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変の後・二
利光は山崎から逃げのびた後、近江の堅田に潜んでいたが、この地の領主に捕らえられた。
領主は利光の二人の息子を殺すと、利光を狭い部屋に閉じ込めた。
利光の身柄はこの後、秀吉に引き渡されることになっていた。
この時点で利光には、主君である明智光秀の行方はわからなかった。
数日後、すっかり暗くなった時分のことである。
不意に利光のいる部屋に灯りが点った。
見れば、床に置かれた燭台に蝋燭が置かれ、その上で小さな炎が燃えていた。
薄明かりが照らす部屋の中、燭台の向こうに一人の男が座っていた。
利光は、この男がどうやって部屋に入り込んだのか、まったくわからなかった。
男は、御伽師の修羅ノ介と名乗った。
修羅ノ介が語りを始めると、失意にあった利光の心も、いくらか晴れた。
三つの話を語り終えた後、修羅ノ介は四つ目の話に入った。
それは、利光の主君についての話であった。