表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『50from17』 〜転生先は超高度文明、黒髪少女と経験値で生き抜く方法〜  作者: 五稜 司


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/29

第19話:守るための力

開いたばかりの漆黒の通路。何が潜んでいるか分からないその穴に背を向けて逃げ込むのは、あまりに危険すぎた。

「迎撃しましょう! 中が安全とは限りません!」

 佐藤さとうの叫びに、マイアが即座にうなずき、パイプライフルを構え直した。


 不適合者ふてきごうしゃたちが咆哮ほうこうと共に襲いかかる。その動きは獣よりも狡猾こうかつで、予測しづらい。だがその時、クロの中で何かがはじけた。

(……見える。右、次は足元……!)

 意識せずとも、敵の「次の一手」が残像のように脳裏に浮かぶ。クロはその不思議な感覚に一瞬戸惑ったが、すぐにそれを好機と割り切った。

「理由は分からないけど……いけるわ!」

 クロの動きが劇的に鋭くなる。黄金色の瞳を輝かせ、敵の死角を突くその姿を、佐藤は驚愕きょうがくの目で見つめていた。


 だが、数に勝る敵の波は止まらない。

「マイアさん! 危ない!」

 佐藤は、マイアの背後から迫る影に気づくと、考えるより先に体が動いていた。彼女を抱きかかえるようにして地面を転がる。

 直後、敵の鋭い爪が佐藤の背中を浅く引き裂いた。

「サトウ……!?」

「――っ!!」

 クロの視界が、佐藤の背から飛び散る赤色に染まった。

 言葉にならなかった。ただ、理性が「怒り」に塗りつぶされる音だけがした。

「あああああッ!!」

 獣のような咆哮ほうこうを上げ、クロが跳躍ちょうやくする。覚醒した力によって放たれた渾身の一撃は、一匹の不適合者を文字通り真っ二つに切り裂いた。


「こっち! 早く!」

 ナナイが瓦礫がれきの隙間から手招きする。マイアは傷ついた佐藤をかつぎ上げ、必死の形相で駆け出す。しんがりを引き受けたクロが敵の追撃を振り切り、一行は巨大な瓦礫の山の影へと逃げ込むことに成功した。


「……ひどい。傷が深いだけじゃないわ」

 佐藤の傷口を確認したマイアの声が震える。不適合者の爪には、この世界の汚濁から生じた「毒」が潜んでいる。細菌という概念を持たないマイアたちにとって、それは死を意味する忌むべき力だった。

「ヒロ! ヒロ! 嫌!、目を覚まして!」

 クロが佐藤にすがりつき、半分泣きながらその名を叫ぶ。

「ちょっと待ってて!」

 そう言い残し、ナナイが闇の中へと姿を消した。


 数十分後。傷の痛みと高熱で意識が混濁こんだくする佐藤の元に、ナナイが息を切らせ、汗みどろになって戻ってきた。その手には、泥に塗れた緑色の植物が握られていた。

「これを傷に塗って! 解毒と再生を助ける草だよ」

 鉄と油しかないこの地下に、生きた植物などあり得ないはずだった。だが、上からしたたり落ちる僅かな水と光が届く場所を、そしてそこに僅かだが生命力にあふれる草がある事をナナイだけは知っていたのだ。


 マイアはそれを受け取ると、迷わず口に含んで細かく噛み砕き、佐藤の背中の傷口に塗り込んだ。

 ――数時間後。

 佐藤がゆっくりとまぶたを持ち上げると、そこには泣きらし顔のクロと、安堵の涙を浮かべるマイア、そして疲れ果てて眠りについたナナイの姿があった。

「……皆さん、すみません。助かりました……」

 かすれた声で礼を言う佐藤に、クロがたまらず抱きついた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ