救済(Side リーネ)
カイの自室のベッドの上で、突き放されたリーネは居住まいを正した。自分の知っていることは全てカイに告げた。足を投げ出したまま考え込んでいるカイを前にして焦燥感が拭えない。
魔力を持つものが王族として迎え入れられ、第一王子として華々しく儀式を司り、ゆくゆくは国王として国の顔となる。煌びやかな生活と目される王宮とは裏腹に、身を粉にした献身を生涯求められる。とはいえ、自分がいることで目の前の本来の第一王子は平民に身を落とし、親元からも引き離されている。リーネが魔力を持ったことも、城下でリーネがカイを見出したことも一体何の因果か。
それに、リーネの本当の親や親族を名乗る人たちがこれまで全くいなかったことからも、神殿の教えの強さや何かしらの取引の存在は想像に難くない。
沈黙に耐えかねたリーネは自分の寝室へ戻ろうとベッドを降りようとした。
「どこに!」
すぐに気づいたカイに腕を掴まれ、びくりと体が震える。
「話は全て終わった。君の正体を黙っていたことは謝罪する。今後については如何様にも君の希望を聞こう。」
いつもより早口に、だが澱みなく告げてリーネは去ろうとする。掴まれた腕が熱い。
「俺言ったよな?リーネを救いたいって」
ギラリと光る瞳は、ただそれだけでリーネの動きを封じる。リーネは未だかつてこんな激しい目を向けられたことはない。
「そんな、こと...」
絞り出したリーネの声は戸惑いに揺れている。救う?一体何から。リーネの生涯など生まれた時から定められているのに。
「俺は側を離れないからな」
見開いた目には涙が溢れてくる。いつか離れていくんじゃないのか。生来の立場を追いやり、リーネの一存で引き戻した。カイもまた人生の行先を握られているのに。
王子と持て囃されてばかりで、心労を察し、労い、心に触れてくるものなどいなかった。それなのに、リーネは今この瞬間向けられている激情に縋りたくてたまらない。
「俺に堕ちろ、リーネ。国ごと壊してやりたいが、それだと今までのリーネを否定することになる。なら、どこまでも」
死んでも離さない、と続けたカイの胸にリーネは自分から飛び込んだ。たとえ先行きが暗くても、リーネはこの男を手放したくはなかった。
リーネ「そういえばマリク王のことどうしよう」
カイ「いいんじゃね?大した情報くれたわけでもないし」




