ダークファンタジー・骨太の作品について考えてみた
さて、最近「ダークファンタジー」「骨太な作品」「本格ファンタジー」に注目するという話が、運営からちらちら出ていて注目があつまっているようです。
この辺がどのような意図があるのか?という点には私も思う所はあるのではあるのですが、それはまた後の段に譲るとして。
ほんなら「ダークファンタジー」「骨太な物語」「本格ファンタジー」とはどんなものかというのを一緒に考えていきたいと思います。
まず、「王道」に立ち返ってみましょう。
人によって見解は異なるとは思いますが、ここはJ・R・R・トールキンの「指輪物語」(1955~)に立ち戻ります。
この世界観をゲームにしたのが元祖TRPG D&Dです(1974年)この辺で、ドワーフ、エルフなどの現状のファンタジーの構成要素がシステム化され、今でいう所の「テンプレ化」していきました。
これが大流行し、ゲームで遊べるようにしたのが「ウィザードリィ」(1981年)
これをもとにドラゴンクエスト(1986年)が作られ、日本のファンタジーの基礎となりました
同年、D&Dのリプレイが雑誌に掲載。このシリーズが「ロードス島戦記」(1986年)で、同じグループが1989年に「ソードワールドRPG」を刊行します。
さて、この辺りで、変化が起きます。
言うなればファンタジーそのものの「ライト化」ですね。
私もD&Dや、T&TなんかのTRPGのルールブックを読んでキャラを作ったことありますがもう細かくてしょうがないw
能力値を決めてからその人物が持てる重量を計算し必要な道具を買いそろえたら……なんてやったらキャラ作るのに半日かかりましたw
ええ、その日はそれで解散ですw
ゲームどころじゃありません
だいたい、資料が英語だし手に入らないものだから、もうあれこ自分で何とかするしかない。
その辺、ソードワールドRPGはシンプルで便利でした。
文庫本だし、日本語、サイコロがあればなんとかなる。
その段階でリアルさは捨て、多少の「ご都合」には目をつぶったわけです
「ウィザードリィ」になぜ広大なダンジョンがあるのか?
それは当時のPCの能力では、そう言う閉鎖空間にしなければ世界が表現できなかったからです。
だから、ダンジョンの奥深くに、大量の、それも強大なモンスターが居るのもご愛敬ですw
魔物巣くう深層階に騎士とか出て来るけど彼らは何喰ってるんだ?とか考えちゃダメな話w
「ドラゴンクエスト」も同様ですね。
開発秘話なんか聞いてると、搭載できるデータ量との戦いです。
この辺で様々な「ご都合」が生まれました。
「勇者」って職業じゃなくて人から言われるもんでしょ?
とか言うのは野暮ってもんですW
そして、鳥山明氏の特徴的なデザインがまたライト化を推し進めました。
ブームの最盛期にはモンスター主役の小説だか絵本だかがあったんですよw
この辺の流れで「ポケモン」に続くわけですね。
このへんが八百万の神がいて、妖怪の居る日本での独自進化と言えるでしょう
この辺でいわゆる「ライトノベル」にドラクエの世界観をさらにライトで、ポップな感じにした作品がたくさん出てきます。
「スレイヤース」(短編1989年・1990年長編第一巻)辺りになると、この辺の「ご都合」を逆手にとってギャグにするという形がとられるようになりましたw
当時は行くとこまで行ったと思いましたが、今はこの辺がベースになっているんですねぇ。
このあたりから数年、状況を細かく見てはいませんでしたが、今はさらにライトな方向に流れているようです。
もはや、如何に変わった設定を持ってくるかの競争になっている感するらあります。
ですので、ファンタジーというジャンルはここ数十年、明らかにライトな方向……良く言えばわかりやすく、悪く言えばお約束だらけのものになっていったという事になります。
正直ライトノベルをあんまり見ていなかった私にとってはなんでこんなテンプレができてるのか理解できないものすらありました。
「本格ファンタジー」を目指すなら、まずその辺りのプロセスと価値観を、一回投げ捨て、「指輪物語」に、無理ならせめて「ドラゴンクエスト」「ウィザードリィ」辺りまで原点回帰を図らねばなりません。
重要な所は、「引き算」です。ご都合は書いてる側にとって便利なツールですが一旦排除しましょう。
これが原点回帰「本格ファンタジー」です。
主人公にはチート能力はありません。
元は何でもない人が、試練を前にして知恵と勇気と筋肉で何とかする。
魔法?
あるにはありますが希少なものです。
低レベルの魔法使いの魔法なんて、おまじないかお祈り程度。
「指輪物語」なんかのガンダルフ級の魔法使いになると、もう国に一人いるかどうかです。
元来魔法使いなんてそんなもんなんですよね?
学校なんかで習うもんじゃないし、老人になってやっと術が使いこなせるかどうかの世界です。
「桃太郎」で考えてみましょう。
桃太郎は桃から生まれません。
桃を食べた老夫婦が若返ってハッスルした結果生まれた子です。
やがて桃太郎は成長し、吉備津彦となり、狂暴な鬼、温羅討伐に向かいます。
こんな感じ
ではここに「ダーク要素」を足して行きましょう。
やはりここで例に上がるのは「クトゥルフ神話」でしょうか?(ホラーと言った方がいいかも)
特徴としては、やはり人間が非常に弱い存在です。
一度、これもマスターやってみましたが、ライトにしたシステムでもゾンビ一体でパーティが全滅しかねないくらいのパワーバランスです。
死体を見ただけで卒倒したり、神や魔物を目撃しただけで狂死するというシステムになっており。
当然、崖なんかから落ちたら、助かりません
クトゥルフの神々にとって、人間は虫くらいの存在です。
今はどうか知りませんが、私がマスターをやった時は、次々プレイヤーが脱落し、生き残ったプレイヤーが泣き叫ぶのをみんなで「早く楽になれよ」と言いながら鑑賞するのが通例になってましたw
他の洋物のTRPGも同じです。
どのルールだったか覚えてませんがドラゴンの能力値は非常に雑だったのを覚えています。
攻撃:必中 ダメージ:即死
こんな感じw
もう認知され、敵対した段階で終了です。
そもそも、本格ファンタジーと同じで魔法がたいしてあてになりません。
状況によっては国家も、村もあっさり全滅するし、何なら人類の存亡がかかっているかもしれないような状況です
そして、重要な「ダーク要素」
それは、「力を得るには代償を伴う」という要素です。
チート能力でもなんでもいいですが、能力を得るには代償なり、反動がある。
時間制限みたいなのはライトな部類です。
寿命が縮む、何かを生贄に捧げるなどなど……
当然、敵も味方もです。
悪魔と取引して、魔法が使えるようになった魔女がいるかもしれない。
誰かを生贄にして強力な武器を作ったかもしれない
それが嫌なら死に物狂いで戦わないといけない。
仲間も全員生き延びられるかどうかわからない。
ラスボスを倒すのに究極の選択を迫られるかもしれません。
ハッピーエンドになるかどうか最後までわからないかもしれません。
何故?そこまでして力を?
当然こういう問いが巻き起こりますし、ドラマも生まれます。
権力欲、復習、愛欲、様々な要素が絡み合い「ダークな世界観」が出来上がるわけです。
さて、これを桃太郎でやってみましょう
鬼に蹂躙された世界、村を滅ぼされ、我が子を食われた老夫婦は復讐を誓い、禁断の術を使います。
翁は、生き残った娘「桃」に呪術をかけ、自らの魂を生贄にして転生を試み、そして鉈で彼女の腹を裂きそこから桃太郎が生まれます。
成長した桃太郎は、吉備津彦と名乗り、鬼の軍団に戦いを挑みます。
彼らの前には、鬼の手下となり果てた犬、猿、雉が襲い掛かります。
ですが、彼の手には剛力を手に入れられるが、寿命が縮む禁断の秘薬「きび団子」が握られていました。それは老婆が、自分の命と引き換えに作り上げたものです。
吉備津彦は、そのきび団子で彼らを退治すると、逆らえぬよう魔術で彼らの魂を縛り、使役します。
こうして、吉備津彦は、自らが術の反動で滅びる前に、鬼たちを一匹残らず駆逐すると誓うのでした。
うん、こんな感じかなw
ポイントとしては、楽をするためにライト要素やご都合を安易に持ち込まない事です。
激しい戦闘で全員が死亡確認されたのに、全部終わったら、なんか復活しちゃってる話ありましたよね?
何の説明もなしに、急に仲間になって生き返ってきた超人もいました。
あれでもう、一気にダークからギャグになってしまいますw
いや、嫌いじゃないけどw
ダークとか言わんでくれとはなりますわ。
桃太郎が無意味にチート能力持って鬼相手に北斗の拳みたいな無双したり、未来人がやってきて機関銃を与えたり、実は転生者で現代知識を使って無双とかすると、一気に世界観がダークからライトへ、下手すりゃ温度差でかっこいいを通り越してギャグになります。
なので、心を鬼にしてあえてダークな展開、設定を作り、容赦なく、試練を与え、場合によってはバットエンドも辞さない。
この辺りに心の葛藤や、罪悪感なんかを入れるとまたドラマが増してくるわけです。この辺の匙加減が重要なわけですねぇ
この辺りで気づきました?
そう、これ、主人公もそうですが作者がすごくきついのw
本格、ダークと、言う方向に傾けていくと、主人公や作者を縛る法則がどんどん増します。
主人公は普通の人間だし、モンスターは絶望的に強い。
或いは、主人公はモンスターそのもので、もうどうやってもハッピーエンドにならない。
一体どうやってお話締めるの?って困っちゃうわけです。
当然、いきなり転生してきたチートキャラが事態を収拾したら。台無しもいい所です。
野球漫画で、主人公にピンチを与えすぎて、体がボロボロになってしまい。いい加減再起不能にしないと医学的に話がおかしくなってしまう、みたいな話もありましたねw
ここで名医が現れて、ちょいと針打ったら復活……なんて、なんか違いません?
つまり、「本格」「ハード」にすると、「お約束」をほとんどぶん投げた上で、さらに作者や主人公を縛るルールが増えていくことになるわけです。
この辺、ある種のフェアさと冷酷さも持たねばなりませんし、リアルな描写を求めて、それなりに資料を集め勉強もしなきゃいけなくなってくる。
いやぁテンプレって、楽なツールなんですよねぇw
さて次は、「骨太な話」です
もう散々議論されてて、私も定義が良くわからなくなったのでw
でAIさんにまとめてもらいましょう
曰く、
“テーマ・構造・人物・世界観がしっかり噛み合い、
読者に深い満足感や思考を残す物語” のこと。
派手さやテンポよりも、
物語の芯(ボーン=骨)が強いことが評価されるタイプです。
……なるほど、
テーマ性、これは確かに、あるのかないのか判らない人が多いですし。
「テーマなんか決めたくない」
って言ってる人もいましたねぇ。
でも、物語に厚みを持たせる上では大切な要素ですし。なんか訴えがあった方が読んでて得るものがありますよね。
コンセプトと世界設定はすごくいいのに、世界設定を説明するのに必死だったり、歴史ものにありがちな、作者の知識を開陳して終わりになっちゃうパターンもよく見ました。
別に小難しいこと考えなくてもいいんですよ。
「恋愛とはこういうものだ!」とか、「こんな女の子可愛いでしょ!」とか、「俺は船体ヒーロが好きだ!」「俺の故郷はいい所!」
なんでもいい。
テーマがあると物語に統一感がでます。
Xで、「俺はテーマなんか決めない!ジャンプのマンガみたいな話が書きたいんだ!」
というポストを見かけましたが
ジャンプは「努力・友情・正義」という雑誌自体にテーマがあります
まぁ、あれはどうなんだというのがちょいちょい浮かびますがw
そこはおいておきましょう。
では、テーマを世界設定に絡ませるとどういう事になるのか?
やってみましょう。
まず、テーマを決めます。
うーん、そうだなぁここはダークっぽく「理不尽にいかに対応するか」としておきましょうか
世界設定は重厚なものにしなければ骨太になはりません。
凝る人は、ここで一から世界を構築するわけですが、まぁ、そんな過程書いてたらキリがないのでw前の章でやったようにテンプレを持ってきます
最も、骨太で重厚で、著作権主張する人がいないテンプレ
そう、「史実」ですね。
ここは自分が書きやすくて、理不尽な事が多そうな時代、まぁ、戦国時代くらいにしましょうか。
ここに鬼が現れ、吉備津彦が現れる。
名前が時代にそぐわないなら、変えてしまいましょうw
領主かなんかがいると思いますが、これも史実通りじゃなくていいw
ナーロッパと同じく、社会的な構造と、文明レベルだけ持ってきます。
その上で、主題に対するアンチテーゼ、つまりこの場合は「理不尽な状況」を配置するわけです。
全滅した村、娘を犠牲にして生まれた復讐鬼、吉備津彦に対する差別。
鬼は強く、領主はグル、誘惑に負け、鬼の手下になり下がり、襲い掛かって来る村娘とその彼女との淡い恋の果てに生まれた悲劇。鬼を倒しても、誰にも称賛されず、ただ静かに自壊しながら自らの死を待つ吉備津彦……
うん、もう元ネタが判らなくなってきたw
これは昔遊んだ「天羅万象」という和風TRPGでよくやった手法ですね。
感情がエネルギーになるシステムだったので
禅問答ではないですが、プレイヤーのキャラが抱える闇や矛盾を容赦なく突き付け、それを否定してもらう事で話を進めるわけです。
ダーク設定なら、主人公自体がアンチテーゼそのものというのもアリですね。
世界その者に否定され、最後滅びゆくのを描くのも、まぁこれはこれで面白いかと思います。
そして、当たり前ですが、やはり書いてる側はきついですw
今度は精神的な奴も込みでw
何しろ自分が思う考えの反対意見を引っ張って来て、議論を戦わせ、お話が終わる辺りに盛り上げつつ決着をつけなきゃいけない。
この辺が浅いとどうなるかというと、プロパガンダ映画に出てくるような、安っぽくて頭悪い悪役とか、ペラペラの平和論を唱える聖女とかが誕生しますw
いや、私は嫌いじゃないけどw
ダークで骨太いうといて、そんなん出てきたら台無しですw
一時期ディズニー映画がポリコレまみれになり、「説教臭い」と不評だった原因がこれです。
子供向けと開き直ったせいかどうかはわかりませんが、アンチテーゼの掘り下げが無さすぎて、プロパガンダ映画みたいになったんですね。
まぁとにかく、作者の人生観や視野の広さまで問われます。
きつい
正直、お約束のライトな奴ばかり書いていた人からすれば、相撲取りがボクシング始めるくらいの抵抗感があると思います。
そもそも、これ「ストレス展開でプレイヤーがが生れる法則」に真っ向から抵抗してますよね?
ある一定の層を切り離す覚悟も必要になってきます
なにかいい感じに融合できる方法があるのかもしれませんが、それは私もあれこれ試しているところなので何とも言えません。
むしろ皆さんの知恵をお借りしたいくらい
え?でも、「ダーク」で「骨太」なファンタジーを業界が求めているなら、賞とかバリバリ取れるんじゃないの?
と、言う疑問があると思います。
それに関しては、ここで、はっきり言っておきます
わかりません!w
と、言うわけで、次回はそう言うお話をしたいと思います




