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『50from17』 〜転生先は超高度文明、黒髪少女と経験値で生き抜く方法〜  作者: 五稜 司


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第18話:沈黙の扉

巨大な隔壁(かくへき)は、見上げるほどに高く、厚かった。

 かつては白く輝いていたであろうその表面は、数千年の時に晒(さら)され、泥と油に塗(まみ)れてどす黒く変色している。佐藤(さとう)は壁に手を触れ、そのあまりの冷たさに身震いした。

「……なんて大きな壁。こんなの、今まで見たことないわ」

 マイアがパイプライフルを握ったまま、圧倒されたように呟(つぶや)く。地下で生まれ育った彼女にとって、これほど巨大な人工構造物は想像を絶するものだった。


「ねえ、サトウ。ここ、ちょっと変だよ」

 少し離れた場所で壁を凝視していたナナイが、指を差した。彼女の鋭い観察眼が、泥の層に隠された微かな「凹凸(おうとつ)」を捉えていた。

 佐藤が近づき、袖(そで)でその箇所の汚れを力任せに拭き取る。すると、そこには文字とも図形とも判別できない、奇妙な幾何学模様(きかがくもよう)が数箇所に刻まれていた。


「……これは」

 佐藤の脳裏に、転生直後の記憶が蘇(よみがえ)る。あの混乱の中、地下世界へと逃げ込む際、視界の端に流れていった景色――その中にあった意匠(いしょう)と、これは酷似(こくじ)していた。

「サトウ? 何か知ってるの?」

「いえ……ですが、これと同じようなものを、以前見かけた気がします。マイアさん、少し壁沿いに歩いてみましょう。この先に、何かあるような気がします」

 佐藤はひたすら自分の勘を信じて歩き出した。


 錆(さ)びた鉄の臭いと静寂が支配する空間。壁伝いに暫(しばら)く歩くと、佐藤の足がピタリと止まった。なんとなく、何かに引っかかる感覚があったからだ。足元には巨大なガラクタの山が積み上がっているが、その隙間から、壁に刻まれた細く鋭い「溝」が見えた。よく見なければただの傷に見えるが、それは紛(まぎ)れもなく、人が通れるほどの四角い輪郭(りんかく)を描いている。


「クロ、ナナイさん、手伝ってください!」

 三人で必死にガラクタを掘り起こしていくと、溝の脇から半球体(はんきゅうたい)の突起が現れた。その頂部には、人間の手の形に合わせたような凹(くぼ)みがある。

「……やってみるよ」

 佐藤が緊張で湿った掌(てのひら)を、その凹みに合わせるように触れた。


 数秒の沈黙の後、――ズ、ズンッ……。

 鈍(にぶ)い音が響き、溝のある壁がガクンと一度奥へ引っ込んだ。続いて、壁がゆっくりと上方へと動き出し、漆黒(しっこく)の通路が姿を現した。

「開いた……本当に開いちゃったよ」

 ナナイが感嘆(かんたん)の声を漏らし、中を覗き込もうとしたその時。


「待って! 何か来るっ!!」

 ナナイの鋭い警告が、通路の静寂を切り裂いた。

 四人が弾かれたように振り向くと、背後の暗闇から唸(うな)り声と気配が迫っていた。汚濁(おだく)に塗(まみ)れ、理性を欠いた瞳を爛々(らんらん)と輝かせる不適合者(ふてきごうしゃ)と呼ばれる者たちが、そこには立っていた。

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