私は嫌じゃないぞ。
次回はなるべく金曜日に。遅くとも土曜日です。
「ついたぞ、ここだ」
メルヘンチックな外装と、窓の向こうで美味しそうにパフェを頬張る人たち。
俺たちも結構早めに来たつもりだったのだけれど、既に先客は大勢居た。それだけ人気の店なのだろう。
店員に案内され、俺たちは二人用の席へ。
さっそく愛花は店員が離れる前に、すぐに例のパフェを注文する、
「ご注文ありがとうございます! よろしければ記念撮影をお願いしたいのですが……!」
そう言われ、店内の壁を見ると確かに他のカップルが撮ったであろう記念写真がたくさん貼られていた。
あれも思い出になり、カップルたちの関係を深める一つに理由になるのかな。
そして写真を断る理由もないが、少し迷っていると愛花が代わりに「私は問題ない」と答えた。
それに続いて俺も「じゃあお願いします」と伝えた。
「写真を見る限りだと結構でかいな。カップル限定、っていうのはこの大きさもあるからなのかな」
「かもしれないな。だが問題ない、平気だ」
甘い物が好きな愛花には、プラス要素でしかないようだ。
家でもアイスやケーキを食べている時の幸せそうな表情は、見ているだけでも癒やされる。今回はそれを真正面から見られるわけだ。
程なくして、パフェは運ばれてきた。
季節のフルーツをふんだんに使い、隅までぎっしりと隙がない。物足りない、なんて不満は絶対に出ないと断言できる。
愛花はそれが視界に入った瞬間から、視線でずっと追い続け、目の前に置かれた瞬間に「はわわ」と眉が下がる。こんなに良いものを本当に食べてもいいのか? と言いたげに。
「こんなに良いものを食べてもいいのか……?」
「いいんだよ」
しかしその前に、パフェを目の前にしてだが記念写真を撮ってもらわなければならない。
俺と愛花はそのパフェを中心に、その両端に移りピース。
店員が写真を撮り終えると「ありがとうございます!」と言い、その場を離れる。
やっとだ、そう顔に浮かんでいた。愛花はスプーンを握り込んでいる。
「さ、食べようぜ」
「いただきます!」
一口その甘味な山を掘り進めれば、あとはもう止まらない。間違いなく、愛花の周りからはピンク色のハートが実体化して浮かんでいた。
あまりにも蕩け過ぎな顔に、俺は少し笑ってしまう。
女の子が、というよりも。愛花は甘い物が絡むと本当に人が変わっていると言っても過言ではない。
日頃の姿を知っていれば、そのギャップの差に本当に驚くことだろう。愛花に関しては、可愛いよりもカッコいいと言われたことのほうが多そうだし。
結局は愛花も、他の子と何一つ変わらない、甘い物が好きな女の子だということは決定的だった。
「はぁ……最高だった……」
あっという間にぺろりと完食。
俺も結構夢中で食べ進めた気がしたが敵わなかった、少し遅れてスプーンを置いた。
「いやこれは確かに。うまいな」
「あぁ、良いものだ……ん」
愛花の指が近づいてきた時にはもう遅かった。
どうやら、俺の口元にクリームがついていたらしい……愛花はそれを指で取り、それを舐め取った。
「まったく、クリームのお弁当とはな」
あまりにも平然としていたから、面食らう俺がおかしいみたいだった。
だからそれについては聞かざるを得なかった。
「……愛花、嫌じゃないのか? そんな、俺についてたやつを……」
「嫌だったらしないだろう」
と、これまた平然と答える愛花。
……もしもアキラ達に今の現場を見られていたら中々面倒な状況だが、これで愛花が照れていたりでもしたらもっと面倒だったかもしれない。そう思うと、その態度で助かったかも。
「私は楓太のことは好きだからな。そもそもそれくらいのことで嫌だったら、今日は誘ってすらいない」
一瞬、ドキリとした。
好きだからな、の言葉がLOVEではなく、LIKEであることはわかっているのだけれど。ここ最近の出来事でそのあたりにかなり敏感になっていた。
とはいえ、ここまで好意を包み隠さずにいられると気恥ずかしい。
「そうか……ありがとな」
「お礼を言うのは私だ。今日は一緒に来てくれてありがとう……でも、あと一つ行きたい場所があるんだ。付いてきてくれるか?」
俺の答えは当然、YESだった。
次回は今回の話のアキラと叶視点です。
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