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十の幸い ― 七日ごとの奇跡と、人の心をあらわにする失われた聖なる書  作者: CBR


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8/14

第6章 空しく労することなく 

8/13 大幅改稿

第五の幸いまで、あと二日。

世界各地の候補地には、すでに測量杭が並び始めていた。

北アフリカの乾燥平原。

オーストラリア内陸。

中央アジアの半砂漠。

北米南西部の広い裸地。

普通なら、大規模な居住地を造る候補から最初に外される場所だった。

水が少ない。

土が痩せている。

農業に向かない。

既存の都市から遠い。

だが、今回はそれが致命的な欠点ではなかった。

必要なのは広さだった。

人を追い出さずに、大勢を迎えられる空間。

森林の密集地も避けられた。

木を切り、根を抜き、搬出してから道路と住宅を造る時間を使う理由がなかった。

神の民は、豊かな土地を探していたのではない。

まだ豊かではない土地を探していた。



◇ ◇ ◇



ノースカロライナの教育施設では、食料の配給量が少しずつ減っていた。

世界的な生産量が突然消えたわけではない。

問題は、必要な場所へ届かないことだった。

燃料価格の上昇。

流通企業の倒産。

輸出規制。

倉庫労働者の不足。

利益が出ない地域への配送停止。

第三の幸いで病院の多くは規模を縮小した。

一方で失業した人々は増え、神の民の施設には毎日何千人も来るようになった。

最初は食事を求めた。

次には数日分を求めた。

やがて、住む場所と働く場所を求めた。

夕食の皿を見て、マイクが言った。

「今日、パン少なくない?」

「みんなで分けてるからな」

「明日も?」

「しばらくは」

ジーンは自分のパンを半分に割り、父の皿へ置いた。

「僕のあげる」

「父さんは大丈夫だ」

「でも、昼も食べてなかったよ」

ソフィアがエリックを見た。

「どういうこと?」

「忙しくて」

以前なら空腹でなくても食べていたのに、今は食事そのものを忘れていた。

「食料不足とは関係ないのね」

「結果として一人分、節約できた」

「そういう話ではありません」

ジーンはパンをさらに父の方へ押した。

「食べて」

エリックは受け取った。

「ありがとう」

「パパが倒れたら、僕たち困るから」

「愛より実用的な理由だった」

「愛もあるよ」

ジーンは少し考えた。

「半分くらい」

マイクが吹き出した。

その普通の笑い声が、エリックにはありがたかった。



◇ ◇ ◇



九十六人は、世界各地の神の民が持つものを調べ直した。

農地。

倉庫。

教育施設。

車両。

発電設備。

修理工場。

厨房。

縫製機械。

製粉設備。

だが、一覧の後半は物ではなかった。

農業を知る人。

建築を知る人。

会計を知る人。

大量調理ができる人。

輸送計画を立てられる人。

機械を直せる人。

水道や電気を扱える人。

第三の幸いによって、かつて病気や障害のため働けなかった人々も、年齢に応じた健康を取り戻していた。

不足していたのは能力そのものではない。

能力を、必要な場所へ結び付ける仕組みだった。

エリックはオンライン集会で言った。

「第五の幸いで、家が空から落ちてくるわけではありません。食料が倉庫に突然現れるわけでもありません」

清い言語で、世界中へ同時に届いた。

「私たちが考え、働く必要があります。天使が告げたのは、その仕事が無駄にならないということです」

一人の農業担当者が、創世記のヨセフについて触れた。

豊作そのものを造ったのはヨセフではなかった。

飢饉を消したのでもない。

集めた。

保存した。

管理した。

必要な時に出した。

その監督によって、飢饉の被害が抑えられた。

エリックは別の聖句を開いた。

イザヤ六十五章二十三節。

「空しく労することなく」

短い言葉だった。

だが、今度の幸いを説明するには、それで十分に思えた。



◇ ◇ ◇



第五の幸いが始まった瞬間、何も光らなかった。

畑の植物が突然伸びたわけでもない。

工場の機械が勝手に動き始めたわけでもない。

建設資材が増えたわけでもない。

開始から十五分。

誰かがオンライン上で書いた。

何も起きていない。

エリックも、そう見えた。

だが最初の変化は、作業そのものの中に現れた。

ノースカロライナの倉庫では、元医療資材の品質管理担当者が、荷下ろしを待つ車列を眺めていた。

何台もの車が待っている。

倉庫には空きがある。

人手もいる。

検査担当も手を止めていない。

それなのに詰まっていた。

彼はしばらく流れを見た後、エリックを呼んだ。

「検査が遅いように見えますか」

エリックは荷下ろし口から倉庫の奥へ視線を移した。

「そう見えます。でも、人は動いてますね」

「私も最初は検査だと思いました。でも違います」

二人は倉庫に隣接する運用室へ入った。

壁には大型ディスプレイがあり、倉庫全体の配置図と、各荷下ろし口の状況が表示されていた。

受け入れ口。

検査区画。

一時保管場所。

長期保管棚。

厨房へ送る食品の集積場所。

搬出用の車両口。

担当者は画面の上に、現在の物資の流れを矢印で重ねた。

入ってきた荷物は検査後にいったん倉庫の奥へ運ばれ、厨房でその日のうちに使う食品まで、そこから再び手前へ戻されていた。

別の搬出車両は、その流れを横切っていた。

エリックは画面を見た。

「一つ一つの作業は間違ってない。でも、全体では同じ荷物を何度も動かしてる」

「そうです。置き場所と搬出の順番が逆なんです」

エリックは少し考えた。

「現場の人に見てもらいましょう。倉庫と厨房、それから実際にここへ入ってくる運転手にも」

三人が呼ばれた。

倉庫担当。

厨房担当。

運転手。

五人は大型ディスプレイの前に並んだ。

品質管理担当者は、現在の配置図を示した。

「検査そのものを速くする必要はありません。検査後の流れを変えます。今日使う食品はここ。長期保管するものは奥。搬出はこの通路にまとめます」

画面上の矢印が短くなった。

倉庫担当がうなずいた。

「これなら、一時保管の山は減ります」

厨房担当が画面の一角を指した。

「ただ、冷蔵品はここだと遠いです。厨房へ直送できませんか」

担当者はすぐ配置を動かした。

「ここですね」

その時、運転手が首を振った。

「それだと、朝の荷下ろしがここでぶつかります」

大型ディスプレイの東側搬入口を指した。

「六時から八時は、入ってくる車がこのレーンまで並びます。ここを搬出に使うと動けません」

エリックが別の通路を指した。

「じゃあ、朝だけ搬出を西側へ回すのは?」

倉庫担当が答えた。

「西側の棚を一列ずらせば通せます」

品質管理担当者が配置図を変更した。

新しい矢印が表示された。

五人で数秒、画面を見た。

「これならいけます」

運転手が言った。

挿絵(By みてみん)

最初の案は捨てられた。

誰か一人が正解を持っていたわけではない。

見て、聞いて、直した。

二時間後、待機車両の列が消えた。


翌日には、同じ人数で以前の四倍近い物資を扱っていた。

廃棄は十分の一以下。

検査を省いていない。

誰かが走り回って無理をしたわけでもない。

ただ、仕事が噛み合った。

同じことが、別の場所でも起きた。



◇ ◇ ◇



北米南西部の新拠点候補では、元建設技師が工程表を破り捨てた。

「どうしたんですか」

現場責任者が尋ねた。

「順番が悪い」

道路を先に完成させ、その後で住宅を並べ、最後に給排水を入れる計画だった。

普通の開発なら珍しくない。

だが、一週間後には環境そのものが変わる可能性がある。

今必要なのは完成した道路ではなく、大量の人を受け入れられる骨格だった。

技師は配管担当と電気担当を最初から呼んだ。

プレハブ住宅の製造側も画面につないだ。

大型車両の運転手にも意見を聞いた。

「住宅の下を後から掘り返さなくて済むよう、最初に共同溝を通す」

「でも全部の道路を先に造る時間はありません」

「全部造らない。幹線だけ。枝道は簡易舗装でいい」

「水源は?」

その質問で皆が一度黙った。

図面には蛇口まで配管がある。

しかし、そこへ送る十分な水源は、まだない。

技師が言った。

「第六まで一週間です。水を造る設備に資材を使わない。配る設備を先に造る」

大規模な淡水化プラントは計画から外された。

必要なのは、

簡易な配水管。

貯水槽。

衛生設備。

下水管。

簡易処理設備。

そして家だった。

最初の一日で、住宅一棟あたりの必要部材は三割減った。

強度は下がらなかった。

規格を統一し、不要な装飾と重複部材を取り除いただけだった。

二日目には、同じ製造ラインから出る住宅部材が以前の二倍を超えた。

三日目。

現場責任者は数字を見て首を振った。

「何か測り間違えてませんか」

「昨日もそう言いました」

「昨日は?」

「測り直して、同じでした」

働く時間は増えていない。

事故も増えていない。

むしろ手戻りが減った。

熟練者が初心者へ教えると、覚えるべき点が整理され、数日かかっていた訓練が一日で済むこともあった。

知らない技能を得たわけではない。

人間が持っていた技能が、必要な場所で異常なほどよく生かされていた。



◇ ◇ ◇



農業でも同じだった。

第五の幸いは、作物を数時間で成熟させなかった。

種は種として芽を出し、植物は植物として成長した。

だが、神の民が監督する農場では、何をどこへ植えるか、いつ収穫するか、どの設備を修理するかという判断が驚くほどよく噛み合った。

ある農場では、灌漑設備を増設する予定を取りやめた。

現場の女性が、畑の一部だけ水分保持が悪いことに気づいたからだった。

土壌を調べる。

耕し方を変える。

作付けを入れ替える。

結果として、水の使用量は減り、収量予測は上がった。

別の地域では、機械を新しく買う代わりに、倉庫で十年以上止まっていた農業機械を修理した。

部品が足りなかった。

修理担当者は、廃棄予定だった別機種の部品を測った。

「これ、加工すれば使えます」

使えた。

奇跡は、部品を空中から出さなかった。

使えるものを見つけ、その使い方を思いつき、それを正しく働かせた。



◇ ◇ ◇



神の民と一緒に働く人々にも、その成果は及んだ。

建築会社。

地元の運転手。

自治体の技師。

土地を貸した農家。

信仰を変えるつもりのない作業員。

神の民だけが超人的な速度で動くのではなかった。

目的に沿った仕事に加わり、互いの技術を尊重して働く時、仕事全体が実を結んだ。

だからエリックたちは、参加条件としてバプテスマを要求しなかった。

働けない人から食事を取り上げることもしなかった。

幼い子供。

高齢者。

家族を介護している人。

役割を果たせない時期があることと、価値がないことは同じではない。

一方で、働ける人には役割が提案された。

畑。

調理。

修理。

教育。

運転。

物資管理。

生活支援。

「神の民に仕える」という表現が報道で使われ始めた時、エリックは訂正した。

「人間に仕えるという意味ではありません。人の必要に仕えるんです」

彼は途中から英語で話した。

言葉は何度も詰まった。

「し、食事を作る。屋根を直す。子供を見る。運ぶ。話を聞く。……できることを、互いに行う、という意味です」

清い言語に戻った。

「豊かさを餌にして信仰を求めるなら、この幸いの目的に反します」



◇ ◇ ◇



第五の幸いから四日目。

一部の政府は、神の民が運営していた農場と倉庫を国家管理下へ置いた。

神の民は抵抗しなかった。

鍵を渡し、管理から離れた。

設備は同じだった。

土地も同じ。

作業記録も残っていた。

政府は同じ手順を再現した。

それでも、異常な効率だけが消えた。

収穫量は地域平均へ戻った。

故障は普通に起きた。

物流は再び詰まった。

神の民が魔法の手順を隠したわけではない。

後に、地方政府の一つが別の方式を試した。

所有権は国家のまま。

しかし栽培方法と分配先の判断を、神の民と現場の共同チームへ戻した。

政治的支持者を優先しない。

敵対地域だからと食料を止めない。

必要の大きいところへ送る。

数日で、効率は再び上がった。

必要だったのは登記簿上の所有権ではなかった。

神のお考えに沿って働く自由だった。

エリックはその報告を読んで、第五の幸いの条件を改めて理解した。

これは神の民を金持ちにする仕組みではない。

人を支える仕事を、実らせるためのものだった。



◇ ◇ ◇



六日目。

世界の新拠点候補では、奇妙な町が形になり始めていた。

道路がある。

簡易住宅がある。

電気が通っている。

通信もある。

診療所になる建物もある。

倉庫もある。

蛇口もある。

ただし、その蛇口から十分な水はまだ出なかった。

建物の外には、乾いた土地が地平線まで続いていた。

ある拠点では、作業員が完成した給水管の先端を見て笑った。

「ずいぶん立派な空の水道ですね」

現場責任者が答えた。

「明日までは」

「本当に水が出ますか」

「出なかったら?」

「この町、かなり困ります」

「その時は、かなり真剣に考えましょう」

二人とも乾いた平原を見た。

第六の幸いまで、あと一日。

今度は、人の手ではできない部分が残っていた。

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