再会の光
無造作に帳簿を閉じた音が、商工監理課の空気をかすかに揺らす。
窓の外の春の気配が、張り詰めた部屋にも柔らかな香りを運んでいた。
静かな室内に軽快な足音が響く。
トンッと机の角を弾いた指の持ち主を見上げた。
「いつ来ても静かだねえここは。少し出られるかい?」
直属でなくともお偉いさんの言葉に逆らえるはずもない。
ため息をひとつついて立ち上がった。
「商会長がねえ、君のことをどこかで知ったそうでね。あ、僕が告げ口したと思っているね? まあ確かにお酒はたくさん飲まされたけど、言ってはいないよ。たぶんね」
「それで、おっさん…室長は何を言いたいんです?」
「君それ、わざとだよね? まあいいや。商会長が、君を連れてこいってうるさいんだ。一度挨拶に行っておいたほうがいいんじゃないのかい?」
仕事以外で大商会の主に会う──気が重いから眼鏡をかけたいなどと言ったら、彼女に笑われるだろうか。
大きくため息をついて答える。
「顔出すのはお嬢さんが帰ってきてからって言っといてもらえます?」
三年の間、便りはなかった。
四年目になってようやく届いたのは、帰国の知らせと綺麗なハンカチ。
しなやかで、輝いて、それはまるで彼女のような。
再会の約束は、きっともうすぐ果たされる。
(終)
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。
本作はこれにて完結となります。
長い連載となりましたが、最後までサーシャの物語にお付き合いいただけて、とても嬉しいです。
いつも読みに来てくださった皆さま、本当にありがとうございました。連載の大きな励みになっていました。
少しでも楽しんでいただけましたら幸いです。
もしよろしければ、作品の評価や感想をいただけるととても嬉しいです。
また次の物語でもお会いできましたら、そのときはどうぞよろしくお願いいたします。




