特訓
俺の体が熱くなる。
(これが魔力というものか!)
木の棒に向かって何かをイメージする。
おぼろげに頭に浮かんできたのは赤い炎だった。
そのイメージを木の棒に向かって投げつける。
「いくぞ!」
目の前が爆ぜた。土煙で周りが見えなくなった。
「やったか!」
だんだんと煙が晴れていって木の棒があった場所が見えてきた。
「あれ?」
しかし、木の棒は刺さった状態のままそこに鎮座している。
「んな馬鹿な……げほっ、ごほっ」
なぜか口の中から煙が出てきた。
もしかして、爆ぜたのは木の棒じゃなくて俺自身?
「最初はみんなそんな感じですよ」
アジスがにっこりと笑っていた。
「先に言ってくれ!」
俺の髪の毛はちりぢりになっている。
「先に言っちゃうとみんな怖がってちゃんと魔法を使わないっておばあちゃんが言ってました」
「そうなのか」
横で見学していたおばあちゃんが頷く。
「習うより慣れろってことじゃ」
「はあ」
思ったよりスパルタ教育を俺は施されるようだ。
俺は意を決して魔法の訓練を再開する。
「まあ、いいや。どんなことがあったって魔法の一つや百個覚えてやる!」
「その意気です!」
かくして俺の地獄の魔法特訓が始まった。




