1話 嫌われてる?
はじめて書いたのが学園ラブコメということで、頑張って高校生特有の展開を用意しました!
※外部サイト(カクヨム)にも投稿させていただいています。
僕の名前は夏陸 晶
ごく普通の高校2年生だ。
クラスの端っこの席で一人、特別目立つわけでもない僕には、悩み事が一つある。
それは――この学校の高嶺の花である音羽 さき(おとわ さき)さんに気づいた頃から毎日めちゃくちゃ睨まれていることだ。
「音羽さんおはよう」
近くの男子が髪をかきあげながらあいさつをした。
「おはようございます」
音羽さんは今日もみんなに優しい笑顔で挨拶を返している。そう、僕を除いて。
席についた音羽さんが一瞬、僕に目を向けたと同時に表情がみるみる険しくなっていき、睨みつけるような視線で僕を見てきた。
『ギロリ』
――ビクッ
『ぷいっ』
――そっぽを向いてしまった。怒りのあまりか耳まで真っ赤になってしまっている、それとも別の理由なのか、僕にはさっぱりわからなかった。
◇
朝のホームルームが始まった。
「はい、じゃあ今日は席替えするぞー」
担任の一言で、教室が一気にざわついた。
「よっしゃ!」
「頼む!神様!」
「隣の席、今回こそ好きな人がいい!」
教室のあちこちから、そんな声が聞こえてくる。
「お前誰の隣になりたい?」
席替え直前特有のどこか浮ついた熱気の中、隣から不意に声が飛んできた。
「別に、誰でも」
「ふーん?」
白々しく語尾を上げる彼に、僕は『動揺していません』の顔を作り直した。
彼の名前は、山内 翔そこそこ仲がいいと思っている。
ただ、こういう恋愛絡みの話になると勘が良くなるので鬱陶しいところである。
にんまりと口元を緩めた彼は、すべてお見通しだとでも言いたげな目を向けてきながら、僕の視線の先を追っている。
ふと彼女の方を見ると、周囲の女子に音羽さんが声をかけられていた。
「音羽さん、誰の隣になりたい?」
「うーん......」
視線を少し上に向ける彼女の、長く伸びたまつ毛がかすかに揺れる。
華奢な指先を顎に添え、困ったようにする仕草に、周りの男子たちの視線が釘付けになったのがわかる。迷うように教室を見渡した彼女の瞳が、ふいに一瞬だけ僕のいる方向へ動いた気がした。
(やばい、目が合う――!!)
背中に冷たい汗が走り、僕は咄嗟に机に向かって俯いた。
『ドクドク』と胸が鳴る
自意識過剰かもしれない。ただの偶然に決まっている。
それでも、僕の心臓は落ちつかない。
耳の先まで赤くなってるんじゃないかと生きた心地がしなかった。
「で、音羽さんは誰と——」
誰かが期待を込めて続きを尋ねようとした、その瞬間。
「はい、無駄話はそこまで、名簿番号順にくじ引けー」
教卓をコンコンと叩く担任のあっけらかんとした声が、教室の甘酸っぱい空気を一瞬で粉砕する、音羽さんの答えを聞きそびれたクラスメイト達から小さながっかり声が漏れる中、番号を呼ぶ声が始まり、緊張感は更に高まった気がした。
◇
彼女の名前が呼ばれたその瞬間、クラスが静まり返った気がした。
クラス全員が見守る中、くじを引いた音羽さんは嬉しそうに席に戻り、クラスメイト全員が音羽さんが「どの席になったのか」とクラスがまたざわめいた。
「どの席になったんだろう?」
「頼む!音羽さんの隣!」
そんな話し合いを聞いていたら、僕の名前が呼ばれた。
パッと起き上がり席を立とうとしたら、こちらを見ていたらしい
翔がにやにやしながら言ってきた。
「がんばれよ」
――内心何を頑張るんだよと思いながら、くじを引いた。
◇
くじを見る手が少し震える。
『一番うしろ・窓側』
心の中でガッツポーズを決めた。後ろの端っこだったら、授業中すこし居眠りしても大丈夫だし、授業中睨まれることもない!!
「みんな、くじ引いたか?じゃあ移動しろー」
担任の一言でクラスメイト全員が動き出した。僕も指定された席へと足を進める。
――が、その足が、席のすぐ手前で止まる。
そこにはすでに先客がいたのだ。
隣の席には、嬉しそうにして荷物を整理している音羽さんがいた。
「......え?」
(このくじ引きは仕組まれていないのか!?)と内心思いながら立ち尽くしていると、音羽さんがゆっくりと顔を上げた。
『じーっ』
やっぱり睨まれてる、僕悪いことしたけ......!?
「早く座りなよ」
ぷいっと視線を横に逸らしながら、そっけなく言われた。
けれど、心なしか彼女の綺麗な横顔は、朝と同じようにほんのり朱に染まっている気がする。
相手の本当の気持ちなんてわからないのに、そのちぐはぐな仕草ひとつで僕の心はいとも簡単に、乱されてしまう。ただの怒りなのか、それとも自分の都合のいい勘違いなのか――押し寄せる不安と激しい動揺を必死に隠しながら、
「う、うん」
と小さく返事をして、逃げるように椅子を引いた。
「じゃあ、ホームルーム終了するぞー、次の授業遅れんなよー」
と言い残し担任は教室を出ていった。
◇
チャイムが鳴り、クラスメイト達は一斉に荷物をまとめたり、席が近くなった人と話し始めた。
「今回俺アリーナ席だわ......」
「教科書準備しないと」
といった話し声が飛び交う中、僕の周りだけは特になにもしていないというのに異様な緊張感に包まれている。
(......落ち着くんだ。ただ隣の席になっただけだ。なにか会話をする必要なんてない!)
自分に言い聞かせながら、僕はカバンから次の授業――数学の教科書とノートを取り出す......はずだった。
(......あれ?)
がさごそとカバンの底までいくら探しても、見えるのはノートと筆箱だけ。
本来あるはずの数学の教科書が見当たらない。
(嘘だろ......今日に限って忘れた!?)
背中に嫌な汗が吹き出す。
前の席なら隣の男子に「ごめん。見せて!」と軽く頼むこともできた。だが、今僕の隣にいるのは――
(音羽さんに「見せて」なんて言えない......!)
冷酷な視線を思い出して絶望している間にも、チャイムが容赦なく鳴った。
『キーンコーンカーンコーン――』
教室の扉がガラリと開き、数学の担当教師が入ってくる。
一瞬で静まり返る教室。
教卓に立った教師は、黒板に日付を書きながら、教科書をパンパンと叩いた。
「よし、授業始めるぞー、88ページ開けー」
教科書を開きかけて教室を見回した。
「ん?席替えしたのか?」
数学の教師は教室を見回してそう言った。
「教科書忘れたやついるか?もし忘れたなら、素直に隣のやつに見せてもらえ。貸し借りなんかでウロウロするなよ。」
先生のその一言で、教室のあちこちでガタガタと動く音がした。
「やば、俺忘れた!見せて!」
「ちょっと、見えにくいからもっと机寄せなさいよ」
忘れたクラスメイト達が一斉に助けを求め、あっという間にペアを作っていく。僕も焦って周りを見渡したが、近くの男子たちはすでに忘れたクラスメイトに捕まり、教科書を共有し始めていた。
(しまった!取り残された!)
他を頼る選択肢は一瞬で全滅。
残された道は、隣で教科書を開いている音羽さんしかいない。
(でも、音羽さんに「見せて」なんて言ったら、どんな顔をされるのか、考えるだけで恐ろしい。)
『トントン』
隣から、小さな振動が伝わってきた。
驚いて振動した方を見ると、音羽さんが僕の机のすぐ近くまで教科書を差し出したまま、ピタリと動きを止めていた。
そして――
『ギロリ』
(ヒッ......!?)
朝以上の、鋭い視線が僕を刺す。
音羽さんはぷいっと視線を逸らすと、朱に染まった耳をピクピクと震わせ、小さな声で呟いた。
「教科書ないんでしょ......早く......机......くっつけなよ」
『コツンッ』
痺れを切らした彼女が、ガタッと机を押し付けてきた。
軽快な音を立てて二つの机がくっついた。僕たちの距離は一気に近くなった。
閲覧していただき、ありがとうございます!
前書きで書いた通り初めて書いて作品です。
なにか、誤字、脱字、アドバイスなどをお願いします。1週間間隔で投稿しようと思っていますので、是非完結までよろしくお願いします!




