ダンジョンで鍛冶
「うーん、これはちょっとまだ長いな」
「これは?」
「柄が軽すぎる」
地面に積み上がった魔法剣を、アマネに持たせて大人たちの品評会が始まった。
三十本まで候補を絞り、ああでもないこうでもないと数時間。
結局、ピンとくるものがなく一旦全部片付けられた。
「剣技にも耐え、魔法もしっかり通せて……となるとやはりオーダーだよな」
「そうだな。しっかりカスタマイズされていないと、龍人の子は魔力も力も強いからなぁ……」
「やっぱ大剣か」
「いや、魔法も駆使して戦うなら片手剣がいいと思うんだがなぁ。大剣は隙が多いから魔法向きじゃない」
「…………」
「なんだよ、ジューン」
「ダンジョンにいる間、私の愛剣を貸してもいいんだけど……」
「あの魔剣か」
「女性用に誂えられた剣なら、ちょうどいいかもしれんな。いずれ足りなくなるだろうが」
私は鞘に入ったままのベルシュナ・ヴァリを取り出した。
長い間私の魔力を吸って変質した美しい魔剣だ。
刀身は緑がかった青色に輝き、先端に行くにつれ透明になっている。
「いつ見ても狂った造形だよなぁ。半ばから透明って凶悪すぎる」
一応アマネにも持たせてみたが、魔力反発が強かったようでNGが出た。
「他人が完成させた魔剣はやはりダメか………」
「まあ、魔剣は育てる剣って言うしね」
レスターは渋い顔をしたまま考え込んでいる。
アマネはミシュティとベイリウス、ティティと一緒に採集に勤しみ始めた。
フレスベルグは嫌がるアビスブリンガー・ラグナロクをアマネから引き剥がし、不具合チェックを始めている。
『アマネ、アマネー』
「くそ、噛みつくなって! 牙を爪と同じ材質にしたのが悪いのか、いやいいんだけど痛いんだよ!」
『ハナシテヨー、エッチー』
「お前そんな言葉どっから引っ張ってきてるんだよ!」
やかましいアビスブリンガー・ラグナロクとフレスベルグの声を気にした様子もなく、レスターは金属塊を取り出した。
「これ、ロロの寝台のランプを作った余りなんだが──」
「ああ、ポチ温泉の龍稀石と私の髪を入れたやつ?」
「最終的に出来た金属はオリハルコン六、ミスリル三、龍稀石と髪、他素材で一、だな」
「そっか、ランプ枠の残りだから製錬済みなのね」
「うむ。これをアマネが出した炎で打てばかなり馴染むと思うんだが、あいつ高熱の炎出して維持できるんかな」
「媒体を使えば維持は出来る」
「なら、いけるか。前遊びに来たときに使用可能な出力があるのは知ってる」
「ダンジョンで打つの?」
「道具は揃ってるからな」
「ふーん、なら私は周囲のお掃除係かな」
「不測の事態に備えて待機だろ。掃除ならフレスベルグが適任だ」
レスターが道具を設置し始めたのを見て、アマネが興味津々で寄ってきた。
アビスブリンガー・ラグナロクはフレスベルグに捕まったまま、必死にアマネを呼んでいる。
アマネは進路を変えてアビスブリンガー・ラグナロクを回収してから再び鍛冶台の方に来て、レスターの手元の金属塊を覗き込む。
「何するの」
「剣を作ってやる。火はお前が出すんだぞ」
「あ、前にペーパーナイフ作ったときみたいに?」
「そうだ。だが今回は五時間出し続けろ」
「ご、五時間?」
媒体は何がいいだろうか。
出力を上げるなら、火龍素材が一番良いのだけれど。
(出力は足りているなら……安定、維持に振った媒体が望ましい)
ミシュティがゴソゴソと何かを出し始めた。
「アマネさん、これ」
「なに?」
「クリムゾンヘルファイアさんの乳歯です。出発前にお預かりした時に抜けました」
「お、魔咆犬の乳歯か。入れてもいいぞ。御守り代わりだな」
「あ、それならこれも混ぜて欲しい」
アマネもゴソゴソと封筒を取り出した。
そっと開けられた封筒の中には爪の欠片。
「ん? なんだこれ。人間の切った爪か?」
「えっと、マ……母の爪なんだー、もう一個しかないんだけど使って欲しい」
「ほう? いいんじゃないか、それは力になる」
「うん」
レスターは丁寧に爪を受け取り、乳歯の横に並べた。
「…………ただの爪じゃないな。よくわからんが」
(ポチの鱗、龍仙草、火龍の肝、火魔核とアマネが出した魔力水、あとは何がいいか……あ、獄炎葛の粘液がいいかな)
うん、これらを固めたものを手に持っていれば維持と安定を兼ねられそうだ。
「エルフの髪入りって魔皇鉄じゃん。俺でさえそんな豪華な剣持ってないのに」
「ヘヘッ、いいでしょ」
出来上がった媒体を握りしめ、アマネの右手から白い炎が噴き上がった。




