2年次卒業式①
2年生として過ごす生活も残り1ヶ月をきっていた。第55期生の卒業式はコロナ騒ぎも落ち着き2024年3月、在校生も参加してのフルスペックの卒業式になる事が決定していた。内閣総理大臣や防衛大臣と言った政界の大物も、将来の幹部医官の門出を心から祝福してくれるだろう。首相スピーチは以下の通りである。
「本日は卒業誠におめでとう。規律正しい6年間の学生生活で、6年前の自分とは全く異なる事を噛みしめている事でしょう。少子高齢化の波の中で、自衛隊を取り巻く環境も依然厳しいものと成っています。しかし、日本の未来を守る使命を防衛医科大学校卒業生は保持しています。自衛隊の医師や看護師として、自衛隊員の命を守るだけではなく、紛争や災害で困っている人や日本国民を守れる強く優しい医療従事者であって下さい。選ばれし80人の医官として、これからもそのたゆまぬ努力を継続し続けて下さい。短いですが、これからの活躍を祈り、首相式辞とさせて頂きます。2024年3月8日内閣総理大臣小川孝太郎。」
続けて防衛大臣春矢信彦からも式辞を頂いた。
「防衛医科大学校って何?私は恥ずかしながら防衛大臣の椅子に座るまでは、全くその存在を知りませんでした。どうせ防衛大学校の医科大バージョンなんかじゃないかと、タカをくくっていましたが、それは誤った認識でした。防衛医科大学校は医師や看護師に成る為の勉強をしながら、自衛隊の幹部クラスの訓練を受けると言う、とんでもなく辛い学校だと言う事を知りました。しかも、国家資格を取得出来なければ、階級をもらえない。これは人生をかけた大勝負です。卒業生の皆さんは、この試練に見事打ち克ちました。でも、実はここはスタートラインに過ぎません。その持って生まれた強運と頭脳で、是非自衛隊での活躍を祈ります。本日は誠におめでとうございました。2024年3月8日防衛大臣春矢信彦。」
続けて防衛医科大学校学長式辞が続き、かなり眠くなった所で、メインイベントの卒業証書授与。看護学科4年生を含み80名全員の氏名が防衛医科大学校体育館に響き渡る。あいうえお順に呼ばれて、最後に呼ばれた人がクラスヘッド(首席)であり、卒業生を代表して答辞を述べる。
この学年の学生と一兵達は密に活動をした事が無かったが、在校生として彼等の心の中は卒業本当にお疲れ様でしたと言う想いであった。本年度のクラスヘッドは女子学生の様だ。中宮あおいはカンペも見ず、頭の中に入っている答辞を見事に噛む事無く述べる辺りは流石である。中宮は恩賜の軍刀を受け取り壇上から下がって行った。
そして卒業式の全工程を終えると、卒業生が集まり恒例の帽子投げが行われて、気分は最高潮になった。在校生は初めて見るこの卒業式を決して忘れないだろう。セツ菜と良子は今年も写真係であった。こうして卒業式は何の支障もなく終わったが、帽子投げで散乱した帽子は誰が拾って持ち主に渡すのであろうかと一兵は不思議に思った。ま、帽子には名前が刺繍されており、冷静さを取り戻した卒業生達が自分で回収するのだが…。




