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第3話 終焉

気が付くと、知らない天井があった。

白い天井。

白い壁。

薬品の臭い。

(ここは……?)

体を起こそうとする。

頭が痛い。

体も痛い。

全身が鉛みたいに重かった。

「起きたか。」

声が聞こえた。

部屋の隅に、一人の男が立っていた。


紫色の髪。


鋭い目つき。


黒いシルクハットに黒いコート


知らない顔だった。

「誰だ。」

「ザレフ。ザレフ・エグリットだ。」

「ここは?」

「避難施設…とでも言っておこうか。」

避難施設。

意味が分からなかった。

「何で俺がそんな場所にいる。」

ザレフは少し黙った。


「最後に何を覚えている?」

記憶をたどる。


「あとは任せましたよ。ポンコツ。」

そして、白い光。熱。轟音。

そこから先は思い出せない。

「爆発。そこまでしか覚えてない。」

ザレフが静かに頷く。

「そうか。」

嫌な予感がした。

「A町は?」

沈黙。

「家は?」

沈黙。

「おい。A町はどうなった?」

ザレフは目を閉じた。

そして、


「消滅した。」

時間が止まった気がした。

「……は?」

「町ごとだ。生存者はお前以外確認されてない。」

「何言ってんだ。そんなわけ…町だぞ。家も、学校も、コンビニも、人だって。」

数日前まで当たり前に存在していたものばかりだった。

「そんなの、なくなるわけないだろ。」

ザレフは何も言わない。

何も。

それが余計に現実味を持っていた。

「家族は。」

ザレフは視線を落とす。

「確認できていない。」

その言葉の意味は分かった

知っていた。

もうわかっていた。どうせ俺は捨てられた人間だ。


昔も。


そして今も。

「……ステラは?」

ザレフが少し驚く

「知っているのか?」

「知ってる。俺の家に住み着いてた。

勝手にベッド奪うし。

勝手に金持ってくし。

たくあん捨てるし。」

話していて急に胸が苦しくなった。

「そうか…接触していたのか。」

「生きてるのか?」

ザレフはゆっくり首を横に振った。

信じられなかった。

だって。

昨日までそこにいたんだから。

今日も帰ってきて、「ポンコツ」とか言いそうだから。

実感なんて湧かなかった。

「誰がやった?」

沈黙。

「誰が。」

もう一度聞く。

ザレフの拳がわずかに握られる。

何かを思い出すように。

苦しそうに。

「政府だ。正確には政府の防衛庁だ。」

グラフは顔を上げた。

「政府?」

「ああ。だから俺はやめた。」

初めてザレフの声に感情が混じった。

「守るべき人間を見捨てる組織に、もういる価値はないからな。じゃあ、俺は用事あるから。今日は休んどけ。」

数時間が立った。

夜。

机の上には小さなUSBメモリ。

ステラが最後に渡したものだった。

まだ中身は見ていない。

見る気にならない。


ただ。


最後の言葉だけが頭から離れなかった。


「あとは任せましたよ。ポンコツ。」


静かな病室。

窓の外は真っ暗だった。


グラヴは拳を握る。


家族もいない。


A町もない。


ステラもいない。


何も残っていない。


誰にも聞こえないくらい小さな声で。

呟いた。


「この世界に……」


しばらく沈黙する。

そして。


「終焉を。」


この物語はフィクションです。実際の人物、団体には一切関係はありません

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