人生ゲームを作った日(5)
「げ、ゲームプログラミングですか? 私はグラマーというよりゲンガーですので……って、どこ見てるんですか!? グラマーってそうじゃなくてプログラマーの略ですよぉ!」
「誤解だ、貧乳はみさきで間に合ってる」
「分かるってことは見てたんじゃないですかぁ!?」
「見てない」
「ムキィ!」
困った時のエロ漫画家さん。
いつものようにドアの前で正座する俺と、部屋の中央で座布団に座る彼女。
本当に悪気は無いのだが、頼み事をする度に怒らせてしまっているような気がする。
「あれだ。今度メシでも奢るから、許してくれ」
「なら仕方ないですね、ふひひ」
いいのかよ。
「はてさて、どうしてゲームを?」
「働く為だ」
「ふへへ、いっつも簡潔ですよね、憧れます。私なんて、無駄に話が長くて……同人誌とかもコマ割りが苦手で……はぁ」
小回り? ドライブとか趣味なのか?
「ええとぉ、今回はお役に立てそうにありません。面目ないでござる」
「そうか……一応現状の相談だけしておく」
箱と眼鏡と鍵、それを使って何とか作ろうとしているが上手くいかないこと、そういう話をした。
「ふむふむ……もういっそ画面を固定してみては?」
「固定?」
「はい。ええと、ボードはAAで表現して――アスキーアートです! おっぱいのことじゃありませんよぉ! もう!」
言ってねぇよ見てねぇよ。
どんだけ気にしてるんだよ。
「……アスキーアートって何だ?」
エロ漫画家さんは不機嫌そうにそっぽを向いたまま言う。
「点とかで表現する絵のことです。たとえば……」
彼女は机の周りから紙とペンを手に取って、小刻みに手を動かした。
そして僅か数分後、出来上がった絵を俺に見せる。
「……やっぱり上手いな。何かのキャラクターか?」
ヤケにデカい目と、特徴的な髪の毛……なんか頭の上にアンテナが立ってる。
「ぐぬぬ、こなたんを知らないとは……やはり一般人の方でしたか」
こなたん……? 今度調べてみよう。
「ええとですね、よく見てください。絵に見えますが、点とか、記号とかで出来ています。はい。あ、二次元のヒロインを記号扱いするとガチな人は沸騰するので気を付けてください」
俺は少し目を細めて、正座したまま体を前に倒す。
「……確かに、よく見ると点とかだな」
「ふひひ、ですから……」
と、再び髪にペンを走らせるエロ漫画家さん。
こうして見ているだけでも、楽しそうなのが伝わってくる。
本当に好きでやってるんだな……少しだけ尊敬するよ。
「こ、こんな感じで……どうでしょう?」
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「ええとぉ、あの、何かコメントを頂けると……」
「ルーレットはどうすればいと思う?」
「へ?」
「何マス進むのか決めるアレだよ」
「いっそ固定しちゃうとか、どうです? ……じょ、冗談です、はい。そんな目で見ないでください」
……いける、いけるぞ。この方法なら形になる!
「な、なんで立ち上がったんですか……? もしかして、怒りました……?」
「あ? 怒るわけねぇだろ最高だよ」
「何か浮かんだのでせう?」
「おう。悪いが、忘れないうちに作ってくるよ。本当にありがとうな」
「いえいえ、私なんかがお役に立てたのなら嬉しいです、はい」
「謙遜すんな。あんた最高だよ、ほんと。大好きだ」
「へ、あ、アヘッ!?」
「またな!」
と、俺は部屋を後にした。ついっても隣の部屋に戻っただけなんだけどな。
それはそうと、どんどん借りが増えてく。早く返さないと大変なことになるぞ、これ。




