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魔力と能力
「げほっ、げほっ」
あの柔らかい余韻に浸る間もなく、俺は固い木の床を舐めた。
「制限時間になっても抜け出さないなんてサイテー」
チェムが見下ろしてくる。
いや、そもそも抜け出させなかったんですが。
制限時間って何?
まだここに来てからそんなに時間経ってませんよ。
「あっ、まだ説明してませんでしたよ」
理不尽な怒りに震えるチェムの拳をアジスがやさしく包む。
「そうだったな」
チェムが腕を下すと一方的に説明しだした。
「この世界には能力と魔力の2種類ある。能力はそれぞれの固有の能力を示し、魔力とは関係がない。魔力は文字通り魔法が使えて、魔法はその魔力に依存する。そして能力も魔力に依存する。つまり、訓練もしていないお前がこんな短期間にドラゴンやら猫やら化けてたら魔力がすぐに枯渇するわけだな」
えーっと、魔力が魔法で、魔力が能力? うーんいまいちピンとこないな。
俺が首を傾げているとチェムはため息をついた。
「わかった、ついてこい。実演してやる」
親切な? チェムに連れられて俺たち四人は小屋の外へ出るのだった。




