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青鳥島の合宿 ~陰キャでぼっちな俺が、引き籠もり女子と孤島に向かった~  作者: シッポキャット


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31/31

30 考察

 根本遥(ねもとはるか)のメモ帳を(めく)ると、初めに参加者と職員の似顔絵、そして名前が(しる)されている。名前の横には年齢と(おぼ)しき小さな数字。容姿(ようし)の特徴や気になった仕草(しぐさ)を、ページの余白(よはく)を埋めるように書き加えている。職員たちの名前の横には情報が無いのか、数字は記されていない。


 内容をじっくりと集中して頭に入れたいところだが――こんな危険なメモを読んでいる事がバレたら取り返しのつかない事になる。記憶の片隅(かたすみ)におく程度で流し読みしながら、周囲に目を(くば)りつつ、俺は次のページを(めく)った。


 船上にて――と書かれたページに、渡し船の出港時刻と【美空丸(みそらまる)】という船の名前。上から見た船の略図(りゃくず)と、参加者たちの当時の配置が記されている。男子が●、女子が○。職員は秋月令子(あきづきれいこ)が△、田中忠(たなかただし)が▲で間違いないだろう。


 ●そ(曽我部太(そがべふとし)だろう)の下に(やじるし)(のち)に定位置が左舷後方(さげんこうほう)に移動した事が記録されている。


 ▲た(田中忠)は全ての参加者たちが一望(いちぼう)できるように、ずっと船首(せんしゅ)にいたようだ。△あ(秋月令子)はあちこちに移動していたらしく、根本遥は追跡の記録を途中でやめている。(◆参考資料◆に略図あり)


 次のページには、見開きで横軸(よこじく)に参加者と職員の記号、縦軸(たてじく)時系列(じけいれつ)で参加者たちの行動が簡潔(かんけつ)な表で記されていた。

 午後十二時半の出港から十分後に、俺が寝落(ねお)ちしたことが欄外(らんがい)に記録されている。根本遥の抜け目のない性格を現しているようだ。


 ウッドデッキで話していた通り、出港から()もなく曽我部太は甲板(デッキ)から船尾(せんび)の屋内に行き、()(もど)りを繰り返していた。三往復した(あと)、午後一時十五分にはベンチで(いびき)をかいて眠っている。確かに(あや)しい動きだが、本当に下痢(げり)だったのなら、問題の無い行動とも言える。


 その後、入れ替わるように布引真子(ぬのびきまこ)が船尾に行き、五分後に(もと)の場所に戻った。

 トイレの(のこ)()はすぐには消えない。直前にトイレに行った曽我部太が御当地弁当(ごとうちべんとう)をそこで食べたのか、それとも本当に下痢だったのか。布引真子の証言が、御当地弁当喪失(そうしつ)の謎を解くカギになるだろう。


 布引真子が戻ると、続けて馳久美子(はせくみこ)瀬野賢児(せのけんじ)の順でトイレに行った形跡がある。船尾に行っていないのは、ずっと眠っていた俺と金田龍人(かなだりゅうと)だけ。それ以外の人物は、職員を(ふく)めてみんな容疑者になり()る。


 それとも……この表に載っていない根本遥が船尾に移動して、弁当をまるごと海の中へ捨てた? もし根本遥が()()()なら――その考え(ミスリード)も排除できない。


 俺は将棋の(こま)を移動させながら、さり()なく周囲に目を走らせた。


 周りの人間を(こま)らせて楽しむ程度なら、船上で田中忠が言った通り、愉快犯(ゆかいはん)仕業(しわざ)なのかも知れない。この(あと)に起こった、食堂でカレーの鍋に画鋲(がびょう)が混入された件に関しても。


 だが、同じ流れで金田龍人の絞殺未遂(こうさつみすい)を、愉快犯の犯行と(むす)びつけるには……どう考えても無理がある。そこには、彼に対して突発的な、あるいは元々(もともと)持っていた殺意(さつい)があったはず。


 参加者たちは皆、平然とした態度を取っているが……この部屋の中に、確実に金田龍人の首を()めて殺そうとした実行犯がいる。


 根本遥は俺と一緒に砂浜へ行った後、ウッドデッキで鉢合(はちあ)わせた津田美子(つだよしこ)とオセロをしていた。この中の誰かを(あやつ)らない限りは、犯行は不可能だろう。

 彼女は早くから参加者たちの地雷(じらい)を踏まないように、俺に警告していた。用意周到にボイスレコーダーを持ち込んでいた事も(ふく)め、何か悪い事が起こることを……あらかじめ知っていたような(ふし)もある。


 根本遥は敵か、それとも味方か。俺は混乱する思考を一先(ひとま)()き消した。とにかく、彼女の洞察力(どうさつりょく)と抜け目のなさは(あなど)れない。

 (うたが)いの目を持ちながらも、新たな情報を手に入れたいという期待を胸に秘め、俺は次のページを(めく)った。

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