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SS:みさきとしりとり

「語彙力チェックだ!」

「……ん?」


 ある休日の昼、俺は勉強中のみさきに向かって声をかけた。


 語彙力チェック。


 そう、俺は少し不安に思っていた。

 口数の少ないみさきだが、実は語彙が少ないんじゃないかと。だから口数が少ないんじゃないかと。


 漢字の勉強をしているついでにペラペラと辞書もめくっているようなので、単語に関する知識はあると思う。だが……だけどなぁ、不安なんだよなぁ。


「というわけで、しりとりするぞ! みさき!」

「……しりとり?」


 ほらね! しりとり知らないよこの子!


「例えば、俺が林檎って言うだろ? そしたらみさきは、ゴから始まる言葉を言うんだ。ゴリラとか、ゴマとか。ただし、最後にンが付くか、言えなくなったら負けだ。ごはん、とかはアウト。いいか?」

「……ん」


 お、流石みさき賢い。いっぱつで理解したらしい。

 しかもちょっとワクワクしてるらしい!


「よし、なら早速……しりとり」

「りんご」


 おぉぉぉぉ理解してるぅぅぅぅ。


「ごりら」

 

 やべぇ、こんなにワクワクするしりとり初めてだ。


「らーんどせる」


 考えながら言ってるぅぅぅぅ!

 スゲェ! みさきスゲェ!


「る……ルール」

「るーるぶっく?」

「くま」

「まる」

「ルネサンス」

「すーりる」


 スリルとか知ってるのか!?

 ルールブックも知ってたし……だが、しりとりは知らなかったんだよな?

 ……く、みさきの語彙力が謎だ。


「る、ルビー。イだぞ、イ」

「いーすーわーる」


 ……あれ?


「る、る…………」

「…………ふふ」


 こいつ、まさか。


「ルーマニア」

「あーな」

「やめろぉぉぉ――っ!!!」

「あなうんさー、だめ?」

「……いや、ダメじゃねぇ。さ、だな。さ、さ……」


 あらためて、俺は思った。

 みさきの語彙力が謎過ぎる。

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