表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パリィタンクが往く、リーヴラシル・フロントライン  作者: ゼノ
空を見上げ叡智を知り、地を見て深淵を知る。
32/68

湿地は最後まで殺意たっぷり

 スライムの肉体を保てなくなってきたからなのか、スライムオブレギオンの動きに怒りと焦りを感じる気がする。スライムってのは、こうも感情豊かなものなのかね。


「右! 正面! 叩き付けからの掴みはァ――――ボーナスタイム!!」


 呪毒の槍を振り回し、スライムの肉を切り裂く。スライムの体はブヨブヨしていて物理攻撃が通りにくい。しかし、スキルを発動したり、魔法などのエンチャントをかけていると話は別だ。俺はエンチャントをすることなどできないが、リヴラインにはアイテムでエンチャントをすることもできる。まぁ、それは五番目の街フィフスグロリオからしか売っていないのだが……俺が話したいのは、エンチャントの仕様。

 リヴラインにおいてエンチャントは大きく分けて二種類存在する。一つは魔法、呪術などに存在する付与魔法、付与呪術。アイテムを利用したエンチャント。どちらが強いとかは、ビルドや装備構成によっても変わってくる。注目したいのは、後者のエンチャントだ。


 アイテムを利用したエンチャント、ということで誰もがフィフスグロリオから購入できるエンチャント用アイテムでしかエンチャントができないと考えるだろうが……この世界のアイテムエンチャント――――ポーションをぶっかけただけでも一時的なエンチャントとして判定されるのだ。攻略サイトにも載っているし、公式も仕様だと断言しているこの仕様。回復ポーションや聖水をかけた武器でアンデッド系を殴れば、光属性と同じように特攻ダメージが乗る。


 長々と語ったところで、本題へ行こう。スライムとはゼリーやゲル状のモンスターだが、その八割以上が水分で構成された存在だ。スライムのドロップアイテムであるスライムゼリーにそういった記載があった。水分、つまりは水。水といえば、セカンドグロリオには湿地帯を快適に移動するためのアイテムが売っている。つまり――――


「やっぱり効くじゃねぇか、水避けの秘薬!」


「―――――――!!?」


 アイテムエンチャントの仕様を利用して、水避けの秘薬を武器にぶっかけてやれば、スライムの体をぶち抜くエンチャントが施された武器の完成だ。一分しかエンチャントが続かないのでちゃんとエンチャント時間を見ていないとブヨブヨに阻まれて攻撃が難しくなったりするので注意。


「うははははは!! 呪毒! 水避け! お前の大好きなものを押し付け続けてやるよ!」


 思う存分感謝してくれよ? お礼はいいからお前のアイテムと経験値とアイテムを寄こせ。あと道も開けてくれると助かる。


「――――――!!!!」


「おいおい、怒りん坊か? 怒りすぎて動きがお粗末になってるぞ! ……いや、元々かぁ?」


「――――――――――――ッッッ!!!!!!」


「右、左、左、転がる! ほらほら頑張れ頑張れ! 鬼さんこちら、手の鳴る方へ!」


 ここまで挑発に乗ってくれると楽しくなってくるな。水避けの秘薬を頭から被って湿地帯の移動を快適にしたら、もう二つ取り出して拳と槍にかける。エンチャントのかけ直しも完了したし……そろそろフィナーレと行きたいところだ。ああ、そういえばこいつも試してみたいと思ってたんだよなぁ……


「バーストステップ三回後退、からのスタートダッシュ! んでもって位置調整からのぉ……!!」


 エンデュアーアジリティによる敏捷補正と三桁に到達した敏捷によって生まれた加速。コマ送りのように近付くスライムオブレギオンの腕を躱して、狙うのは心臓部分!! 発動するスキルはコカウロスを撃破したことで進化したソニックランス改め――――


「バーストランサーッ!!」


 濃厚な青色のエフェクトを纏った槍が、加速によって生み出された慣性と共にスライムオブレギオンの肉体をぶち抜く。しかし、足りない。スライムの肉体はぶち抜いたが、骨に阻まれた。


「――――!!」


 スライムの巨人が嘲笑うような表情を浮かべたような気がする。そんな巨人に俺は、獰猛な笑みを返す。


「足りねぇならよ……」


 ググッ、と闘士の拳を装備した左手に力を込める。あと一押しで走行をぶち抜ける、というところで負けるなんてこと、BMWで何度も経験してきた。多腕ウォーローグを作ったのだって、フィニッシャーとなる武装を増やすためだった。そしていつも俺を救ってきたフィニッシャーは槍や刀、腕などに組み込んだギミック。ロマンの塊。


「ダメ押し行ったれもう一発……! ぶち抜いてやるよ、そのカルシウム不足な骨を!」


 喰らいやがれ、BMWでよくやってたダメ押し技!


「槍式パイルバンカー!!」


 槍の石突きを拳でぶん殴ることで、呪毒の槍が骨を突破し、クリティカルを発生させながら核を貫く。核を潰されたことで、スライムオブレギオンがガクガクと体を震わせ始める。それはBMWで稀によく見ていた挙動……俺が使っていた自爆特攻野郎ビルドの最後に見せていた挙動によく似ている。つまり――――


「自爆はオーアフロッグでもう腹一杯なんだ! 一人で吹っ飛んでくれ!!」


 結構楽しかったよ、お前との戦闘も。シャームドラゴンとの戦闘と比べたらちょっと物足りない感じがしたけど、レベル差があったし、仕方ないわな。


「――――――――!!!!」


「おおっと!?」


 全力で道ずれにしようとしてきたが、そうはいかない。水避けの秘薬によって通常の陸地と同じ速度で移動できるようになっている俺は、全力で距離を取る。自爆を狙う相手がやられてほしくないことは、油断せず距離を取られることだ。自爆特攻野郎ビルドを組んでいた俺を舐めるなよ。


「―――――――――――――――――!!!!!!!!」


 不意に、ボコボコボコボコ!! と一気に体が膨張し、スライムオブレギオンが湿地帯に咲く肉の花火となって爆散する。うーん、中々の雅。というか自爆の仕方がウォーローグに似ていたのはセルフオマージュというやつか?


「何にせよ……スライムオブレギオン、攻略完了だ!」


 夜の姿はそのうち挑む。夜の行動がどれだけ増えているのかは知らないが、初見殺しが何種類か増えているくらいだろう。増えないでくれるとありがたい。

 それはそれとして、リザルトを確認しなくては。えーと……経験値はそこそこ。レベルは上がらなかったが、まぁ、そんなものよ。それよりも注目したいのはどんな素材がドロップしたのかだ。スライムって、錬金術の素材にされることが多いイメージがあるが、この世界のスライムはどうだろう。


「えーと……お、これか」




【スライムの軍勢核】

 スライムオブレギオンの肉体を構築していた核。口の中と心臓の部分に存在する核の一つ。錬金術の素材として使われる。

 遠い昔、分解者たるスライム達は湿地にて斃れた巨人を見た。竜狩りに挑み、敗れて斃れた矮小な巨人の亡骸に群がり、形を得たのだ。


【巨人の骨片】

 スライムオブレギオンの骨格となっていた巨人の骨の欠片。極めて頑丈で、竜の牙を阻むことすらある。

 矮小な巨人は竜狩りに挑み、敗れて斃れた。そしてその亡骸はいつの日か、分解者たるスライム達に利用された。




 ……え、何? つまるところ……スライムが本体で、巨人はほぼ関係ない存在ってことか? というかスライムって分解者なんだ……


「巨人の骨片は俺が貰うとして、錬金素材はフラウヤにでも渡しておくか」


 持っていても売るだけになるから、使える人が有効活用してくれるのがいいだろう。巨人の骨片を使ってどんな装備が作れるのか、楽しみだなぁ。竜狩りに挑んで負けたらしいが――――ん? メールが来てる。


「…………ローニンから!?」


 音沙汰無かったローニンからのメールとは……




件名:謝罪

差出人:ローニン

宛先:アオヘビ

本文:すまんアオヘビ! シャコフィストがお前に興味を持った! しつこすぎてどこにいるのか伝えちまった……!! 悪いがシャコフィストに軽くでいいから付き合ってやってくれ。悪い奴ではないからよ。

詫びの品と言っちゃなんだが、エリクシールを送付しといた。本当に悪い!




「ええ……」


 シャコフィスト……シャコフィストかぁ……【拳聖】と謳われる、対人クランの最強の一角であり、ローニンと同じチームに所属しているプロゲーマー。そしてソフィアのフレンドでもある……らしい。


「どんな人なんだろ」


「ただのPvPが大好きゲーマーだよ」


「うおおおお!?」


 振り向けばそこに、プレイヤーがいた。大きなガントレットを装備した聖騎士然とした装備構成のプレイヤー……声からして女性か?


「シャコフィストさんで……いいのか?」


「合ってるよ。……君がアオヘビ?」


「あ、ああ」


 何だろう、鈴音姉さんと同じような気配がするんだけど……いや、鈴音姉さんよりかは分かりやすい?


「そっか。……じゃあ、やろうか」


「えっ」


「ローニンが君を高く評価してた。僕から見ても、君は強そう。だから、戦ってほしい。楽しい戦いになりそうだから」


 ああ、戦闘狂タイプですか……そうですか……


「戦うのはいいけどさ、サードグロリオに行ってからでいいか? リスポーンポイント更新しておきたいんだよ」


「……ボス戦終わったばっかり?」


「おう」


「そっか。…………じゃあ、サードグロリオの闘技場でやろう」


 やるのは確定なんですね。まぁ、この人と戦ってみたいとも思っていたし、いい機会かな。トッププレイヤーとの差がどれだけあるのかとか、格下が格上相手にどれだけ食い下がれるのかとか、色々試してみたいし。


「じゃ、捕まってて」


「えっ」


「僕が走った方が早いから」


 その後、俺は風となり、闘技場でボッコボコにされた後、ホクホク顔のシャコフィストに何度も再戦を要求されたことをここに記す。対人勢ってのは、どんな世界でもこんな戦闘狂ばっかりなのか?

シャコフィスト

戦闘狂。ローニンなどの同格プレイヤーではなく、特定プレイヤー(格上相手でも全力で勝ちに来るやつ)にもロックオンしてくるやべーやつ。女の子。

アオヘビは二十回戦って、二十回負けたが、全力で応戦したせいでロックオンされた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ