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SS:まゆみと隣人

 どうも、小日向こひなたまゆみ、22歳です。


 専門学校を卒業した後、ニートしながら同人誌書いてます。


 早速ですけど、死にたい。


 今朝起きたら、私の楽園というか、大事なところがとても湿り気を帯びていて……。


 つまり、その……この歳で、やってしまいました。


 何か怖い夢を見ていたような気がするのですが、思い出せません。


 とにかく、死にたい。


「ふ、ふひひ、ふへ……こんな、こんな売れ残りの喪女が、おもらし属性まで手に入れてしまったら、もう、もう……ふ、ふふひひ、せめて、せめて殿方に綺麗と言っていただけた今の若さを保ったまま、一生を終えたい所存でございまする」


 \あめんぼ赤いなあいうえお!/


 う、噂をすれば、例の殿方のお声が。

 あめんぼ……発声練習?


 あ、例の殿方というのは、お隣に住んでいる男性で……ええと、女装をしたら似合いそうな顔をした……じゃなくて、少し近寄り難い雰囲気のあった方です。

 最近、娘さんと一緒に暮らすようになって、なんだか柔らかくなりました。


 何やら私の評価が高いようで、何かと相談されます。

 ふへへ、もしかして私のこと好きなんじゃ……なんて、ありえないですけどね。


 それはそうと、懐かしい。

 あめんぼ……高校時代は隣の演劇部から毎日聞こえて来たなぁ……ふひひ、あの頃はまだ私も……あ、もっと死にたくなった。


 \麗らかな声で、そいつは言ったよあいうえお!/


 ……あれ? 浮藻に子蝦こえびが泳ぐんじゃないの?


 \もう一回! 麗らかな、はい!/

 \うらぁかなっ/


 ふへへ、なにこれ微笑ましい。

 そういえば、あの人って寡男やもおなんだっけ……?

 お母さんのいないみさきちゃんを悲しませないように頑張ってるのかなって思うと……。


 \返して!/


 アヘっ!? けけけ、喧嘩でござるか!?


 \かきくけこ!/


 なにそれ!?

 オリジナル!? オリジナル発声練習!?


 \きつつき、こつこつ、枯れケヤキ!/


 じゃない!?


 \些細な、ことだけれど、さしすせそ!/

 

 どういうこと!?


 \やるなみさき! ちゃんと言えたじゃねぇか!/

  

 レベル高杉ィ!!

 発声練習のレベル高杉ィ!


 \それは、とても大事な、物なの!/

 \それは、とてもだいじな、ものなの?/

 

 みさきちゃんノリノリ!?


 \確かに、彼女はそう言った/


 ええと、ストレスが溜まってるのでせう?

 それとも実体験なのでせう?

 

 \とてとて、たったと、飛び立った!/

 \とてとて、たったた、とびたった!/


 たったたwww

 みさきちゃんwww

 たったたwww


 ふひひ、分かりましたよ。

 あのひと、多分うろ覚えでやっているのですな。


 \なんで、どうして!? なにぬねの!/


 こっちの台詞だよ、もう。

 はぁ、なんか死にたいとか思ってた自分が馬鹿みたいに思えてきた……。


 \なんとか言ってよ!/


 何を言えと申すか……はぁ、漫画かこ。


 \鳩ぽっぽほろほろはひふへほ!/


 あ、そこは覚えてるんですね。


 \――日向――お部屋に――火を放つ/


 ふぇ? 


 ……小日向の、お部屋に、火を放つ?


 あへっ!? わた、わたくし何か怒らせるような事をしたっけ!?

 どどど、どうしよどうしよ!?

 こ、こういう時は……土下座!


 私はダッシュで部屋を飛び出しました。

 そして、全力で地面を蹴ります。


 これが奥義――フライング土下座です。


「あぶぇぇぁっ――」


 見事に失敗。

 地面に激突。

 ふっ、どうやら己の力量を見誤ってしまったようだぜ。


「……何やってるんだ?」


 拙者が聞きたいでござるよ。


「……だいじょうぶ?」


 おお、みさきちゃん、ちょっと発声練習の効果出てる。

 すごい、こんな直ぐに効果が出るなら私もやってみようかな。


 それはそうと。


「……あのぉ、つかぬことをお伺い致しますが、わたくし、どんな状況でせう?」

「血まみれだな」

「……いたそう」


 ああ、お父様、お母様。

 わたし、恋人すら出来ないまま、傷物になってしまいました……ガク。



 このあと滅茶苦茶治療された。

 傷は残りませんでした。

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