人生ゲームを作った日(終)
エロ漫画家さんからヒントを得た俺は、連日プログラミングに勤しんだ。雨の日も風の強い日も……いや、プログラミングって室内でやるもんだし、そもそも雨なんて降らなかったが……まぁとにかくパソコンと睨み合った。
少し書いてはプログラムを動かし、その度に起こる謎のエラーに悩み、そして――
「……出来た」
3月30日。
約束の日の2日前。
俺は、ついに人生ゲームを完成させた。
「いぃぃぃよし! よしよし!」
なんだこの達成感……やべぇ、誰かに自慢したい!
やっぱ俺って天才なんじゃねぇの!?
ほらほら、これだよ、これ。
これが俺の書いたプログラム!
#include <iostream>
#include <stdio.h>
class game
{
public:
void settei()
{
genzaiti = 1;
syozikin = 100;
}
void hyouzi()
{
printf("\n");
printf("|***********************| \n");
printf("|--1-- --2-- --3-- --4--| \n");
printf("|*****************|--:--| \n");
printf("|*****************|--5--| \n");
printf("|*****************|--:--| \n");
printf("|*****************|--:--| \n");
printf("|--9-- --8-- --7-- --6--| \n");
printf("|***********************| \n");
printf("\n");
printf("1P 現在地 %d 所持金 %d 円\n",genzaiti,syozikin);
printf("\n");
printf("ルーレットを回す(何か数字を入力)\n");
}
void hyouzi2()
{
printf("\n\n1マス進んだ!\n\n\n");
printf(" %d 円拾った! \n",genzaiti*100);
syozikin = syozikin + genzaiti*100;
int a;
printf("\n 何か数字を入力して次へ");
scanf("%d",&a);
}
int genzaiti;
int syozikin;
};
int main()
{
game obj;
int a;
obj.settei();
for(int i=0;i<9;i++)
{
obj.hyouzi();
scanf("%d",&a);
obj.genzaiti = obj.genzaiti + 1;
obj.hyouzi2();
}
printf("\nゴール!\n");
return 0;
}
「……ふっ、我ながら素晴らしい」
あのふざけた本で、ここまでの物を自力で作り上げる俺……やはり天才か。
さて、自画自賛はこのくらいにして、俺が作った物について説明しよう。
このゲームは1人用です。
このゲームでは毎回1マス進むことが出来ます。
1マス進む度に、お金を拾うことが出来ます。
「ふっ、我ながら素晴らしいクソゲーだぜ」
そう、これは紛うこと無きクソゲーだ!
だが、どんなクソゲーでもゲームであることには違いない。
よってこれは人生ゲームだ!!
「……」
この上ない満足感と共に、ゲームを起動してみる。
|***********************|
|--1-- --2-- --3-- --4--|
|*****************|--:--|
|*****************|--5--|
|*****************|--:--|
|*****************|--:--|
|--9-- --8-- --7-- --6--|
|***********************|
1P 現在地 1 所持金 100 円
ルーレットを回す(何か数字を入力)
カタカタ(数字を入力した)
1マス進んだ!
200 円拾った!
|***********************|
|--1-- --2-- --3-- --4--|
|*****************|--:--|
|*****************|--5--|
|*****************|--:--|
|*****************|--:--|
|--9-- --8-- --7-- --6--|
|***********************|
1P 現在地 2 所持金 300 円
ルーレットを回す(何か数字を入力)
カタカタ(数字を入力した)
1マス進んだ!
300 円拾った!
|***********************|
|--1-- --2-- --3-- --4--|
|*****************|--:--|
|*****************|--5--|
|*****************|--:--|
|*****************|--:--|
|--9-- --8-- --7-- --6--|
|***********************|
1P 現在地 3 所持金 600 円
ルーレットを回す(何か数字を入力)
「……ふっ、やはり紛うことなきクソゲーだ」
1がスタート地点で、9がゴール。
1歩ずつ進み、小銭を拾い集めるだけのクソゲー。
同じことを9回繰り返すだけのクソゲー。
だが、どうだろう?
このクソゲーを作れと言われて、自力で作り上げられる人が、いったい何人いるだろう?
それに、よく考えたら絶望的なクソゲーというわけでは無いかもしれない。
人生とは一歩ずつ進む物で、後戻りは出来ない。そして、一歩進む度に何かを拾う……もちろん後付け設定だが、素晴らしいメッセージ性を持ったゲームと言えなくもない……いや、無理か。
「…………」
パソコンを閉じて、その上に突っ伏した。
ひんやりとした感覚が頬を伝い、少しだけ気持ちが良い。
……達成感、達成感か。
これほど大きな達成感を得られたのは、いつ以来だろう。
直ぐには思い浮かばない……というか、今迄に何かをやり遂げたことって、あっただろうか?
少し前に兄貴の店で一週間働き続けるという目標を達成したが、これは少し違う。だって、あれは俺が何もしなくたって、時間が解決していた問題だ。
でも今回は、時間は関係無い。
俺が自分の力で、成し遂げたんだ。
………………
「……やべ、寝るとこだった」
時刻は15時くらい。
ここ数日ほとんど寝てなかったせいか、一気に疲れが来た。
だけど、ここで寝たら5時のお迎えに間に合わない。
俺は体を起こして、うんと背伸びをした。
首筋に手を当て、軽く首を回す。
「……歩くか」
欠伸混じりに部屋の外へ出て、眩しい光に目を細める。
見上げると、そこには雲ひとつ無い青空が広がっていた。
連絡、この先について。
現在そこそこ大きな改稿作業を行っております。
このあと龍誠君は和崎君と話をするのですが、この辺りから物語の辻褄が合わなくなります。
ひとまず、改稿作業に影響しない部分をSSとして投稿しつつ、今後について考えることにします。




