A-018.0714.0828 三大都市伝説
「父さんの文字を解読してほしいの」
覚が目を閉じて考え込んだ。こういうときは静かに待つ。音をできるだけ立てないよう紅茶を口へ運んだ。
「アスカ姉ってホント怖いもの知らずだよな」
「そうなの?考えたこともなかったわ」
「地下東京がゴシキヒワグループに管理されてるのは、知ってた?」
「どうやら、そうみたいね」
父さんからは何度も聞かされていたが、今まではあまり実感を持っていなかった。しかし、この三か月弱で印象は変わってきている。
「地下の三大都市伝説については?」
「オカルト好きな友達から聞いたことがある気がするわ」
「話が早いね。一つ目が『都市神さま』二つ目が『時渡り』、そんで最後が」
怪談家のようにもったいぶって、覚は三つ目を口にした。
「『神隠し』だよ」
「ふーん」
「アスカ姉はあんまり興味なさそうだね。とにかく、神隠しの噂があるんだ。ネットを調べればいろいろ出てくるよ。でも本やテレビで取り扱われたことはない。なぜか?」
「ただのネットの噂話じゃ信憑性が足りないから?」
「真っ当な意見だね。でも、ぼくは違う考えだよ」
「なに?」
「地下の住人は本当に失踪するんじゃないかな」
「……」
「危険人物と認識されると消される。それが地下という大きな単位で行われているから、犯罪率ゼロパーセントなんてありえない数字も成立する。都合の悪い書籍は出版されない。ゴシキヒワグループという地下東京を牛耳るような企業群なればこそ、痕跡も残さずに……ってこと」
まさに都市伝説。陰謀論以外の何物でもなかったけれど、合点がいった。
「覚。あのね……」
覚にこの一か月の出来事を話す。毒を盛られていたことを。何度も盛られたということは人違いでも事故でもない。ヒカリが気づいて燃やしてくれたから良いものの、間違いなくわたしは危険人物扱いだった。
「狙われてた!?なんでそんな大事なこと先に言わないの!?」
「ご、ごめんなさい」
覚にしては珍しい剣幕だった。
「なんだよ都市伝説の立証目前じゃん。そんな危険なことと知って、よくぼくにお願いしようなんて思えたね」
「あ」
「ん?」
「ごめんなさい。失念していたわ」
「……はあ。人間っぽいところがあるのが知れて嬉しいよ」
やれやれといった顔でティーカップを口元へ運ぶ覚。
接触してしまった以上、覚もこれから危険な目に合うかも。対策を考えなければと今後について思索を巡らせていたのだが。
「でも、聞かなかったことにはしないよ。というか、できない」
「?」
「確かにアスカ姉は抜けてたけど、人選は間違ってないから」
「解読は、ぼくがやる」
お疲れ様です。
伏線をまた撒いています。回収の予定はありますが、はてどのくらい先になるやら。
暗号解読ってロマンですよね。
更新はまた一週間後、4月3日の予定です。
よろしくお願いします。
次回は、意気込みを聞きます。




