人間
…退屈でどうにかなりそうだ。
多分、俺は元々人間だったんだと思う。創造神から神様をやってみないかと言われ引き受ける事にしたが、自分が創った世界を眺めているだけの日々に飽き飽きしていた。
なぜ俺が元々人間だったのか。無機物は退屈という気持ちを持たないと思うからだ。しかし、それ以外の感情はわからない。
『ーあなたっ、私の事はいいから逃げて…!』
『お前を置いていけるか…!一緒にここから抜け出すんだ!』
男と女が、ダンジョンの中でモンスターに挟み撃ちに合い、絶対絶滅の危機に陥っている。
普段の俺なら何も思わないのだが、その2人が襲われているのを見て「何とかしなければ」と何故かその時感じてしまう。
俺は神様。この世界を創りし者。命ある生物の寿命なんかもみえている。この2人は、ここで死ぬ運命にある。
「ダメだ…助けないと」
そして、俺は光る球体となり、自分の創った世界に入り込む事にする。力を半分持ち、もう半分の力をここに置いていく。これで、外から管理する俺と中から管理する俺の2つに分かれられる。
モンスターが2人を挟み込み、襲いかかる。
ーその時、2人を包み込む様に眩い光が辺りを照らし、モンスターはその光に焼かれて消え去った。
「…ッ!な、何が起きたんだ…?」
「…あなたッ!モンスター達が居なくなってるわ!」
「今の光が俺達を救ってくれたのか…?」
「きっと、神様が私達を助けてくれたのよ」
「そうか、創造神ゼウス様が俺達を生かしてくれたのか」
…ゼウスは俺の名だが、創造神では無い。俺の上にはまだ階級が高い神が何人も居て、最高の位が創造神である。と、ここで解いても仕方あるまい。
俺は、そのまま2人に宿る様に意識を手放した。
ーーー
「おぎゃあ、おぎゃあ」
「おお!産まれたか!!よくやったなティファニー」
「元気な男の子ですよあなた…」
「こんなにも泣いて…よしよし」
「あなた…名前はどうします?」
「俺の名前、ジークとお前のティファニーから、ジーテだ!」
「ジーテ…良いですわね」
…意識が戻る。どうやら、俺の魂はこの身体に定着しつつある。赤子に宿った俺の魂。しかし、子供を発しようとしても人の体というのは不思議だ。おぎゃあおぎゃあしか発音出来ないとは。不便な肉体だな。まあ、のんびりいこう。時間はそれこそ無限にあるのだから。。。
ー2年後ー
「あらジーテ、字を教えていないのにその本、読めているのかしら?」
「はい母様父様に教えて貰いました」
「まだ2歳だと言うのに、私達の子は天才なのかもしれないわあなた」
「そうだな!俺達の子は天才で、可愛い!」
父様はそう言って、俺の頭をクシャクシャとする。
「全然泣かないし、最初はどうなる事思ったがこんなに元気に育ってくれて私は嬉しいわ」
…赤子というのは、常に泣いているものらしい。生物を創るだけ創って、あとは放置していたからそういう事までは最初、理解出来ていなかった。
しかし、覚えてからはちゃんと振る舞えて居たと思う。神らしく振る舞っても良いのだが、どうせなら『ジーテ』という1人の人間として生きてみようと考えた。
…それにしても、人間という生き物は面白い存在だ。この本とやら、色々な事が書かれていて興味深い。
人にはある程度の知能くらいしか力を与えていなかったが、魔力の扱い方も理解出来ているし、想像力も豊かな様だ。
魔力とは、元々は神だけの力である。神が使う魔力には残滓が残る。多分、残滓から人がその力に気付き、自分達の力として扱っているのだろう。
面白い。
「ジーテ、そんなにその本は面白いか?」
「え?」
「顔が笑っていたぞ?どれ、父さんにも見せておくれ」
…俺は、笑っていたのか?わからない。面白いと思ったら笑うのか人は。
色々、この2人から学ばなければならない。
『人』として生きていく事にしたのだから。




