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二十二話《罵倒される変人》


 妹、京歌の自転車の話を聞いた僕は、京歌がチョコレートが食べたいと言うので、歩いてお店へと向かっていた。


「あれ? あれあれ? 変態変態変態変態君じゃん!」

「僕の変態性を、必要なまでに強調するかのように繰り返さないでくれるかな? 音萌さん」

「必要? 強調? どういう意味?」

「君、僕に勉強を教えているはずなんだけどなぁ……」


なんで必要とか強調とかを知らないんだよ。

人生で使う機会そこそこあるだろ。


「それでそれでそれで、変態君はこんなところでどうしたの?」

「妹にチョコレートを頼まれてしまってね。買いに行ってるところだよ」

「あー、妹ちゃんか。今度今度合わせてよ。見てみたいな、変態君の妹」

「うーん、碌なのがいないけどね」


変態と変態と変態だ。

変態君の妹三人は全員変態ちゃんだ。

唯一まともだと思っていた京歌まで自転車であんなことを想像するのだからもう末期であろう。


「そんなこと言っちゃちゃ駄目なんだよ? 家族は大切にしないと」

「うん……それは分かってるよ」

「分かってるならよろしいしい」


そう言って音萌さんは「変態君、悩んでるでしょ?」と核心を突くようなことを言った。

僕、そんなに分かりやすいかな……。


「うん、まあね。家族のこと」

「へぇ、家族のこと……か」

「でも大丈夫、自分で解決するよ。家族だし」

「本当に困ったら頼ってね? 変態君には私、凄く恩を感じてるんだし」


そう言ってから音萌さんは僕に近づいてきて、抱きついた。


「な、音萌さん……?」


こんなところ、無月が見たら殺されるぞ。


「あんまり、背負いこまないでね。誰かに頼ることは、大事なんだから」


耳元で呟かれる。


「うん」


僕はそう言って、音萌さんの肩を掴み引き離した。


「さて……と、じゃあ帰ろうかなかな? シリアスな変態君は、面白さ半減だし」


クスクスっと笑い、音萌さんはタッタタッタとリズム良く帰っていった。

全く、元気な人だ。

でも、そのお陰で僕も少しは元気になれた。

今日の夜、京歌はまた無意識のうちに人を殺すかもしれない。

さーて、頑張って止めないとな。

僕は京歌の兄なのだから……。

そう考えをまとめ、僕は家へと帰った。



 僕は今、パンツだけ履いた状態で、正座している。

そして頭を下げる。

つまり、土下座だ。


「お兄ちゃん、なんのために外に出かけたの? チョコは? チョコレートは? どこなの? どこなの?」

「本当にすいませんでした」


この状態でもう一時間半も経つ。

もう許してほしい、なんで僕はパンツだけの状態で妹に土下座をしないといけないのだ。

チョコレートくらい今からでも買いに行くのに、そんな暇もないではないか。


「というか京歌、お前そんなキャラだったっけ? 僕の不確かな記憶だと、可愛い妹キャラだった気がするんだけど……」

「ん? 京歌は可愛いよ?」

「いや、確かに可愛いけどそういう意味じゃなくて……えーっと、なんていうか、もっと兄を、お兄ちゃんを慕っていたというか、こんな仕打ちはしなかったと思うんだけど?」

「それはお兄ちゃんとそこまで関わってなかったから、お兄ちゃんが勘違い死ねいるだけだよ」

「今さりげなく死ねって言ったよね?」


聞き逃すものか。

この妹……こんなことが言うような妹だったのか。

罵倒系の妹……。うーん、まぁ萌えるかな?


「それで、死ねえちゃん」

「お兄ちゃんに死ねを混ぜたかったのかもしれないけれど、それだと僕がお姉ちゃんみたいじゃないか」

「冗談だよ、お姉ちゃん」

「あれ? 僕お姉ちゃんだったの?」

「そうだよ。貴方はお姉ちゃんです」

「断言した⁉︎」


僕がお姉ちゃんになってしまったら変態四姉妹じゃないか。

靴下好きの長女、僕。本来は長男。

最強の変態次女、美惑。本来は長女。

自転車好きの三女、京歌。本来は次女。

パーカーパンツ四女、猫夜。本来は三女。

なんていう家族だ!

僕の父と母って変態には見えないけど、実は相当ヤバい人間だったりするのか?


「それで、お兄ちゃん。なぜ、チョコチョコを買ってこなかったの?」

「そんな風になんでも二度繰り返す人と話していたら忘れてしまったんだよ」

「なんでも二度繰り返す人? お兄ちゃんの友達?」

「うん、まあね。音萌なんちゃらさん」


下の名前なんだったかな?

み、み、み、ミート……肉? 

いやいや、音萌ミートさんな訳がない。


「へえ……もしかして彼女?」

「いや、違うけど……あ、そういえばお前たち妹のことを言ったら会いたいって言ってたよ」

「んー、猫夜ちゃんが嫌がるよ?」

「あー、うん。そうだね。止めておこうか」


猫夜に女友達なんて見せた時点で消される。

僕も、もちろん音萌さんも。


「それで、お兄ちゃん? その音萌さんと会ったから……京歌のチョコ、忘れちゃったんだよね?」

「はい」

「許しましょう」


なんでこんなに上から目線なのだろうか?


「その代わり、明日は京歌にケーキを買ってきてください」

「なんなのかな? その丁寧口調」

「駄目だよ、お兄ちゃん。そこはノリに乗ってくれないと……お兄ちゃん、クラスでハブられるよ? というかハブられてるよね?」

「ハブられてないよ。決めつけないでくれるかな? 僕は友達が一人はいるんだよ? あ、音萌さんを含めると二人だ」


そういえば音萌さんは同じクラスだったな。

音萌さんが言ってたし間違いない。


「へぇ、そうなんだね。頑張ったね。お兄ちゃん」

「……」


何故だろう、馬鹿にされている気がする。


「まぁいいや、ケーキだよね? 買ってくるよ」

「わーい! お兄ちゃん大好きぃっ!」


言って京歌は抱きついてきた。

慎ましい胸が当たるけど、全くなにも感じない。

やっぱり妹だなぁ……。


「はいはい」


言ってポンポンと京歌の頭を叩いた。


「へへ……」


それが気持ちいいのか京歌はそう言って笑う。

あ、可愛い。ドキドキする。萌える。

これが恋か!

いや、ないな……。

あくまで家族だ。

そう、家族。

これからはずっと、僕の家族であり、僕の妹である京歌と、向き合っていこう。


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