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その隙をついてヒロシが走り出した。
「おい、こら、待ちやがれ!」
木戸がすぐさま後を追い、四人がそれに続いた。
「くそう、どこにいきやがったあのやろう」
ヒロシは走るのが意外と速かった。
おまけに夜だし廃墟は広かった。
あたりには遊園地の施設がそのままとなっており、人一人隠れる場所などいくらでもあった。
完全にヒロシを見失っていた。
「どこかに隠れてやがるんだ。おい、おまえたちは向こうを探せ。俺は滝本とあっちを探す」
「おう」
「わかった」
「絶対見つけてやるぜ」
三人を見送ると、木戸が言った。
「まさかあんなやろうに出し抜かれるなんて。むかむかするぜ」
「あいついったいなんなんですか」
「ああ、あいつか。公園でたまたま見つけたんだ。ちょうどいいパシリだと思ってな」
「やっぱりパシリですか」
「当たり前だ。あんなやつでおまけに年下だ。どうころんでもパシリにしかならんだろう。後輩で俺の仲間と言えるのは滝本、おまえくらいだ」
臆面もなく、人の顔を見ながらそんなことを言う。
普段はワルだが、滝本は木戸のこういうところが好きだった。




