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前世の記憶は役立たず!~エルフに転生したけれど、異世界が世知辛すぎる~  作者: 藤 野乃
スローライフ所望のエルフ

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みんなで夕食


 せっかく綺麗に仕上げた魔咆犬たちは、地面に降ろされるやいなや吹っ飛んで行ってしまった。

 まあ、沼に落ちてドロドロ状態よりはマシか。

 ひよこ島に沼地がなくて本当に良かった。


 自室で着替えてからリビングに行くと、誰もいない。

 アマネはちょいちょい遊びに来ているが、常駐しているのは厨房だ。

 自分の部屋にはフレスベルグに触られたくない宝物やら着替えを置いてあるようだが、滅多にそこにいることはない。


 (むしろフレスベルグの方が触られたくないものを置く場所が必要な気もするけれど……)


「肉のパイって美味いね」


 案の定、アマネはミシュティから大きく切ったミートパイを貰って頬張っている。

 ミシュティのミートパイはスパイスが効いているが、香りがいいだけで辛くはない。

 どうやらミシュティとアマネは辛いもの苦手同盟を組んでいる様子。


 私に供されるミートパイは、スパイシーだもの。


「アマネ、フレスベルグはどうしたの」


「フレ兄は後から来るって言ってた。今日はクリムゾンヘルファイアと沼地探検したんだけど……フレ兄は昔落ちたから、沼は嫌いなんだって」


「ああ、すごく落ちそうだものねえ。アマネは落ちなかったの?」


「うん。ただ、クリムゾンヘルファイアが沼の上の葉っぱと地面を間違って落ちた」


「積もってるとわかりにくいものね」


 話している間にアマネはもう一切れ貰っている。


「これで終わりです。夕飯が入らなくなりますからね」


「えー、入るって」


「ダメです」


 (余裕で入ると思うけれど。ミシュティがダメと言ったらそれはもう絶対条件……)


 アマネも身を以て知っているので、それ以上は食い下がらず手を洗いに走っていった。


「今日は元々来る予定だったの?」


「いいえ。ですが、フレスベルグ様は徹夜続きで食事も摂っていないようなので、多めに作ろうかと思います」


「そうね。じゃあ夕食はみんなで食べましょう」


 アマネはミシュティのお手伝いをするようなので、私は西の作業所にあるホムンクルス製作室に様子を見に行った。


 (うん、順調ね)


 魔法陣の上の培養ポットの中身たちは予定通り育っている。


「皮膚はまだまだ面積が足りないけれど──内臓は良い感じに形成されてきたわね」


 培養過程は万事順調だ。


 (脂肪はもう少し量が欲しいからポット増やそうかな)


 脂肪は最終工程の調整で絶対必要になるから、余るくらいでいい。

 ホムンクルスの内臓の隙間を埋める、万能アイテムみたいなものだ。


「ここはもうちょっと放置かな……まだやれそうなことが無いもの」


 ブツブツ独り言を呟きながら、ポット全てをチェックする。

 最後に部屋全体を除菌し、念入りにロックする。

 ここだけは誰にも見せられない。


「さて……」


 外に出ると、日はすっかり沈んで明るい星が空の端から見えている。

 ここは孤島だから、余計な明かりがないので本当に夜空が美しい。

 暫く深い紺色に染まっていく様子を眺め、私は満足して屋敷へと戻った。


「ひどい顔」


 リビングのソファーに半分寝そべっているフレスベルグは、聞いていた通りお疲れの様子だった。


「魔王城の演出打ち合わせが終わらなくてさぁ……」


「そうなの?」


「カルミラはなるべく壊すなって言うし、現場は派手に魔導火薬を使いたがってて」


「ふうん」


「結局、不壊の魔法を城にかければ良いって事になったんだけど、予算がなぁ」


「勇者が剣聖スキル持ってるから、見せ場は必殺技放って爆裂するところでしょ? 派手に壊れていい場所と壊したら面倒そうなとこ分けたら?」


 柱とか基礎に関わる部分だけ、魔法で保護すればいいと思うのだけれど。


「そうするかぁ……後さー、変身シーンは三回入れたいんだよね」


「多くない? お約束ではあるけれど」


「レスターだって三回変身したじゃんか」


「レスターの時は序盤で人間を怖がらせすぎて、まさかのレイド戦だったからよ」


「アレかっこいいよなぁ……俺もレイドが良かった」


「フレスベルグの魔力操作じゃレイドなんてやったら、うっかり勇者殺しちゃうわね」


 フレスベルグはぐったりとうなだれた。


「まあ、ほら。二万歳くらいのレスターと、五百歳くらいのフレスベルグじゃ違うのは当たり前よ」


 ワゴンを押す音が聞こえ、いい香りが漂ってきた。


「しっかり食べて働くのよ、フ・レ・ちゃ・ん」


「カルミラかよ」


 フレスベルグはすごく嫌そうな顔で、ソファーから起き上がった。

 

 

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