ジーテ、魔法学園に入る。
12歳になった。
どうやら、12歳になると魔法学園という機関に入る義務があるらしく、今日で両親から離れ、王都にある魔法学園の寮で住む事になる。
「ジーテ、明日から魔法学園よ」
「ジーテ、お前なら安心して送り出せる!その力で周りを驚かせてやれ!…ほどほどにな?」
「母様、父様。僕はこんなにも大きくなりました。今までありがとうございました。これから、魔法学園に行き、卒業し、職に就いたら、2人を楽にさせます」
「ジーテ…そんな事より、私はあなたが楽しく生きてくれたらそれだけで幸せよ」
「ああ、その通り。ジーテは俺達の最高の息子だ!」
「…ジーテ兄様、リュカは寂しいです」
「ニィニィ、行っちゃうの?」
妹のリュカ。弟のアルテ。2人は俺の袖を掴み、悲しそうに目に涙を浮かべる。
「リュカ、アルテ。僕は魔法学園に行っちゃうけど、母様と父様を頼みましたよ?年に1、2回は帰って来るからその時までお留守番してください」
「ジーテ兄様!リュカ、頑張るね?」
「えええん。ニィニィと会えなくなるの寂しいよ」
「こらこらアルテ。お兄ちゃんを困らせたらいけないでしょ?さ、今日は寝なさい」
「リュカ、偉いぞ〜父さんも寂しいけど、皆でジーテの帰りを待ってような!」
「では、母様、父様、リュカ、アルテ。僕は寝ます。おやすみなさい」
「明日でジーテが学園か…」
「…そうね。あの子、何でも出来てしまうから学園に来る貴族とかに目を付けられないといいけど」
「ティファニー、心配するな。俺達の息子ならきっと上手くやってくさ」
「ええ…」
朝になる。出かける支度を終えていた為、馬車が来たらすぐに発てる。
…馬車が来たようだ。
「では、行ってきます」
「体に気をつけるのよ。あなたの帰りを待っているわ」
「行ってかましてこい!土産話、楽しみにしてるぞ!あぁ、嫁さんとか連れて来てもいいからな?」
「父様のバカ!ジーテ兄様と結婚するのはリュカよ!」
「違うよ。ニィニィは僕と結婚するんだよぅ」
「あなた達。ジーテが困っているでしょうその辺にしておきなさい」
「でもティファニー。俺は寂しいぞ」
「母様の鬼!」「母様が怒った」
母様は3人の身動きを止め、俺に早く馬車に乗る様に促す。収拾がつかなくなるからだ。
馬車に乗り込む。家族の皆がこちらを見ている。
「行ってきます」
そして、馬車が動き出す。家族の皆は、俺が見えなくなるまで手を振っていた。
「…母様?」「…泣いているの?」
「…バカ。お前が1番辛そうじゃないか」
「だって…ジーテ。どうか元気で」
ーーー
馬車に揺られて1週間。ようやく王都に辿り着いた。
学園への入学は3日後だから、ひとまず父様に紹介してもらった宿屋を探す事にする。
俺が産まれる前、母様と父様は冒険者をやっていた。その時利用していたのが、紹介してくれた宿屋だったそうだ。
それにしても、王都は俺の暮らしていた村とは違い賑わっている。人だらけで、こんなにも増えていたのかと感心する。
建物は立派なものばかりで、本で見たような商店などが建ち並んでいる。
入学資金とは別に、使えるお小遣いも貰っていたので、店に売ってある串に刺さった肉…焼き鳥というらしい。それを一本買ってみる。
鳥を細かく切って、串に突き刺し、網の上で丁寧に焼かれた食べ物。村で食べたことはないが、なかなかに香ばしい匂いが鼻を突き抜ける。
一口、口に入れる。なかなかどうして、俺の味覚に馴染む。
そうやって、何件かの店で物を買い、宿屋を探す。
すると、どうやら路地裏の方で人同士が揉めている会話が聞こえて来る。全身を身体強化の魔法で覆っている為、遠くで話している会話も聞く事ができる。
…あっちか。
「離して!衛兵を呼ぶわよ!?」
「おお怖。呼ぶなら呼んでみれば?ここには誰も来やしねぇよ!」「へっへっ、嬢ちゃん達良い体してんな。今夜は寝かしてやらねぇぜ?」
「きゃっ!触らないで!」
「…いや」
「少しよろしいですか?一体、何をしているのでしょうか?」
女2人に、男4人が逃げられない様に取り囲んでいる。1人の男が女の腕を掴み、懐に引き寄せようとしていて、女は抵抗しようとしているようだ。
つまり、嫌がっているようだ。
「ああ?ガキが俺達に何の用だ?」「帰ってママのおっぱいでも吸ってろ!」
「つまり、貴方達は悪い大人という事でよろしいですね?」
「ごちゃごちゃ言ってんじゃねーぞガキ!痛い目に遭いたくなかったら大人しく…!」
俺は無詠唱で魔法を、男に当たるか当たらないかくらいの所で留める。
「なっ…!こ、こいつ、魔法を撃って宙で止めているだと…!?そんな高度な魔法見た事ねぇ…!」
「しかも無詠唱で…!相当な魔法使い!ば、バケモンだ!!」
ひえーと言いながら逃げていく男達。残された女2人は呆気に取られていたので、安否を確かめる。
「お2人共、怪我はありませんか?」
俺がそう聞くと、赤髪の女の子が腕を強く掴まれていたのか、少し痣になっている。
「ああ、少し痕が残っていますね。今回復します」
「えっちょ…」
俺はヒールの魔法をかける。綺麗に治っていた。
「治ったとは思いますが、後は自然治癒すると思います。それでは、僕はこれで」
「ちょ…待って!」
2人を助けたので立ち去ろうとすると、赤髪の女の子から腕を掴まれる。
「お礼くらい言わせて!…助けてくれてありがとう」
「ありがとうございます」
赤髪の女の子と緑髪の女の子。よく見ると、2人共俺とあまり歳の差が近いみたいだ。
「いえ、不埒な輩を見過ごす事はできなかったもので。それでは」
今度こそ立ち去ろうとするが、腕を離してもらえなかった。どうやらお礼がしたいらしい。
遠慮するが、どうしてもしたいと言われたので、あまり無下に出来ないので受け取る事にする。
店が建ち並ぶ通りには、テーブル席に椅子がある店などもあり、そこに案内される。どうやら甘い食べ物を主流とした店の様だ。
白いクリームの下に、生地を焼いたパンケーキ?というモノらしい。口に入れるとふわふわしていて甘く、クリームの濃厚な香りと甘さが良いバランスを保っていて、これも美味しい。
「…コホン。嬉しそうに食べるのね?」
「美味しいです」
「幸せそう…」
「自己紹介をさせて。私はミサ・アーク・メトラニス。ミサって呼んで欲しいわ」
「…私はユナ・パトラ・バニエッサ。ユナでいいです」
どうやら2人は貴族の様だ。平民以下の身分の者は、基本的にファミリーネームやミドルネームを持たない。名乗るという事は貴族なのだろう。
「僕はジーテ。ただのジーテです。ジーテとお呼び下さい」
「えぇ!?礼儀作法といい、立ち振る舞いといい、貴族かと思ったけど平民だったのね…」
「…意外です」
「そうなんですか?僕は生まれてからずっとこんな感じなのですが」
「…平民の人は口調が荒いイメージでした。認識を改めなければなりませんね」
「ええ、そうね。それにしても、ジーテ。あなたの魔法の才はとんでもないものね!」
「…あ、私もそう思ってました」
「無詠唱なら魔法の理解力があれば、努力すれば出来る様になるけれど、魔法を放って宙に留めるのは流石に私でも出来る気がしないわ」
「…私にも無理です。どうやったのですか?」
「無詠唱と同じ原理で出来ますよ。魔法は本来、身体の中の魔力に反応して、それを具現化しますよね?そうしたら、相手にぶつけるのではなく、その手前で止めるイメージを持つのです。そうすれば出来る様になると思います」
「…今まで色々な講師に魔法を習って来たけれど、私もまだまだのようね」
「…はい。私も精進します」
そうは言っても、2人から溢れ出る魔力はかなり強いと思う。このくらいの歳だと逸材であろう。
「今は発展途上。体も心もまだ成長し切ってないから、お2人共そう悲観する事はないですよ。僕も最近出来る様になったので」
「そうなのね。そういえばジーテは魔法学園の生徒なのかしら?」
「いえ、3日後に試験を受けるつもりです」
「あら!私達と同い年だったのね!」
「…落ち着いているから年上の人だとばかり思ってました」
「両親や村の人からも、僕は落ち着いているから子供に見えないと言われますが、まだまだ子供です」
生きた年数など、神にとって気にした事はないが、仮に年齢を言うとしたら10億年以上は年を取っていると思う。…流石に、俺が神だと伝える事はないが。
そうして、3人で談笑して解散する事になった。
「では、楽しい一時をありがとうございました。2人の様な可愛らしい女の方とお話し出来て、僕はとても幸運でした。失礼します」
「なっ…!」
「…ぽっ」
テーブルの上に3人分の料金を置いて、宿屋に向かう事にする。間もなく日が落ちる頃だ。
「…あれで平民…。全てにおいて完璧…もっとアピールしておけばよかった」
「…うん。あれだけの人は探してもいないと思う」
「ユナもジーテの事好きになっちゃった?」
「…ミサこそ。あれだけの男の子、早めに狙わないと無理」
「学園で見かけたら積極的に行きましょう。どちらが正妻でも恨みっ子なしよ?」
「…望むところ。負けない」
「ミサさん。ユナさん。聞こえてます…」
その後。宿屋に着き、3日お世話になる事になった。
父様と母様の事を話すと、問題児だったヤツらの息子にしては礼儀正しいね。など言われた。
女将さんの料理はどれも美味しくて、3日経つのがあっという間に思えるくらい充実した休暇だった。
そして、試験当日。
学園に入る際に入校証を見せ、中に入る。
その後は、番号に従って学園の中の教室で学科試験を受け、それに受かったものが実技試験に移る。どちらも合格した場合は、明日の入学式で晴れて魔法学園の生徒になれる。
「おい、そこの平民。退け」
「…」
立札が何枚もあり、俺の番号を探す。意外と受講者が多く、探すのが一苦労だ。
「聞いているのか無礼者!!」
「…僕?」
肩を掴まれ、後ろに引っ張られる。が、その場で踏ん張った為に、僕の肩を後ろに引いた者が地面に倒れ込む。
「大丈夫ですか?」
「ええい、貴様、何をする!」
「それはこちらの台詞です。先に見ていたのは僕の筈ですが」
「貴様!伯爵家の息子であるこの俺様に逆らうっていうのか!?」
「…この学園は完全な実力主義で、権力を盾にする事は出来なかったはずだと認知しておりますが?」
「そんなルールが通ると思っているのか!暗黙の了解ってヤツがあるんだよ田舎者め」
「…」
「な、なんだ?俺様とやろうっていうのか?」
揉め事は母様に止められていたけれど、理不尽な絡まれ方をされたんだ。抵抗くらいする。
「両者そこまで。試験当日に争う者があるか。ここは両者、鉾を納めてはくれないか?」
「で、殿下…!…平民が」
俺に絡んで来た人間は捨て台詞を吐きながら立ち去ってしまった。一体何がしたかったのだろう。
「ふ。よく抑えてくれたな。感謝する」
「いえ。こちらこそ無用な争いを持ち込んでしまい、申し訳ございません。助け、感謝します」
「…驚いたな。見るからに平民だというのにそこまでの礼儀作法を心得ているとは」
「そうなんですか?」
ミサさん、ユナさんにも同じ様な事を言われた様な?
「はは。ちゃんとしているのか抜けているのか掴み所が無いヤツだな。自己紹介が遅れたな、俺の名は
アラン・ストラクス・アンドゥール。アランって呼んでくれて構わない」
「僕はジーテです。よろしくお願いしますアラン」
「…俺の名を聞いて何とも思わないのか?」
「?はい、アランはアランですよね?」
「はは。こんな愉快なヤツがこの世に居たなんてな。俺は嬉しいよジーテ。また学園で会おう」
「?はい」
そんなやりとりをした後、無事に自分の番号を見つけられたので学園の中の教室に入る。
どうやら知り合いは居なかったが、先ほどの口論を見ていた人達から話しかけられた。
談笑していると、先生が教室に入って来る。
そして、無事に学科試験を終えた俺は、実技試験に移る事になった。
「あ、ジーテ!」
「ミサさん。一緒になれて光栄です」
「…ジーテ。私も居る」
「ユナさんも。お2人共、学科試験合格おめでとうございます」
「ジーテもでしょ?全員合格出来るといいわね!」
「…頑張る」
2人共、規定魔力量がそこらの生徒より多いから落ちる事はないだろう。数人、2人と同じくらいの魔力量を持っている生徒がいる。
俺に絡んで来た貴族と、アラン、アランの横に護衛みたいな感じで立っている2人。それと、後ろの方に居る黒髪の男女。
なかなかに楽しめそうだ。
「…ジーテ、笑っているけど何か良いことあったの?」
「僕、笑ってましたか?」
「ええ。楽しそうに」
…どうやら、俺は楽しそうな事を見つけると自然と顔に出る様だ。普通に考えたら気持ち悪いので、控える様に努力しなければ。
「感謝しますミサさん」
「学園に入る事が出来たらミサって呼んで欲しいわ」
「分かりました。その時はそう呼ばせてもらいます」
「…ミサだけズルい。ジーテ、私の事もユナって呼んでね?」
「はい。ユナさん」
「次!受験番号77、ジーテ!前へ!」
「呼ばれたので行きます。それではまた学園で」
「ええ!」
「…頑張って」
「ジーテったらもう受かった様に言って。意外とお茶目な所もあるのね」
「…可愛い」
…聞こえてますよミサさん、ユナさん。
「お、ジーテの番か!さて、どれほどの才があるか見させてもらうか」
「…あの平民め」
「「…かなり出来る」」
「まずは水晶に魔力を込めて。それから、自分の得意な魔法をあそこにある的に向けて放ちなさい」
「分かりました」
水晶に魔力を込めると、パキッと割れてしまう。
先ほどまで、魔力量200前後を映していた水晶。
「なっ…!魔力量5000まで計れる水晶が…!もっと高く計れる水晶を!!…。お待たせしたわね。次はこっちの水晶にいいかしら?」
新しく用意された水晶。しかし、同じ様に割れてしまう。
「えぇ!?この国で最高の水晶なのよ…!確か10万まで計れたはずなのに……。コホン。ジーテ、お次は魔法を的に。あ、あなたはもう合格したようなものだから加減してね?」
「分かりました」
周囲がザワザワしている。少しやり過ぎるかなとは思ったが、難癖つけられたりするのは苦手だから、俺にこの先絡んで来ない様に少し脅しを入れておくか。
魔力封印1段階解除。2段階解除。…よし、これくらいで。
手を前に開き、的に向けて魔力をひたすら練る。
溢れる魔力。魔力はある程度練ると、形となって視認出来るようになる。
先生はその魔力に、地面に倒れてしまう。他生徒も、全員立っていられないようだ。
あまり長く強い魔力を体に浴びると、蒸発してしまうから脅しはこの辺で。これで絡んでくる人は居ないだろう。
そして、最下級魔法を的に、全力で抑えて放つ。的が粉砕する。
「……はっ!受験番号77、じ、ジーテ!合格です。つ、次!」
「…はは。なんだよあのでたらめな魔力量は。ジーテ、お前は一体…」
「む、むりだ…。俺様があの平民に勝てるビジョンが全く見えない…!」
「凄すぎジーテ」
「…凄いですジーテ」
「「…」」
ーーーーー
「おい!今の魔力量はどこからだ!?」
「アンドゥール王国からです!!魔力測定器が全て破壊されました!」
「バカな…!!100万は測定できるんだぞ!?」
「しかし、現に…!」
「一体、あの国にナニが居るというのだ…」
各地で計測されたジーテの魔力量。各国はアンドゥール王国を警戒する。
ーーーーー
次の日。
無事に合格出来た俺は、貰った制服を纏い学園に向かう。世話になった宿屋に、また来ますと伝える。
料理も美味しかったし、世辞抜きでまた来たいと思っている。
学園入学生は、5クラスに分けられる。
俺はAクラスに入る様だ。
学園入り口でそう伝えられた。
教室に入ると、俺以外に生徒は入室していたようだ。俺が入ると、ガヤガヤしていた空気が静まり返る。
「皆さん、おはようございます」
挨拶を待っているのかと思ったが、どうやら違った様だ。魔力量を見せびらかせたので、萎縮しまっている様だ。
教室を見渡すと、後ろの席にミサさん、ユナさん、アラン、黒髪男女、アランの護衛という感じで固まって座っていた。
「ジーテ!ここの席にどうぞ!」
「ありがとうございます、ミサ」
「…!」
「おはようございますユナ」
「…!」
「朝からモテモテだなジーテ」
「アラン、おはようございます。モテモテとはどういう意味ですか?」
「え、、。皮肉を言ったつもりが…これは一本取られたな」
「?」
「殿下、その様な物言いは感心しませんね。…ジーテ殿、私は殿下の護衛であるマーカスでふ。ッ!」
「マーカス。大事な所で噛むとは相変わらずだね。僕は殿下の護衛のユーラスです。よろしくお願いしますジーテさん」
「よろしくお願いしますマーカスさん、ユーラスさん」
「私共の事も呼び捨てでお願いしまひゅ。ッ!」
「僕の事もユーラスでお願い!ジーテ」
「はい。マーカス、ユーラス」
「俺達も挨拶いいか?」
黒髪の男。試験の時から気になっていた片方か。
「はい。僕はジーテです。ジーテと呼び捨てでお呼び下さい」
「俺はザジ。こっちは妹のメア。俺の事もメアの事も呼び捨てで頼む。よろしくなジーテ」
「よろしくお願いしますジーテさん」
「よろしくお願いしますザジ。メア」
後の左角に、俺、その横にミサ。前にユナ。斜め前にアラン。アランの横に、ユーラス。ユーラスの後ろにマーカス。その横に、ザジ、メアの席順になったようだ。
「先日のあの魔力量。一体どれだけの力を秘めているんだ?」
「そうですね、アレは10段階魔力を封印しているウチの2段階解除の状態でしたので、全部解放すると1億は魔力量ありますね」
「イチオッ…ッ!…どんだけ桁違いなんだよ。学園に通う意味あるのか?」
「ありますよ。ミサ、ユナ、アラン、マーカス、ユーラス、ザジ、メアに出会えました。僕は友達になれたと思ったいますが、違うのでしょうか?」
「「「「「「「…(なんて純粋な眼差し…)」」」」」」」
ザジ「い、いや。そ、そうか。。そんなストレートに言われた事がないから戸惑ってしまった。俺も友達と思って良いってことか?」
ジーテ「はい。そう思って貰えないと僕だけ友達と思ってる勘違い野郎になっちゃいます」
ザジ「はは。警戒してた俺がバカらしくなってきた。改めてよろしくなジーテ」
ジーテ「はい」
アラン「それにしても、魔力量1億か…どうやって計ったんだ?世界の最高魔力量は、95万が最高だからそれ以上の水晶はないと思うが」
ジーテ「ああ。それは僕の魔法で創った水晶もどきでですよ」
メア「魔法を創った!?す、凄い…ザジ兄様もオリジナル魔法は持ってますが、物を創る事が出来るなんて…」
ミサ「私も驚きよ。魔法の構築をしっかりすればオリジナル魔法も出来るけれど、とてつもない研鑽と技術が必要とされているのに…。無から物を創るのはもう神様の領域って感じ…」
実際、神様なんだけどね俺。少しやり過ぎたな。
ユナ「…ジーテと同じ学年になれて、私達は幸運」
アラン「ああ。バニエッサの言う通りだな。ジーテと出会えたのは、寧ろ俺達の方が恩恵が大きい時言ってもいいな。色々教えてもらいたいもんだ」
ジーテ「いいですよ。放課後、時間ある人は中庭に集まってください。僕の魔法概念を伝えられるだけ伝えます」
そうして、放課後に俺の講義が始まる事となった。
入学初日だったので、入学式が行われたのと簡単なホームルームがあったくらいですぐに今日の授業は終わった。
放課後になったので、俺達は中庭に向かう事にする。すると、どういう訳か、中庭がかなりの生徒で埋め尽くされていた。
アラン「こ、これは一体…」
マーカス「大注目のジーテが講義すると学園中に噂になったからですね。よく見ると先生方も居るような…」
ユーラス「凄すぎ…鳥肌がヤバいよジーテ」
メア「もしかして、全生徒居るのでは…?」
ザジ「確かに。ホームルームが終わって、クラスメイト達は慌てて出て行ってたし。こういう事か」
ユナ「…ジーテ、大人気」
ミサ「大人気どころの騒ぎじゃないでしょ…この学園の全生徒といったら2000人は超えてるわよ…」
ジーテ「困りましたね。しかし、知りたい人は聞いていくといいです」
空間拡張魔法を中庭に放つ。空間を大きくする魔法で、学園中を大きくする。そして、聞きやすい様に中庭に1人ずつに椅子を用意した。
空間にどれだけ人が居るか、どのくらいの空間にすると良いのか計算すれば誰でも出来る魔法だ。
ザジ「ッ!これも、ジーテが?」
ジーテ「ええ。この方が聞きやすいでしょう?あ、皆さんは前の方ですよ。より理解しやすい様に」
アラン「…こんな全生徒の前で講義を受けるとか…王族の俺でもこんな事体験した事ねぇよ…」
ユナ「…流石ジーテ」
全員が聞く姿勢に入ったので、全員に俺の声が出て聞こえる様に魔法で声を響かせる。
ジーテ「皆さん。本日はお集まりいただきありがとうございます。それでは、僕の魔法理念について皆さんにお教えしたいと思います」
魔力。魔力とは、世界に満ちている見えない物体の事を示す。人はそれをマナと呼んだりしている様だ。今後は俺もそう呼ぶ様にしよう。
マナを体内に巡らせ、その量が、人の魔力量に繋がっている。なので、魔力量を増やすには体内に巡回させる魔力の器を大きくする事が必要である。
どうしたら良いのか。コップに水が満タンになったらどうする?そこから更に注がないと、水は溢れる。なら、新たに大きめのコップを用意してやればいい。そのイメージを常に持つ事で、体内に巡るマナは次第に増え、魔力量が上がる。
魔法。魔力を練って、イメージをしたら出せる力の事。イメージは人それぞれ感じ方、捉え方が違うので、共通の認識を埋め込むのは間違いである。
例えば、気温が20°あるとする。『暑い』と思う人も居れば『寒い』と思う人も居る。また、『ちょうどいい』と感じる人も居る。この場合、ちょうどいいと感じるのが、魔法の構築イメージには適任である。
一般的には、魔力を練り→魔法の詠唱となっていますが、細かく分けると、魔力の練り→どのくらい魔力を練るのか→どの魔法を使うか→その魔法をどれくらい飛ばすのか→効果範囲をどう設定するか。と、なっています。
つまり、『我求は火の精の力なり。我が前にその力を示し、顕現せよ。ファイアーボール』と詠唱した場合、この様に直線にしか飛んで行きません。しかし、先ほどお伝えした通りに構築すると、魔力をほんの少し練り、ファイアーボールを使うと認識し、くるりと回って直線に飛ぶ様にイメージをする。当たった場合、一点にぶつかるイメージを持つ。…ファイアーボール!…。先ほどの違いが分かりましたか?要はイメージです。どれだけその魔法に対して理解を深めているかが鍵となります。魔力量が少なくても、このイメージの力が強ければ強い程、少ない魔力でも出来る事は多くなります。
「ヤバすぎる…」「革命だ…」「早く試したい」
ジーテ「良いですか。これが、僕が考えてる魔力と魔法の概念です。イメージは人それぞれですので、理解が及ぶまではこれまで通り詠唱を介した方が良いでしょう。ひとまず、これが初級編となります。また講義をして欲しい人は明日以降もここに集まって下さい。お疲れ様でした」
講義を終える。長く話したから喉がカラカラだ。
アラン「今までの俺達の理解は間違った方に行ってたようだな」
ジーテ「いえ。間違いではありません。あくまで、僕の理念は個人の考え方、捉え方ですので僕が正解という訳ではありません。イメージを持つというのは簡単に思えてそうではありません。基礎が出来ていなければイメージも出来ないということです」
ミサ「これまで魔法には自信あったけれど、ジーテの講義を受け終えた今はそうは思えないわ」
メア「そうですね。魔力量が人より多いと自負していましたが、上には上がいると言う事ですね」
ザジ「ああ。早く試したいぜ」
マーカス「殿下の護衛にこれから役に立ちそうでしゅ。ッ!」
ユーラス「はは。そうだね」
ユナ「…ジーテ、お疲れ様。かえろ?」
ジーテ「そうですね。喉が渇いて干からびそうです」
ミサ「はい。これ良かったら」
ジーテ「ありがとうございますミサ」
ミサから渡された水を飲む。何故か照れていたミサ。
ジーテ「どうしましたか?ミサ」
ミサ「いやぁ…間接キスだなって…」
ジーテ「間接キス?それは一体なんです?」
ミサ「ッ!な、なんでもないわよ!」
ユナ「…ジーテのバカ」
ジーテ「ユナ、何故僕がバカなんですか。ちょっと、2人共待って下さいよ」
アラン「…はは。いいように尻に轢かれそうだなジーテ。一体何人と添い遂げるのやら」
ザジ「…メア、お前もあっち側に行ってもいいんだぞ?」
メア「そうですね、私もジーテ様に興味を持ってますのでいずれは…って、ザジ兄様。何をニヤニヤしているのですか?」
ザジ「いや、メアが俺以外に惹かれているのが嬉しくてな」
メア「ザジ兄様のバカ」
アラン「…これから楽しみすぎる」
次の日。学園に行くと話したこと無いような生徒から声を掛けられる事が増えた。
教室に入ると、俺の席にいつもの皆が集まっていた。
ミサ「あ、ジーテ。おはよう」
ジーテ「おはようございます皆さん」
アラン「そういえば、昨日の講義が凄まじ過ぎて、何でも今日の授業は全部無しになってお前の講義だけになったみたいだぜ」
ジーテ「そうなんですか?学園も思いきりましたね」
マーカス「そうでもありませんよ。昨日、ほとんどの先生方もジーテの講義に納得してましたし、校長先生もずっと素晴らしい!って絶賛していたようです」
ユーラス「前代未聞だねぇ〜」
メア「凄すぎって言葉しか出てきません」
ザジ「ああ。流石にあそこまで魔法の理解を出来ている人間はジーテくらいしか居ないだろうな」
ジーテ「僕の理念を覚えたら、皆さんもそうなりますよ。特別な事は言ってませんからね」
ユナ「…そこがジーテの凄い所。理解出来るからこそ、皆も授業より講義の方が良いって賛同したんだと思う」
ミサ「ユナの言う通りだわ。ハッキリ言って、あの話を聞いたら普通の授業じゃもう納得しないでしょうね…」
ジーテ「僕はこの学園の存在意義を無くしてしまったのでしょうか?」
アラン「それは違うぜジーテ。俺らも、学園も、皆が成長をしている。つまり、それはジーテが居なくなった先、下の世代に繋ぐ事が出来る。これまでの人類が俺達に繋いで来たように」
…人間の成長の進み具合が、ここまで凄いモノだとは思わなかった。創造したのは俺だが、まさか自分の事だけを考えるのでは無く、人から人へ、世代から世代に繋いでいく…それを永遠と繰り返している訳だ。どうりで国や人が発展する訳だ。
アラン「…ジーテ?嬉しそうだな?」
ジーテ「ああ。また僕の悪い癖が出てたんですね」
アラン「悪くはないと思うぜ。ジーテはクールだから笑った顔を見せると女性陣は喜ぶさ」
ジーテ「そうなんですか?」
ミサ、ユナ、メアを見てそう言うと、また「バカ」と言われた。何故だ。
そして。先生達から俺に講義をして欲しいと懇願される勢いで言われたので、了承した。
中庭に行くと、学園の生徒以外の人も居るようだ。明らかに人の数が多い。
ザジ「おいおい、これ…アンドゥール王国の人の半分以上居るんじゃないか?」
アラン「まさか…一般公開も可能にしたと言ってもそこまで広がるか?」
マーカス「殿下。それほどにジーテの講義は素晴らしいのです。学生から親に。親から知り合いに。そうしていけば国中に広まるのも無理はありましぇん。ッ!」
ユーラス「長々喋ると絶対噛むよねマーカス〜」
マーカス「う、うるさいでしゅ。ッ!」
ユーラス「はは」
アラン「そうか。しかし、何万人居るんだこれ」
ジーテ「37万人は居ますね。自動で人が増えたら空間が大きくなるようにしてましたが、これは想像以上です」
ミサ「さ、37万人!?凄すぎる…」
ユナ「…私達は伝説の1ページに立ち会えているって事かな」
メア「ええ。間違いないですね」
ザジ「ジーテ。お前は最高だ」
ジーテ「では、講義をはじめましょうか」
俺は中庭で集まっている人達に向けて挨拶をする。そして、昨日の復習も兼ねて行い、中級編を講義する。
属性には、火、水、地、風、雷、闇、光の7種類が存在します。属性相性があると本で学びましたが、そんな事はありません。
初級編を応用すれば、属性相性など皆無です。あるとするなら、それはイメージ力の差です。
例えば、火は水に弱いとなっていますが、果たしてそうでしょうか?
高熱を水で冷やすのは厳しいと思います。何故なら蒸発するからです。そして、水は風に弱いと言いますが、海水から巻き起こる大波を風で防げるでしょうか?厳しいと思います。
この様に、イメージ力が高ければ最下級魔法でも上級魔法くらいまでなら抑えられるということです。
これから、僕がウォーターボールを使用しますので、どなたか上級魔法のサイクロンを使って頂けますか?
ーーー…。
と、この様に、ウォーターボールでもイメージ力さえしっかりしていれば勝てるのです。
イメージするにおいて、絶対に考えていけないのが『無理だ』ということです。その考えは魔力にも込められるので、決してイメージには取り込まないで下さい。必ず打ち破れると言った気持ちを持つ事が必要なのです。それでも、同じイメージ力だとしたら魔力量が多い方が勝ちます。なので、そこは器を替えて行き、器を大きくしていきましょう。人に限界はありません。過去最高魔力量が95万と聞きましたが、この講義を聞いた人はその30倍以上の魔力量になるはずです。無理と思いますか?…そうですよね、無理じゃありませんよね?
無理と思うと全てが無理になります。無理という言葉で自分の可能性を潰すのはもったいないです。
最後に上級編です。
先ほど、属性は7種類と言いましたが実はそうではありません。
他にも、無属性、時属性の2つがあります。
無属性は、主に身体強化などです。魔力を多く身体に纏わせる事で通常より防御力が増します。
他にも、物を宙に浮かす魔法、遠くを見る魔法などがあります。更にはテレパシー。これは、対象者を頭の中でイメージし、魔力を込めると頭の中で会話出来るという魔法です。どれだけ距離が離れていても、魔力を練れば不可能ではありません。
時属性は、正確に言うと次元魔法ですね。
次元魔法には、時間停止やテレポート、未来予知などが含まれます。
魔力を練る量がとてつもなく大きいですが、可能です。
ーーーーー
ーーーー
ーーー
ーー
ー
…。
ね、可能でしたでしょう?
昨日、今日と僕がここで言った事で重要なのは、何をおいてもイメージ力です。物事を完全に理解出来ていれば不可能な事は基本的にありません。
それでは、ここで講義を終えたいと思います。
…空間が揺れる様にパチパチと手を叩く音が響き渡る。人は、感動した時などに拍手をする傾向があるようだ。俺の講義を聞いていた全ての人達が、俺に向けて拍手しているようだ。
伝えてはいないが、属性にはもう1つ、神属性というものが存在する。
これは、言うなれば再生と破壊の力である。しかし、これは悪用されると世界が大変な事になってしまうので伝えないでおいた。
人間が誰しも、心豊かな訳ではない。人は争い、順位を決めたりする。それらは基本争いからしか生まれない。そうなると、人間の負の感情で精神を支配され、暴力的な思考に陥る。
俺が伝えた部分だけなら悪用されても応用が効く。
アラン「お疲れ様、ジーテ」
ジーテ「ありがとうアラン」
ミサ「はい。喉渇いたでしょ?お水よ」
ジーテ「ありがとうミサ。僕が欲しいタイミングで貰えるなんて、僕の事をよく理解していますね。復習が出来ていて素晴らしいです」
ユナ「…ジーテ、それは少し違う」
メア「流石に鈍感過ぎますジーテ様…」
ジーテ「え?違いましたかミサ」
ミサ「…バカ」
12年、人間として生きてきたが未だにこの感情の事が分からない。まだ、俺は人間らしくはないのだろう。俺もイメージ力を鍛えなければ。
その後。
俺の講義を授業で応用する日々が続き、3年の月日が流れた。




