同級生との関係
「で? あなた、なんでそんな変な色の金髪なの?」
「いや、そっちの話かよ!」
会計を済ませつつ、店内の休憩スペースに三人は移動して総司と真白、その対面にテーブルを挟んで深春が座っており、彼女から開口一番に金髪の事を聞かれる。
てっきり真白とはどういう関係なのか、そう何から何まで問い質されるものと思っていたので、面食らった総司は思わず力強いツッコみで返してしまった。
「だって気になるでしょ。もしかして真白ちゃんとの関係の事を聞いて欲しかったのかしら?」
「そう言うわけじゃねぇよ。まぁ、金髪はペンキが落ちて来てこうなったんだよ」
「へぇ。で、真白ちゃんとはどうなの?」
「自分から聞いておいて興味無しかい!」
なんともふざけた母である。総司をこうやってからかうためだけに金髪の事を聞いてきたらしい。
完全に深春のペースだった。このままだと会話の主導権を握られたまま話が進みかねない。
総司はまずいぞと一旦、ツッコんでから一呼吸を置いた。
「それで? 付き合ってないって言ってたけど本当の所は?」
茶番は終わりだと、深春はそうストレートに尋ねてくる。
ここからは尋問タイムの始まりだ。
「一緒に買い物をしてたのは認める。けど付き合っては無い」
「真白ちゃん、そうなの?」
「本当です」
「なるほど、なるほどねぇ。そうなのかー。ふむふむ、へぇー」
一人で何か納得したのか、頷きつつ深春はそう口に出していた。
何を悟ったのかは知らないが、真白と交際していないことさえ理解してもらえれば最低限はそれでいいだろう。
彼女の事なので、納得しているのか怪しいのだけれども。
「と言うか、なんで母さんはここにいるんだよ? 最寄りのスーパーじゃないだろ?」
彼女の質問がひと段落したところで、総司は最初から気になっていたことを訝し気に聞いてみる。
総司の実家はここから車で二〇分弱。電車でも二、三駅ほど離れている。
深春の生活圏からは外れているし、このスーパーで買い物をすることなど無いはずだ。
「どうせ、ロクな食生活してないだろうから、今日はあなたの部屋に寄ろうと思ったからよ。でもその様子だと心配はいらなかったみたいだけど」
「そう言う事か」
「そんなわけで、部屋に邪魔するわね?」
「いや、来るなよ」
「あら? やっぱり真白ちゃんと一緒に過ごすの?」
「あのなぁ。こっちも色々予定があるんだよ」
「おデートの予定?」
「さっき何を納得したんだよ⁉ 違うって言ってるだろ」
油断も隙も無いとはこのことだろう。
隙あらば真白との関係を探ろうとしたり、全部恋愛関係に話を進めようとする深春に総司は改めて否定した。
「一緒に買い物をするってことは、それなりに仲が良いのよね?」
「まぁな。趣味が合うし、クラスメイトっていうか友達として、色々料理とか教えて貰ってるんだよ。買い物もその一環だ」
「なるほどねぇ。そうだ、真白ちゃん。この子適当な生活をしてるでしょ? 私、それが心配でね。お部屋とか汚部屋にしてたらお説教タイムなのだけど」
「部屋の方は綺麗、だと思います。片付けたり掃除をするのはあまり上手じゃないですけど」
「もしかして、その辺のお世話も真白ちゃんがしてくれてる感じなの?」
「一度、片付けを手伝ったことはあります」
質問の対象は総司から真白へと切り替わり、深春は総司の生活の様子について彼女を通して知ろうとする。
真白も素直な性格なので、正直に総司の普段の様子ついて話している。
一人暮らしをしているというのに、片付けや掃除、料理が出来ないことはあまり知られたくないが、この際仕方がない。
これを戒めに彼はもう少しだけ努力するか、と二人の会話を見守る。
「うんうん。よく分かったわ。色々教えてくれてありがとう真白ちゃん。あなたみたいな器量の良い女の子に巡り合えて総司も幸せな事だと思うわ。どう? このまま貰ってくれないかしら?」
「え、えっと…………」
「いらないだろ。こんな安っぽい物件」
「そ、そんなことないけど」
「ほら、極夜が困ってるし、母さんもそろそろ落ち着けよ」
いらないものを押し付ける感覚で深春が言えば、真白は見るからに困惑していて総司も自虐的に自分を評価して苦笑する。
そもそも、真白のような優等生と多趣味な以外、平凡極まりない自分が彼女と釣り合うはずがない。
一応、真白はフォローしてくれているが、どう思っているのかはなんとなくは想像が付く。おそらくは距離が近い友人程度なものだろう。
ただ、それに何か不満があるわけではないが、男として見られてないかもと思えば地味に複雑でもある。
そんなちっぽけな自尊心を守りたいがために、彼は母を窘めようとした。
「そうね。これ以上問い詰めてもしょうがないわ。今日の所は出直すとしましょ」
「ぜひそうしてくれ。まぁ心配して様子を見に来てくれたのはありがたいけどな」
深春は両手を広げ仕方ないと言った様子で言う。
面倒くさいことにはなったが、それでも自分を心配しての事だ。総司は総司で感謝の言葉を口にしておく。
「じゃあ、真白ちゃん。息子をよろしくね? きっと総司の事だから目を離すとだらしない生活をするはずだし、お友達として注意してくれるとありがたいわ」
「あ、はい。ちゃんと見張っておきます」
「んふふ。ありがとう。仲良くしてあげてね。それと、総司。真白ちゃんに甘えちゃ駄目だからね」
「分かってるって。そこは線引きしてる」
「そう、じゃあその辺については私から言うことないわ。またね。勉強もそうだけど、プールとか海とかお祭りとかイベントいっぱいあるんだし二人共、夏休みを楽しむのよ」
ようやくお帰りらしい。
深春は二人にいくつか言葉を残すが特に真白には優しく微笑みつつ言って、その後総司に釘を刺す。
小言に加えて、夏休みを楽しむようにも伝える。
未だに真白との関係を期待しているようだ。残念ながら、彼女とはそうはならないだろう。
総司は心の中で、「母よ。アンタの期待してることは何も起こらないぞ」と思いながら深春を見送る。
「今度来る時は連絡しろよ」
「んーどうしようかしら」
席を立ち踵を返す母に向かって総司は二度とややこしいことにならないよう、注意をするのだが、彼女は人の悪い笑みを浮かべて去って行った。
「まったく。息子で遊びやがって」
「ふふっ」
本当に困ったものである。
疲れながら彼が小さくため息を付けば、真白が親子の微笑ましい光景にクスリと笑みを溢した。
夏休み編らしくない話が続きましたが、次回以降ぐらいから本格的に夏イベントを盛り込んでこうと思いますので続きをお待ちください。
次回は二日後の更新になると思います。
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