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800字の短編世界  作者: 沙猫対流
2015~2016年
1/11

こうかい

記念すべき初投稿作だったものです。

「こうかい」というワードから連想した言葉を全部つなげてみました。

さて、果たしてその行き着く先は。

 最悪の気分だ。頭がぐらぐらする。さっき食べた夕飯が全部胃の中から出てきそうだ。天候の所為か、それとも船の所為か。

 なんで私は今回の航海に参加したのだろう。船は勿論、馬に乗ってまで乗り物酔いするような奴だというのに。おまけに出発初日から大嵐に見舞われるなんて聞かされてないぞ。


「後悔してても何にもならないよ」友人が慰めた。「元気出しな。これから行く新大陸にはきっと、黄金や宝石がごろごろしてるさ」


 そうだと良いのだが。でなきゃ航海に出た意味がない。王様に財宝を持っていき、出世して家族を支えてやらなければ。見つからなければ……乗組員全員公開処刑だが。


「大変だ、トムが海に落ちた!」クルーが数人大慌てで駆け込んできた。見張り役だった彼は、強風にあおられそのまま落ちたらしい。

 皆ロープと浮き輪を持って救出に駆けつけた。トムは必死で大荒れの海を泳いでいる。

 しかし次の瞬間。山ほどもある大きな蛸の化け物が顔を出した。頭の上には人間くらいの大きさの子蛸も数匹乗っている。大蛸はトムを太い触手で掴むと、水中へ引きずり込んだ。


「紅海じゃよくあることだ」誰かがポツリと言った。彼の葬式は明日挙げることにして、めいめい自分の部屋に戻った。


 私は怖くて眠れなかった。あの蛸達が今にも船を壊して、私達を食べてしまいそうで。頭から毛布をかぶって眼をつぶった。


 ペタペタ……ペタペタ……壁沿いに何かの音が聞こえる。吸盤を使って歩くような。私はぞっとした。あの子蛸達、トムを連れ去るときにずっとこっちを見ていたような。何匹かは触手を何か数えるように動かしていたが、あれはもしや、次の獲物を――



 おや、誰かが部屋の前に来たようだ。



15xx年、新大陸へ向かった某国の探検隊が、紅海で船ごと失踪したという。原因は不明。


〈こう書いてありますが多分嘘です〉


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