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ガーデンパーティ、そして再びピンク髪

幾つかイヤリングが用意されていたが、私はピアス派なので自分の持っているものを使うことにした。

ファイヤーオパールの連なった揺れるピアス。

髪に挿されたアクセントのオレンジと似た色なので、良い感じで合いそう。

【未婚の指】右手の薬指には高純度の聖核が一粒ついた純銀の繊細な指輪をつければ良いだろう。

高純度の聖核は真珠とオパールを混ぜたような不思議な輝きで、結構気に入ってる。

この聖核は小さいけれど、純度が高いので同じサイズのダイヤより価値がある。

見る人が見れば逸品だ。

純銀部分もイヴォーク大陸の秘境に住むドワーフが細工したもの。

派手ではないけれど、とても良いものなのだ。

柔らかすぎて普段使いには出来ないんだけどね。

用意されていた指輪もそれは美しいものだったけれど派手めだから遠慮したわ。

気遣いはありがたいけれど、ジュエリーは好みのものをつけたい。


エントランスに出ると、アルフォンス殿下が待っていた。

騎士団の真っ白な正装姿だ。

殿下にエスコートされて馬車で10分ほど。

グレディス辺境伯の屋敷に到着した。

つつがなく案内され、領主にご挨拶。

ご婦人にも。

カーテシーやマナーは滅多にルールが変わらないので、ほぼ完璧に上手だと思う。

私、亡国だけど王妃になって皇太后をやってたこともあるからね。

若かりし頃の過ちという短気で滅ぼしちゃったけど、今ならもっとうまくやれると思うわ。


領主夫妻は気さくな方々だった。

お二人とも色合いに濃淡があるが、青い髪に青い瞳。

貴族は髪が色ついてる人多いから、当たり前なんでしょうね。


アフタヌーンティーと聞いていたけどガーデンパーティだったようだ。

近隣の貴族夫妻、その子女で30人くらい居そう。


私の身分は平民なので、領主に挨拶さえすれば殿下への義理も立つからもう帰りたい…


殿下に事付けてあった事を聞いたのか、領主が早足でこちらに寄ってきた。

「ジューン嬢、素晴らしい手土産をありがとう」

「大きいのでどこにだせば…?一回出すと動かすの大変そうですよ」

大容量の収納魔法お持ちの方、お屋敷にいらっしゃいます?


「せっかくのものだ、まずは一人で楽しみたい」

コレクター部屋に行こう、と領主。

殿下が「では私も付き添うとしよう」


【未婚】の女性が男性と二人で消えるのは外聞が悪いからだろうな。

今は未婚で合っているけど、この世界で結婚した事がない訳じゃない。

なので、そこまで気遣って貰わなくても大丈夫なんだけど。



二重の扉を開け、部屋に案内される。

空きスペースは充分あるけど

えらい広い部屋だ…

龍の眼球とか排せつ物まで!

マニアックが過ぎるわ。

結局スペースとの兼ね合いで2回目の脱け殻を出すことにした。


「おおおおお……!!!」

領主が唸り声を上げて脱け殻を見つめる。

軽トラサイズの脱け殻だ。

欠損のない美しい剥製のように綺麗に脱皮する龍だからね。


「これは…金龍ですかな?また見事なものを…」

「ふふ、そうですね。古代龍の金色の個体ですね、2回目の脱皮となります。400歳くらいの物ですね」


初めての脱皮と最後のは思い出深いので、最初と最後の脱け殻は手離せないのよ。


「本来の目は鮮やかなグリーンなので、緑色の宝石を入れれば生きてるようにみえると思いますよ」


脱け殻に夢中な領主はそっとしておこう、と殿下と静かに部屋を出る。

部屋の外に控えていたメイドに案内されて庭に戻る途中

「殿下、好奇の視線には慣れてはいますけど…エルフだからと見世物にされるのは嫌なのだけど?」

もう帰りたいんだけど?


「君に失礼がないよう周知してある。カイと一緒に居るといい。

そうだな、後一時間ほどしたら撤収しよう」


庭に戻ると華やかなドレス達が殿下に群がった。

私の隣にはカイが居る。

「俺も平民だからさ、こう言うのは苦手で」

「わかるー」

一口大のサンドイッチを摘まみながらカイと隅っこで時間が過ぎるのをひたすら待つ。


ちょっと離れた場所に居る殿下めがけて、ドレスだというのに小走りで駆けていく令嬢が目の前を通り過ぎた。

小走りというかすごいスピード感!

モッコモコのドレスで葡萄ジュース持ったまま走るとか正気の沙汰じゃないわ。


あ、ほら転んだ……

案の定、葡萄ジュースをかけられた令嬢が小さな悲鳴を上げた。


ピョコン!!と起き上がった転倒令嬢は謝罪をしているようだが、数人の令嬢に囲まれて詰められている。

ピンク髪の女、何でここに居るんだろう。

平民かと思ってたけど貴族なのかしらね。

葡萄ジュース持って走るとか、実に平民っぽいけれど。

白とピンクの巨大なリボンで飾られたピンク髪、濃淡のピンクのモッコモコのドレス。

ドレスの色、何でピンクにしたんだろう。

濃い寒色の方がピンク髪が引き立つだろうに。

あと、昼間のパーティに参加するには少々デコルテが開放され過ぎている。


ピンク髪は殿下の方に行きたいようだが、他の令嬢に囲まれ身動きが取れないようだ。

ドレスを汚された令嬢はメイドに連れられて室内に消えた。


「すげぇな」

カイが呟いた。

「そうね…関わりたくない」


絶対関わったらダメなやつだ。

王都に魔法学園とかあったら、絶対行かされるパターンだ。

君子エルフに近寄らず、だわ。

私エルフ本人だけど。

まあ、私もエルフ見つけたら全力で避けるよ。

挨拶代わりに致死レベルの悪戯とかされたくないし。

「確かに俺も…私も関わりたくないです…」

「平民には無縁な世界よ。早く帰りたい」


着替えが終わったらしい令嬢が戻り、ドレスの輪に戻ったようだ。

まさかのピンクドレスだ。

故意の色被りは良いことでは無いので、相当お怒りなのだろう。

宣戦布告と言っても良いくらいだ。

言わないけど、周囲にはわからせる。

ヒト族の貴族の流儀ね。

同じピンクでも白に近い薄い色だけど、貴族の一般常識があればご立腹のサインとすぐ受け取れる。


「ジューン、何で笑ってるんだ?」

カイがポイポイとサンドイッチを口に放り込みながら聞いてきた。

「ちょっと、下品よ!もうちょい綺麗に食べなさいな…ああね、今被害にあった令嬢一派がエルフだったら今頃ここは阿鼻叫喚の殺戮現場かなーって。運が良ければ誰も苦しまずに焦土になってると思うけど」


カイが喉を詰まらせたようだ。

私は優雅に合図してメイドから水を受け取り、カイに手渡した。

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