解決
本日3話更新です。よろしくお願いします。
休日明け、またいつものように穏やかな朝を迎える。
サーシャの中にもう動揺はない。昨日の不安も焦燥も、今は綺麗に消えていた。
『信じろ』カイの目にあった揺らぎのまったくない強い思いは、眼鏡越しでも確かに届いた。
サーシャはもう、自分の役割を間違えない。
カイたち縫製室のみんなを信じて任せる。自身に今できることはそれだけなのだと、ようやくわかった。
──カイさんがいてくれて良かった。
これまでのどの時よりもずっと強く思った。
「サーシャさん、今日もいいハンカチを選んでくださいね」
弾んだライナスの声に、思考が引き戻される。
「もちろんです。今日はどんなご気分ですか?」
サーシャの一日は、まだ始まったばかりだ。
ライナスから預かった書類を届けた帰り道、足は少しばかり遠回りの方向へと進み、サーシャは心のなかで誰にともなく言い訳をした。
干渉はしない、ただ様子を見るだけ。
縫製室の前にさしかかり、ほんのわずかに歩みを緩めた頃合いに、元気な声が聞こえた。
「サーシャさんっ!」
飛び出してきたピコの表情に曇りはなく、いつもの明るさが戻っている。
「あのね、偽物の騒ぎ、もうほとんど心配なくなったみたいです! 犯人が見つけられそうだって!」
「もう?」
早すぎる解決に思わず驚きの声が出たサーシャは、仕事終わりに来ると約束をして持ち場へ戻った。
夕刻、再び向かった縫製室で、ピコはそわそわと待っていた。
「犯人見つかったそうです!」
潜めた声で告げられた名前に、意外だとは思わなかった。
それは、以前も規程に足りないものを平然と作ったあの針子だった。
「どうやって分かったのかしら。あの人が自分から言うとは思えないけれど」
「王宮のお針子長に見せたら、縫い方ですぐ分かったって」
「見せた? お針子長をあの店に連れて行ったの?」
「違いますよお。カイさんがね、偽物を回収してきたんです」
ピコが当たり前のように言った言葉に、サーシャは首を傾げる。
あの曲者の店主から? どうやって──
「あっ、カイさん!おかえりなさい!」
ピコの元気な声に迎えられて、カイがいつもの様子で戻ってきた。
「あんた、また来てたのか」
彼の声に拒絶の色がないことにほっとして、サーシャはおずおずと疑問を口にした。
「業務時間外ですから。それよりカイさん、偽物の回収って、どうやったんです? まさか勝手に……?」
「あんた、俺をなんだと思ってるんだ」
あきれたようにため息をついて、それからわずかに笑う気配がした。
「室長のおっさんが言ってなかったか? 俺は交渉事は得意な方なんだ」
視線が交わる。
眼鏡の奥の目は、昨日よりも優しかった。




