女の子の水着。
買い物袋がそろそろ重く感じだす頃、家にようやく帰り着いた。準備班の愛花と叶の手際は良く、既に炭に火が付き、アルミホイルに包まれたマグロの頭を焼き始めていた。
「おかえりー、早かったね」
「待たせちゃ悪いと思ってな。そっちも順調そうだな」
荷物をおろして、買ってきた肉や野菜を取り出す。
マグロを焼いている間、その端でそれらを焼いてマグロの完成を待つ。
「バーベキュー感でてきたね」
「あぁ、センターのマグロで損なわれていた分がな……」
いざ始めてみると、その存在感は圧倒的。アルミホイルで包まれているから、得たいのしれない物を焼いているこの感じがなかなか意味不明だ。
「あ、でもいい匂いしてきたかも」
「本当だな。結構いい感じなのかな?」
少しだけ香ばしい匂いが漂ってきた気がする。もしかしたら野菜か他の肉の匂いかもしれないけれど。
「いや、つーかマジであちぃな……」
冷えた麦茶をがぶ飲みするアキラ。そうしたくなる気持ちもわかる。額から流れる汗が、伝って顎へと滴り落ちる。
愛花も叶も同様で、うちわで扇ぎながら火の番をしているが、それも無駄なようだ。
「……ねぇねぇ、確かさー。押し入れの奥に小学生の頃使ってたビニールプール無かったっけ」
「あぁ……そういえば確かにあった。それで涼もうという考えか?」
「その通り愛花姉ぇ!」
ビシッと親指を立てて正解を表す。
確かにビニールプールを冷たい水で満たして入っていれば、かなり変わりそうだ。しかしそうなると……。
「え、水着?」
「そりゃそうだよアキ姉ぇ。じゃないと入れないじゃん」
「あー……いや、まぁそうだよな」
「丁度いいじゃないか。この前プールに遊びに行きたいと言っていただろう?」
「それとはまただいぶ違うけどよ……」
「まぁ、熱中症対策の一環と思えばいいさ。マグロ諸々は俺が見ておくから、3人は着替えとか済ませてきな」
叶を先頭に、3人は家の中へ入っていった。
「しかし本当に暑いな……俺も水浴びしたいな」
絶好のプール日和ではあるのかもしれない。
そうだ、今度は本当に日焼け止めとか塗るように言ったほうがいいかもしれない。今度は肌の露出が増えるわけだから。
「……」
ちょっとそわそわしている自分がいることに恥ずかしくなる。可愛い子たちの水着が見られるからって約得だとか、そんなことは思っちゃいないが……少し、落ち着かない。
3人が中に入って、30分くらいが経った頃。ビニールが擦れる音が中から聞こえ、それが近づいてきた。
「おっまたせー!」
一番最初に出てきたのは叶だった。大きなビニールプールを抱え、ウキウキとしている気持ちが隠せていない。
庭に降りてそれを置き、外から中に呼びかける。
「よいしょっと……愛花姉ぇ〜、アキ姉ぇまだ?」
「なにやら迷っているみたいでな。どちらと変わらないと思うが」
次に愛花が出てくる。
愛花の水着は意外にも大胆なオフショルダーのトップス。けれど大きめのフリルが可愛らしい水着だ。
「いぇーい、楓太兄ぃ、どう? 似合う?」
腰に手を当てるポーズをする叶の水着は、少し背伸びしたビキニタイプだ。桜の花びらのようなワンポイントに叶のこだわりを感じる。
「あぁ、すごく似合ってるぞ」
「へへー! でしょ!」
うっふん、とわざとらしく叶が出せる限りのセクシーボイスを出しながら前かがみ。
──意外とあるなこの子。
(いかん、何を考えてるんだ俺は)
罪悪感に襲われるが、そんな意識もまた吹き飛んでしまう。愛花の全身を見てそうなってしまった。
(うわ、すごいな……グラビアアイドルみたいだ)
出るところは出て。
引き締まるところはきゅっと。まさしくボン・キュッ・ボンというやつだ。直視してはいけないと理性は訴えかけるが、それを男子としての本能が邪魔をする。
「楓太兄ぃ、見すぎ〜」
「なっ、ち、違うぞ! そのほら、よく似合ってるなぁと……!」
「ふふ、ありがとう、楓太」
同い年とは思えない愛花の態度に感謝する。本当は俺より歳上なんじゃないだろうか。
「あ! アキ姉ぇも来た!」
確かに背後から足音がしていた。でもそれは何度も奥へ戻っている。
「アキラ? どうかしたのか?」
「あっ、いえ……うぅん……」
小さくゴニョゴニョと聞こえたかと思うと、「ええいままよっ」と言いながらようやくアキラがやってきた。
アキラの水着はリボンデザインのトップスに、昼間履いていたようなショートデニムタイプのボトムス。何をそんなに不安がっていたのか良くわからなくなるくらい、アキラに似合っていた。
すらっとしていて、引き締まったウエストなんか特に──
「……いま『妹より胸ないんだな』って思ったでしょ」
「いやっ、本当に思ってないです!!」
本当は。
本当は、ちょっとだけ思いました。違うんだアキラ、これはもう男子としては仕方のない性なんだ……!
「まぁいいっす。……私に言う事はないんすか」
「あぁ……似合ってるぞ、アキラ」
それを聞いて、アキラは満足そうに「そっすか、へへ」と笑った。
「水たまったよー!」
いつの間にかしっかり水をためていた叶。もうプールの準備も万端なようだ。
「よし、じゃあ涼みながら、バーベキュー本格開始としますか!」
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