2話 深呼吸は罠
みなさん!こんにちは!
なんと、2話は2人の心情がよく出てる演出にしたつもりです!是非2話も見てください!
【前回】
『コツンッ』
痺れを切らした彼女が、ガタッと机を押し付けてきた。
軽快な音を立てて二つの机がくっついた。僕たちの距離は一気に近くなった。
―――
「あ、ありがとう......」
緊張して声が裏返ってしまったけど感謝の言葉を伝えられて、良かったと思う。
「よし、全員教科書見れるな?じゃあ、授業始めるぞー」
数学教師が教科書を指しながらそう言った。少しざわついていた教室が静まり返り、授業が始まった。
◇
数学は苦手で良い評価を取れているかというと、そうではない。
ふと、彼女を見ると銀色の髪がふわりとなびいて、かすかに甘いシャンプーの匂いが鼻をくすぐる。
その瞬間、顔が熱くなった感覚がした。
(......なんか、悪いことしている気分)
なんとか落ち着こうとして――
「すー、んっ!?」
深呼吸の途中で、思いっきり直撃した甘い匂いに脳の処理が限界を迎えた。
(あ、これだめなやつだ......っ!?)
落ち着くどころか頭の中が完全に真っ白になり、更に彼女の方に意識は向いてしまう。
だが乗り越えなければならない壁はそれだけじゃなかった――
(――って、顔が近すぎないか......!?)
ちょっと横を向くだけで音羽さんの綺麗な横顔が視界いっぱいに広がる。
とりあえず、落ち着こうと下に視線を落とす。
そのとき、僕の腕と彼女の腕が当たりそうになっていることに気づいた。
(ど、どうしよう、当たったらどんな顔をされるか......)
僕はこれ以上考えるのは怖くて、この話題は一回忘れることにした。
(......いや、忘れるとか無理!)
とりあえず、腕が当たらないように両脇をギューッと締める。
背筋をピンと伸ばし、違和感がでないように工夫もしっかりしていく。だがこの姿勢はまるでロボットなんじゃないかと不安になった。
僕は必死にシャーペンを握りしめて、ノートを取ろうとするが緊張と両脇を極端に締めているせいで、字がうまく書けない。
(......これじゃあ、ノートが取れないじゃないか!)
ノートを取る余裕が全くない。
隣から漂う甘い香りと存在感に、僕は一秒でも早くこの授業が終わってくれと願っていた。
だけど、心の中のどこかでは――この夢みたいな時間が、もう少しだけ続いてほしいと願う自分がいる。
矛盾しすぎている自分の本音に顔が熱くなり、僕は焦って余計に両脇を固めた。早くチャイムが鳴ってほしい気持ちと、鳴らないでほしい気持ちが心の中で激しく喧嘩していた。
◇音羽 さき 【視点】
(......な、なんでこんなに固まってるのよ......っ!?)
ちらっと隣を見ると、彼はまるでロボットのようにガチガチに固まっていた。
(なんかぎこちない!?顔赤くなってきてるし、大丈夫なのかな......っ)
変な動きをする彼がおかしくて少し笑いそうになるけど、
『ドクンドクン』
とさっきから鳴っている心臓の音に、彼に聞こえてしまっているんじゃないかと内心焦る。
(ど、どうしよう......!心臓の音、こんなに大きいのに......彼に聞こえてたらどうすればいいの......っ!)
胸の中で暴れる鼓動のせいで、顔が熱くなる。
(彼も顔真っ赤にしてるし、もしかしてうれしいのかなっ......)
そんな訳ないと小さく首を横に振っていると、今日の席替えで、隣になったとわかった瞬間のことを思い出す。
(一番うしろの窓際......しかも彼の隣になれて本当はすごく嬉しかったのに)
くじ引きの紙を開いて番号を確認したとき、後ろの窓際の席でうれしかったし彼が隣になってすごくうれしかった。
なのに、いざ隣に座ったら緊張で全然話せないし、彼はなんだか固まって避けてくるし......。
数学の教科書を忘れたようだったから勇気出して声掛けたのに、反応しないし、焦って机をくっつけてしまったけれど、今考えたら彼の許可なしに勝手に......。
(ああ、私なんであんなことしちゃったのよバカバカバカ......!)
一度意識してしまうと、もうだめだった。
ほんの数センチ隣から、彼の体温のようなぬくもりがうっすら伝わってくる気がして、それだけで耳の裏まで熱くなっていく。
(ふ、ふつうに授業に集中すればいいだけじゃない......!落ち着きなさい......私!)
「すーっ」
深呼吸をしてパニックを鎮めようと、すーっと大きく息を吸い込んだ――のが、大失敗だった。
(なっ......!?)
鼻をくすぐったのは、彼から漂うかすかな石鹸の匂い。
不意打ちで直撃した爽やかな香りに脳の処理が追いつかず、私は慌てて口元を押さえた。
(んんっ!なんで深呼吸して自爆してんのよ私……っ!?)
落ち着くどころか一気に顔が熱くなり、頭の中が真っ白になる。
ちらっと横目で彼を見ると、変わらずロボットみたいにガチガチになってる。
(もしかして本当に、彼も緊張してたりして......)
もしそうだとしたら――私と同じように、この距離にドキドキしてくれているんだとしたら。
(〜〜〜〜っ!!)
一瞬よぎったその妄想に頭がめちゃめちゃに熱いことに気づき、私は慌てて俯いた。
隣では、彼が相変わらずピシッとロボットのようにしたままシャーペンを握っている。
私も、顔を真っ赤にしたままノートの端っこを無意味に握りつぶしていた。
『キーンコーンカーンコーン』
緊張状態だった私たちの間に、救いのアナウンス――授業終了のチャイムが響き渡った。
「はい、じゃあ今日はここまでー」
数学教師のその言葉で授業は終了した。
(助かった......!!)
私は緊張していた体を脱力して、机に崩れ落ちる。
彼も同じだったのか机に崩れ落ちていた。
ちらっと横を見ると、机の上でうつ伏せになっている彼と目があった。
お互いに真っ赤な顔のまま慌てて視線を逸らす。
(明日からも、この席だけど私耐えられるかな......!?)
机の下でぎゅっとスカートの裾を握りしめながら、私はうるさくなっている胸を押さえた。
みなさん!好きな人が近くにいる時深呼吸は罠です!
2話を閲覧していただきありがとうございます!
次回の投稿は1週間後に投稿するつもりですので、よろしくお願いします!




