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圭「あの…」

もも「あの…」


同時に同じ言葉が重なる。


圭「…!」

もも「…!」


この間が二人をさらに緊張させる。

圭は不思議だった。

何か感覚が違う。

まるで心が通じあっているかのような、同じことを考えている、そんな感覚。


やけに鼓動がドキドキ、と活発だった。


目の前にいる少女。

いつも活発で、少年に元気と希望を与えてきた。


冷夏「ただいま~!」


玄関から冷夏の声が聞こえる。


圭はこの間から逃げるようにして玄関に向かう。


圭「お、おかえり」


冷夏「…ん?どうしたの?」


よそよそしい態度の圭に冷夏は怪訝そうな顔をする。


圭「い、いや…なんでもない」


冷夏「ね!圭!」


圭の応えに冷夏は構わず話を反らす。


冷夏「服部半蔵って知ってる?」


もも「…!」


圭「ハットリハンゾウ?」


圭はサッパリだった。

知ってるのと言えば、


圭「あ?忍者ハ〇トリくんのことか?」


冷夏「…違うわよ」


冷夏のかなり冷たい視線が圭に突き刺さる。

仕方ないじゃん。知らないものは知らないんだから、と圭は思う。

冷夏は真剣な顔をして


冷夏「ももちゃん、知ってるでしょ?」


と、リビングに向かってそう言った。


圭「は?何でももなんだ?」


圭は意味が分からない。


冷夏はドタドタと早足でリビングに向かう。


もも「…」


ももは頭を下げて黙り込んでいる。


圭「ち、ちょっと冷夏さん。いきなりどうしたんですか!今日ちょっと変ですよ?」


圭はいきり立つ冷夏を止めようとする。


冷夏「…そうね。今日の私は変だわ。でも、今のももちゃんのその態度の方がもっと変よ」


冷夏はももに向かって言う。


そして冷夏は言った。

まるでももを蔑むかのように、


冷夏「もも、いや…」


圭「…?」


冷夏「服部もも!」


圭「…は?」


圭は言葉が出ない。

ただももを見つめる。


もも「…」


ももは下を向いたままだった。


圭「な、何いってんですか!てゆうかハットリハンゾウって何なんですか!」


冷夏「東軍徳川の隠密をしていた、伊賀衆の忍者よ」


圭「えっ!?」


冷夏は圭の前に立つ。

ももと圭の間に割って入るようにして。


冷夏「圭離れなさい!こいつは私達の敵よ!」


もも「…」


以前としてももは黙り込んでいる。


冷夏「何かおかしいと思ったわ。統一の話の時もやけに落ち着いていたし…」


もも「…」


圭「でも、それはただ理解出来なかっただけじゃ…」


冷夏「じゃあこれは?」


そう言って冷夏は見覚えのある首輪を取り出した。


圭「それは、ももの…」


冷夏「ももちゃん?ご主人様がくれた首輪はまだ持ってるの?」


もも「…」


冷夏は皮肉めいた口調でももを責め立てる。


冷夏「ないわよね。ここにあるんだもの」


圭「な、何で冷夏さんがももが犬だったということを…」


冷夏「犬小屋、ペットフード、それと…」


圭「それと?」


冷夏は首輪を右手で落とし、左手でキャッチする。


冷夏「上空から落ちてきた首輪よ。ももちゃんがストラップに鞄につけてた」


圭「え?上空…?」


冷夏「ももちゃん、いや服部ももはずっと私をつけていた」


圭「…!」


もも「…」


圭は信じられる訳がない。

ももが冷夏をつけている?ただの言いがかりではないか?


しかし、ももは否定しない。

認めているようなものだ。


(だとしたら俺は何を言えばいい?)

少しでも疑っている自分が圭は許せなかった。


(俺はこんなときに何もできない。でも、俺を今まで元気づけてくれたのは…)


もし圭がももを疑い始めているとしても。


圭「言いたくないなら言わなくてもいい」


冷夏「…!」


もも「…え?」


圭「誰にだって事情はある。俺だって…三年前から前の記憶がないんだ」


冷夏「え?そ、それって…」


圭「記憶喪失って奴だよ」


冷夏「き、記憶喪失!?」


冷夏は信じられなかった。

圭が記憶喪失とは思えないほど自然に、平然としているからだ。


圭「きっと何か凄くよくない出来事でそうなったんだと思う」


もも「…」


圭「でも、ずっと俺の傍にいて、支えてくれたのはももなんだ」


もも「…圭」


今の圭がいる理由。

それはももがいたから。

一人のときも愛犬が元気づけてくれたからである。


圭「俺はももを信じる。ももは俺のかけがえのない愛犬だ」


もも「圭…でも…私…」


ももから大粒の涙が流れ始める。


圭「俺たちには教えたくないなら教えなくてもいい。言いたいときには言え。俺はお前を信じる」


もも「…圭…グスッ…ごめん…」


圭はももの頭を撫でる。

ももは気持ちよさそうな顔をしながら涙を流す。


冷夏「まったく、これじゃあ私が悪役みたいじゃない」


冷夏は折れるしかない。

圭とももの愛情を見ては、

折れるしかなかった。


この二人は本物だ。

疑う余地も許されなかったのだ。

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