人生ゲームを作った日(1)
『
おつ☆かれ☆さま(*ノωノ)
プログラムって簡単でしょ♪
』
ある日の昼。
俺は僅か30ページ程の薄い教材――猿でも分かるC言語――を読破した。
結果から言おう。
まるで分からん。
この本で得た情報をどう使えば人生ゲームを作れるのか、まったく想像できない。
まぁ、まずは俺が勉強した事を紹介しよう。
『
ドキ☆三種の神器
プログラムに必要なのは、たった3つ!
ひとつ! 箱!
ひとつ! 鍵!
ひとつ! 眼鏡!
たったこれだけで、世界征服だって出来ちゃう☆
』
この本を読んでいないヤツには何のことか分からないだろうから、もう少し具体的に説明しよう。
まず、プログラムってのは、ただの計算機らしい。
1+1=2とか、そういうアレだ。
この計算結果に名前を付けて箱に突っ込み、あれこれするってのが、この一週間で分かったことだ。
int a = 1 + 1 ;
これが箱を作る方法。
あいえぬてぃーってのは、コンピューター語で箱を作れって意味らしい。
原文はコレだ。
『
キュアっ、プラパパ☆
箱を作る魔法の言葉!
~ int ~
』
マジで本を破り捨てようかと思った。
さておき、aってのが名前で、= 1 + 1 ; てのは、まぁ感覚的に分かるだろう。
aって名前の箱に、1+1を突っ込んでるだけだ。
これが箱。
次に、眼鏡だ。
『
ほんとぅに箱に入ったか気になるよね?
そんなキミに、
眼☆鏡をプレゼントだ( *´艸`)
printf(" %d \n " , a);
と書いて、プログラムを実行してみよう!
1.vim 1.cpp でエディタを開く
2.前回と同じ手順で、mainの中に書き加える。
#include <stdio.h>
int main()
{
int a = 1 + 1 ;
printf("%d \n",a);
return 0;
}
3.g++ 1.cpp でコンパイルする
4../a.out でプログラムを実行
てへ☆初めてのプログラム実行が完了しちゃったね♪
』
指示通りにプログラムを実行したら
2
と表示された。
眼鏡を使えば、箱の中身を見ることが出来るらしい。
ふざけた教材のわりにサクサク進むから、俺は少しだけ楽しかった。
そして最後は、鍵だ。
『
どう? どう?
プログラムって簡単でしょ(*´ω`*)
じゃあ最後は、鍵だよ!
printfを書いた場所ぉ|д゜)
これからメインの中って呼ぶからね!
メインの中を、
char seibetu = 'M';
if( seibetu == 'M')
printf("%c is the parts of Man \n",seibetu);
if( seibetu == 'W')
printf("%c is the parts of Woman \n",seibetu);
return 0;
こんな風に書き換えてね☆
キャハ♪
ついでにcharも使っちゃった(/ω\)
この子は文字を入れる箱だよ(*ノωノ)
いろいろ書いて、確かめてみてね!
』
指示通りにプログラムを実行したら
M is the parts of Man
と表示された。
いろいろ試せとの事なので、もしやと思って
char seibetu = 'W';
に書き換えたら、
W is the parts of Woman
と表示された。
最高に天才的な俺の頭脳によると、鍵ってのは最初に作った箱のことで、正しい鍵を突っ込めば中の物を取り出せるっていう意味らしい。
「……おい、待てよ、それなら」
この時、俺は閃いた。
char oppai = 'AA';
if(oppai == 'AA')
printf("みさき");
if(oppai == 'A')
printf("3年後");
if(oppai == 'B')
printf("5年後");
if(oppai == 'C')
printf("8年後");
if(oppai == 'D')
printf("10年後");
if(oppai == 'E')
printf("13年後");
なんだよコレ!?
こんな簡単に未来予想図が作れるのかよ!?
「……なにやってだ俺、勉強ウイルスに頭やられちまったか?」
とか言いながらも実行――って、うぉ!?
なんか変な文字出て来たぞ!? 壊れたか!?
「すまねぇみさき、許してくれ、悪気は無かったんだ!」
この後いろいろやった結果、'AA' が問題だったらしい。
どうやらcharって箱には1文字ずつしか入れられないようだ。
「……ふぅ、焦ったぜ」
とにもかくにも。
以上が三種の神器だ。
さて、ここで問題だ。
たったコレだけの知識を使って、いったいどうやって人生ゲームを作ればいい?
人生ゲームといえばアレだろ?
ルーレット回して、ボードの上をクルクル周って、死ぬまでにいくら稼げるかっていうゲームだろ?
……ダメだ、さっぱり分からねぇ。
さらに本を読み進めていくと、それなりに知識が増える。
箱をいっぱい使う方法とか、繰り返す方法とか、でかい箱とか……。
だが、どれだけ知識が増えたところで、結局は三種の神器を使っているだけだ。
「……とりあえず、この計算機ってのを作ってみるか」
この本には『一緒にプログラミングしよう☆』という部分がある。
というか、ほとんどコレだ。
見たところ、簡単な四則演算が出来るプログラムを作っているらしい。
良く分からないが、これを作れば人生ゲームを作れるようになるのかもしれない。
「……計算機から人生ゲームって、飛躍し過ぎだろ」
頭を抱えながら、俺は計算機を作り始めた。




