3年次春期定期訓練①
3年次の春期定期訓練は、硫黄島研修である。この硫黄島と言う所は第二次世界大戦で戦った日本兵の遺骨が多数残されており、防衛医科大学校学生は民間のNGOと共に遺骨収集活動を行う予定となっていた。中隊長山川をリーダーとして、小隊長の一兵や良子達は丁寧に日本兵のものと見られる遺骨をスコップや手作業で収集していった。
それを10日間行った後、硫黄島に駐留する現役自衛官と交流し、米国海兵隊が運用する硫黄島飛行場の見学し計30日間硫黄島に滞在し後、防衛医科大学校に帰投した。
「もう、怖いの何の。骨がわんさか出るは出るは。日本にもまだ80年前の名残を残す所が有るんだな、ってビックリしたよ。」
「つよし?骨じゃなくて御遺骨よ。」
「でも誰のものか分かんねーじゃん。気味悪くね?」
「そう言う問題じゃないわ。激戦を戦って散った我々の先祖よ?」
「不発弾だって見つかるしさ。この島ヤバイって。」
「山川中隊長?この島は日本を守る為に大切な島なんだよ?」
「正田二佐!?」
「私はこの硫黄島基地の日本側の責任者を務めている。実はあまり知られていないが、硫黄島はね、日米共同運用地なんだ。」
「日米共同運用地ですか?」
「そうだ。ほら見えるだろ?米国海兵隊のF-35戦闘機が。」
「おお、スゲー。」
「あの滑走路を整備しているのは、我々陸上自衛隊硫黄島分遣隊が担当しているんだ。」
「あのF-35戦闘機はこの島で何をしてるんですか?」
「飛行訓練だよ。いつ戦場に行っても良い様に。」
「自衛隊は遺骨収集はしないんですか?」
「遺骨収集事業は厚生労働省の管轄なんだ。防衛省自衛隊としては、特に何もしていないよ。」
「コンビニとかは…無いですよね?」
「勿論、無いよ。物資は海上自衛隊の護衛艦が本土から運んでくれるから、物資は足りてるよ。」
「夜とか怖くないですか?」
「怖くはないよ。まぁ、最初の1ヶ月は眠れなかったけどね。」
「毎年防衛医科大学校の学生さん達が来る度に同じ事を聞いてくるから、硫黄島って所は本土の人には知られていないんだなと感じるね。」
「女子学生が泣いたり叫んだりする事もあったね。まぁ、無理もないよ。遺骨収集をした夜に陸上自衛隊のオッサンと男子学生と寝なくちゃいけないんだから。その点今年の学生は優秀だね。齢二十歳の女子学生としては立派だ。」
「正田二佐は防衛大学校卒ですか?」
「いや、私は自衛隊生徒出身なんだ。」
「では15歳からこの道に?」
「まぁ、大した事じゃないよ。」
「ここの飯旨いっすね!」
「1つ星レストランを辞めて自衛隊に入った変わりもんが、調理しているんだ。」
「草野二曹です。」
「めちゃくちゃ旨かったです。」
「ありがとうございます。」
「ここって、風呂はないんですよね?」
「シャワーならあるぞ。」
と言われ、山川はほっとした。




