僕らの一日だけの戦争 Part3
「それで、何も出来ずにノコノコと帰ってきたってわけ?」
「す、すみません……」
羅生門の独占する小さな建屋。
花谷は愛花を勧誘するために送り出した下っ端三人組を自身の目の前で正座をさせていた。
「まあ、大して期待はしていなかったけどね。あんたたちじゃあ八月朔日愛花には敵いはしないって」
「でもね」と花谷は言葉を続ける。煙草に火をつけ、その副流煙を吹き付ける。
「あんたたちが俺たちに任せてくださいって言ったのよ? 私の期待に応えたいって言って……」
「そ、それは……」
「なにか言い訳があるかしら?」
答える事ができない様子を見て、花谷はため息をついて金田に視線を向けた。それはこの三人組の終わりを意味していた。
「金田」
金田が名前を出た瞬間、一気に顔が青ざめる。そして次々に先程の黙り込んだ姿とは一転、必死に口を動かせる。
「まっ、待ってください!! つ、つぎこそっ、絶対に連れてきますから!」
「油断しただけなんです! 俺らもマジでやればあんなヤツ……!」
ピクリと花谷の眉が反応する。あんなヤツ、という言葉に。それは花谷の機嫌を損ねるには十分過ぎる。
「あんた……私が目をつけた逸材をあんなヤツ呼ばわりしたわね?」
「あっ……」
「バカッ……!」
口を抑えてももう遅い。一度吐き出した言葉が戻ることはないし言わなかった事には出来ない。出来ることは、もう覚悟を決めることだけだった。
「やりなさい金田」
「あぁ……おい、変な気は起こすなよ。大人しくしていれば、案外すぐに終わる」
「う、うぅ……!」
その他のメンバーに押さえつけられて、鋼鉄の扉の奥へと連行される。
「相変わらずだねぇ、金田は。一番マトモですって面してエグいこと大好き」
「統制はとれるわよ。恐怖だろうとなんだろうと……ところで、御剣はまた?」
「アイツは必要なとき以外はほっときな……それに、アイツはこの手の事が嫌いだからな。不機嫌になりかねん」
またどこかで遊び回っている御剣に呆れる花谷。御剣が集会に来ないことはいつもの事だが。
「ぎゃぁぁぁぁ……」
「お、始まった」
金田は幹部の中では喧嘩はあまり強くはないが、その代わりに持った才能がある。
それは拷問だ。
やりすぎれば殺しかねないほどに残酷で悲惨極まりない拷問を罰として与えたり、敵勢力の活気を消すために無惨な姿で送り返したり。
「ふぅん……そうねぇ。やっぱりここは八月朔日愛花にとっての大切な人を人質にしてチームにいれるとしましょうかね……」
「そんなのいるのか?」
「あいつの例の妹たちはだめね。おそらく返り討ちもありえる……ならば」
花谷は写真を一枚小田切に投げ渡す。
「誰だよこいつ」
「宮下楓太……居候しているらしいわ、以前庭で仲良くバーベキューしていたところを見つけさせたの──こいつを捕らえるわよ」
今回はここまでとします。
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