鎌で縛られる。
蒼「ヒッ!?」
そして、蒼の目の前でももは短刀を構えしゃがみこむ。
そして、下から思いきり切り上げんと短刀を強くにぎりしめ…
圭「やめろ!」
もも「…!」
短刀が蒼の左足に触れたところでももの動きは止まった。
ももに向かって叫んだのは圭だった。
圭も恐かった。
でも、『ももの方が誰よりも今を恐がっている』そんな気がした。
圭「もも!こんな憎しみで人を殺してはいけない。そんなことしたら、お前もそいつらと同じだ!」
ももが蒼のように黒くなってほしくはなかった。
圭は恐い。
しかし、自分のことはどうでもいい。
今、目の前にいる大切な人を救いたい。
もも「うっ…!」
ももは攻撃する途中で頭を抱え、しゃがみこんでしまった。
もも「うっ…殺せない…」
圭「そうだ。それが本当のお前なんだ」
もも「本当の…私?」
圭「ああ。誰にもかかわらず優しく接して、いつも明るい…それがももなんだ!」
もも「圭…」
圭はももに近づいて、頭を優しくなでた。
蒼「あ、甘い…甘いわ!」
蒼がももの乗っていた電柱に飛び移る。
蒼「今度あった時は、確実に殺してあげる。私を逃がしたこと…。後悔させてあげるわ」
蒼は逃げていった。
窓から光のさしたリビングでは、さらに絆を深めた二人の姿があった。
統一「いいなぁ、あいつら。ワイも女の子とチュッチュペロペロしたいわ」
冷夏「きも」
黒装束たちを倒した統一たちもその姿を微笑ましく見ていたのだった。




