再会1
「シンディ! サーシャ! すぐに来てくれ!」
商会の受付にいたサーシャたちを、珍しく険しい顔をしたスタンリーが呼んでいる。
何事かと席を立つと、スタンリーは執務室の中を苛立たしげに歩き回っていた。
「スタンリーどうしたの? あなたがそんな風になるなんて、何かよほどのことが?」
あえて落ち着いた声を出しながらシンディが問いかける。
「どうもこうもない緊急事態だ。学園に納める敷布が運搬中に消えた!」
二人は蒼白になった。
貴族学園はローディック商会の重要な顧客のひとつだ。数年前から、寮で使う敷布を年間二度に分けて納めている。ゆくゆくは制服の仕立てに参入する計画も進んでおり、今は学園からの信用を失うわけにはいかない大事な時期だ。
「私は荷馬車がいなくなったあたりへ行って捜索の段取りをつける。シンディは新たに敷布を調達してくれ。サーシャは番頭を連れて学園に行ってほしい」
「わかりました。納入が遅れるかもしれないと伝えてくればいいのね」
「ああ、そうだ。必ず納めると言っておいてくれ」
敷布を積んだ荷馬車など盗んでも、労力に見合う金になるとは思えない。ならば御者が何らかの事件に巻き込まれたのか、それとも嫌がらせのたぐいだろうか──。
考えごとをしながら馬車に乗っていたせいか、学園にはあっという間に着いた。
番頭と共に学園の寮長に会う。事情を説明し、もしかすると納品が遅れるかもしれないと詫びると、まだ年若いその人物はあからさまに眉をしかめた。
「あなた方ねえ。こちらにも段取りがあるんですから、遅れられると困るんですよ。それにどうして商会長が来ないんです? あなたみたいなただ着飾るだけの人に頭を下げられても、誠意も何も感じられませんよ」
──自分も商会も侮られている。
そう痛感しても、サーシャは何も言い返すことなどできない。どんな事情があるにしろ、敷布の紛失が商会の手落ちであることは紛れもない事実だからだ。
だからひたすら頭を下げた。
番頭と二人、謝罪と必ず全数納めることを、ただただ何度も口にした。
やがて生徒が寮に戻る時間になり、いくらかは気が済んだ寮長が大きくため息をつく。
「期限より一日でも遅れたら、契約を見直すよう学園長に進言しますので。……では、お帰りはあちらです」
結局侮られたまま商会の役に立つことができなかったと、サーシャは自分の不甲斐なさに唇を噛んだ。
車寄せまでの道を、足取り重く歩く番頭とサーシャ。そんな二人のもとへと駆け寄る人物がいた。
「ニック……?」
息を切らせてサーシャの目の前に立ったのは、学園の制服を着たニックだった。




