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サリシャの光 〜商会の娘が紡ぐ夢〜  作者: ねるね
芽生え
4/42

ローディック姉妹3

本日も3話更新です。

読んでくださってありがとうございます。


引き続きよろしくお願いします。

 着替えを済ませたサーシャは片付けに取り掛かる。

 宝飾品類は借り物の場合は返却に行く必要があるが、今回は商会保管のものを使用したため、磨いて倉庫に戻すだけでよかった。

 洗えるものは洗濯にまわし、洗えないものはそれぞれに合った方法で手入れをする。ドレスはローディック商会のドレス工房に持っていって検分することになる。



 サーシャはドレスを抱えて商会を出た。二着まとめて持てない重さではないが、かさばるため一着ずつ運ぶ。馬車に乗せ、もう一着を取りに戻ろうとした時、不意に後ろから声がかかった。


「サ、サーシャさんっ!」


 そこに立っていたのは、先ほど植物園で怪我をしたあの少年だった。

 一度帰宅して着替えてきたのか先ほどよりも上等な服になっていて、サーシャは一瞬見違える。しかしさすがは商売人と言うべきか、すぐにあの少年だとわかった。



 サーシャは彼の前まで行き、ほんの少し屈んで目を合わせて問いかける。


「足は痛くない?」


 少年の膝には包帯が巻かれている。もう手当ては済んでいるようだ。


「あのっ、ハンカチを返しに来たんだけど、汚れたから買って返そうと思って。でもそれならローディック商会で買った方がいいかなって、それで……」


 早口で話す少年の顔は赤い。

 彼の後ろの方では、仲間の少年たちが物陰から身を乗り出して見守っていた。


「そんなのわざわざ良かったのに。でもありがとう、お気に入りだったからこれだけ返してもらうわね」


 そう言ってサーシャは少年の手からハンカチをそっと取ろうとした。

 少年は慌ててハンカチをつかみ直す。


「だ、だめだ! ──あの、ごめん。血がついてしまったから。せめて洗って返したい。大事なものなのに汚してごめん。

それに、やっぱり弁償させてほしい。いくらかわからないからとりあえずこれだけ持ってきたんだけど……」


 少年がポケットから取り出したのは、ハンカチが10枚以上買えるほどのお金だった。

 サーシャはそこからハンカチ1枚分のお金をもらい、少し待つように告げて商会に戻った。

 再びサーシャが出てきた時、手には小さな巾着袋を提げていた。


「これ、商会の宣伝用に作った匂い袋なの。中に入ってる香り草を水でふやかしたら汚れ落としになるから、良かったら使ってみて」


 少年はこくりと頷く。

 そして一度深く息を吸い込んで、意を決したように言った。


「僕、ニックっていうんだ。ハンカチは必ず返すから、待っててほしい」


「もちろんよ、ニック。いつでも構わないからまた来てね」



 サーシャはただいつものように微笑んだ。

 その笑顔が、一人の少年にどう映るのかを考えることはなかった。


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