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動機
外ではチェムが魔力の使い方を実演していてくれた。
「水を中に浮かす。炎を発火させる。大抵のことはできるわ」
「すげー」
俺は素直に感心した。
「訓練すればね」
「どうやってやるんだ?」
すっかり教えてもらうつもりでいた。
これぞ夢に憧れていた異世界って感じ。
「それはアジスに教えてもらいなさい」
アジスは俺ににっこりと笑いかけてくれた。かわいい。
「私たちエルフは代々転生者を案内するためこの土地に住んでいるんです」
「へえ、よろしく頼む」
「はい、サイトウさんには長くモフモフさせて欲しいので」
「お、おう」
こちらとしては願ったり叶ったりなのだが……
アジスの横のチェムをちらりと見る。
睨まれている。
何か変なことをしたら殺す。チェムの目はそう語っているようだった。




