第5幕 強制力につき、出会いは否めません。
だからと言って、殿下が向かう森への方向に近づかない、と言う簡単な方法はしない。
多分、あの時彼が森に来た理由は、父に私があの森にいると言う情報を聞いたからだろう。
でなければ、王太子なんて人が、森に行くと言う発想を出すことは、ほぼほぼあり得ない。
彼がやんちゃな人間だったらそうなるかもしれないが、前回の様子を見れば、やんちゃ、と言うよりも、気品が目立つがどことなく腹黒、と言う印象の方が大きかった。
私の個人的な偏見かもしれないが、腹黒は基本的に面倒臭いことはしないと言うイメージが大きい。
わざわざ森の中に入るなんてことは、うちの父親をからかう為のネタをとる為ぐらいしか思いつかない。
と言うか最初の目的はそうだったのだろうと推測している。
これからして、別に森にいてもいなくとも王太子は確実に私の元に来る。
バタフライエフェクトを起こして未来をかえようとしたことが一度あったが、この世界も、最初はただ単に神々が遊びとして使っていたもので、強制の名残が残っていた。
だから、王太子は確実に私の元に来るようになっている。
これは確定事項らしい。
だから今回私は、誰にも気付かれずに見つからない場所に行き、それを誰にも不審がられないようにする、と言う高難易度なことをしなければならない。
辛い。辛すぎる。
まあ、私が超能力者のようなものである限り、別に辛くも何ともない。便利なものだ。
と言う訳で、今から大まかに説明する。よく聞いておいてくれ。
1、周囲の人間に今日自分は正体不明(それを違和感と思わせない催眠付き)の友人と共にどこかへ遊びに言っていると言う催眠をかけます。
2、空中浮遊を使用し、そのまま宇宙へ飛びます。(何故か息ができる機能付き)
以上だ。
自分でも適当すぎると思うが、これが一番シンプルで簡単な方法だったのでこの作戦とした。
もう世の理に通っていないが………。まぁ、気にしないでくれ。
さすがに王太子もこの状況で私を探すなんて言う面倒臭いことはしないだろう。
何より、私は友人とどこに遊びに言っているか特定していない。
しかも、王太子にもそれを違和感と思わないよう催眠をかけておいたからな。これで大丈夫だろう。
「じゃぁ、行く「ねぇ、どうしたの?待ってよ。」」
あぁ、そうだった………。
この世界には、強い強制力が存在するんだった。
振り向くと、予想通りそこには、キラキラと、でもどこか胡散臭い笑みを浮かべた、我らが王太子殿下がいた。