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Neoネくら魔's  作者: Reサクラ
勇者編
20/21

第19話 Dulce et Decorum est(前編)

 世界規模のクモの巣――ワールド・ワイド・ウェブのイニシャルでWWWとなるわけだが、つまりインターネットとはクモの巣のように広がった網目状の電子通信ネットワークそのものなのである。


 しかし俺が言いたいことは、そんなことじゃない。

 女郎蜘蛛という言葉には何かしらのエロスが内包しているということだ。

 何故だろうな、実際は単なるデカいクモだ。正直、気持ち悪い見た目をしていると思う。もちろん、世の中にはクモを好きな連中がいるのは知っている。

 タランチュラとか? もっとでかくてボリュームのあるのとかを飼育している奇特な人間の存在も知っている。

 ただそういった一部少数の意見はさておいて、本来なら何ら魅力を感じるはずのない虫――あれ、クモって生物学的には虫じゃないんだっけ? 脚も八本あるしな。でも昆虫じゃないだけで、虫ではあるんだっけ? 俺ファーブルじゃないし、別にそもそも虫に興味がないからなんでも良いわ、昆虫でも虫でも蟲(※1)でもなんでも――なのに、女郎蜘蛛っていわれると、巨乳でセクシーな大人のお姉さんが脳裏をかすめる。


 これは一瞬の洗脳的、サブリミナル効果に他ならない。

 あらゆるメディア媒体――ここで言うのは漫画とかアニメとか特撮ヒーローものとかそういうの全般から葛飾北斎筆頭とした春画も含むものとする――が女郎蜘蛛をセクシーな女性として表現してきた結果であり、これは先ほどいったように、ある種の洗脳、メディアの力がどれほど恐ろしいものかと、そういうことなのである。


 だからゴブリンがイコール緑がかった気持ち悪い小柄で汚らしいおっさんという存在も、あらゆるメディア媒体が創りだしたはずである。


 もともとヨーロッパの民間伝承で伝っていた、日本で言うところの妖怪のような存在だが、向こう的に言えば精霊とか妖霊とかもしくは悪魔的な何かなんだろう。

 俺はもともと洋モノと国産品で言えば九割方メイドインジャパンのポルノを愛用する傾向がある。それとは因果関係はないだろけど、ヨーロッパの事情にはあまり詳しくないわけで、実際ゴブリンがどういう位置づけの存在かはよく知らない。


 ゴブリンってのは、唐傘オバケとかろくろっ首みたいないわゆる一軍選手なのか?

 唐傘オバケとかろくろっ首はビジュアル的にかなりわかりやすいし、妖怪的な要素を詰め込んだ存在だ。人気――と言っていいのかわからんが、知名度があるのは充分わかる。


 けどゴブリンって何?

 多分ロード・オブ・ザ・リング(ホビットの冒険?)とかが一番有名なゴブリンを扱った作品だと思うけど、正直映画版を見た限りじゃどれがゴブリンでどれがオークでどれがドワーフだったのかすら良く覚えていないし、それぞれの違いもほとんどわからない。つうかゴブリンっていたか?


 でもまあ、ゴブリンは、かなりざっくりとした言葉だと、子鬼って感じだと思う。


 小汚い緑色の子鬼。これが端的なイメージの集合だろうけど、緑の部分はどこから来たのか、というとゲームか何かなんじゃないかな。俺はモンスターと闘うタイプのゲームはよく知らないが、エフエフだかエロエロだがそんな感じの有名なゲームではゴブリンとかオーガーとか出てくるって聞いたことがある。

 ゲームってのは今でこそ鮮やかなグラフィックで楽しめるものだが、昔はドットでモンスターを表現していたわけだから、わかりやすい色が必要だったんだろう。ドットだと人間もゴブリンもシルエットに大差なかっただろうからな。


 さて話を戻そう。

 こうしたゴブリンを創りだしたのは、あらゆるメディア媒体――そして、数々の歴史なのだろうけれど、少なくともそれらは全てこの世界で行われたことだ。

 これは何の間違いもない。


 では、俺が屋上からあらよっと落ちて、ほいよって転生した先の異世界で出くわしたゴブリンはなんだったのか?


 俺は一目見て、あいつらがゴブリンだとわかった。

 それだけじゃない、ドラゴンとかホンジャホンジャとか、こっちの世界でもよく知られたモンスターがたくさん出てきた。

 すべてこっちの世界で一般的に知られた――特にそういった知識に造形深いというわけじゃない俺でもわかるレベルで――姿そのもので、特徴もほとんど一致していた。

 ゴブリンが服を着ていない――とかそういう些細は違いはあったけれども。


 あの異世界にいたゴブリンは何だったんだ?

 まさか偶然の一致でもあるまい。


 そして、魔法を使うための古い妖精語がこちらの世界で使われる言葉とほとんど同じだったこともそうだ。


 この世界には裏があるのではないか――?


   ◆


 ――というような小難しいことを俺が特段考えるわけもなく、自称名探偵の広瀬がそんなようなことをいっていただけのことだった。

 良し、さっきまでのは全部忘れてくれな?


 だけど、同意せざる得ないこともある。

 今俺の身に起きている不条理な現象に、何らかの作為的なことがあることは確かだ。


 偶然や勘違い、まして夢や幻などであるわけもない。

 ――もっとも、これが広瀬の言うように魔法のせいだって言うなら、魔法が夢とか幻とかとどう違うのかってははっきりと名言はできないけれど。


「何もさ、さっきの話みたいに世界を丸々一つ創ったわけじゃないんだよ」

 と広瀬はどこから取り出したのか、水色のスーパーボールを片手に言った。それどっから出した?


「ほんのちょっとだけだよ。表面をなでるように、世界を少しだけ変化させたんだよ」

「魔法にそんな力があるってのか?」

 俺は聞き返した。

 当然、天才美少女魔法使いの俺にはこんなこと聞かなくたってわかる。

 答えは、イエスでもノーでもない。ノーマン(※2)? いや、これも違う。


 魔法とは呪文と魔力の強さ次第で、その力もある種の無限大である。


 だが呪文にも魔力にも限界がある。

 つまり一日に二十回できる絶倫プレイボーイだって世の中にはいるが、おそらく誰にだって百回は無理だ。俺だって無理。そんなことしたらノッキン・オン・ヘブンズドア(※3)ってなもんよ。


 ま、そこらのジャリボーイじゃ三回もできれば充分だろうね。俺みたいなイケメンだち三回だけじゃ抱いてくれって言い寄ってくる女の子たちの数と比べて圧倒的に足りなくて問題になってしまう。

 しかし心配ご無用俺は――と、具体的な数字は控えておこうか。俺も、自分で自分の限界は決めたくないからな。女にせがまれて、応えられない男にだけはなりたくないんだ。


 なんてかっこうをつけたって、やっぱり百回は無理だ。


 でまあ、シコ猿のみなさんにおわかりいただけるのかは些か不安ではあるが、とにかく魔法も一緒で、際限があるってこと。


 だから世界を変える――なんて言う大げさな表現に対しては、そんなことはできない、というのが答えなはずであるが、表面を少しだけ変化――と限定的なことであれば、魔力と魔法使いの呪文の腕前次第でどうにかなるのかも知れない。


 俺が世界を転移したのだって、そこらの魔法使いには不可能なことだった。

 俺という天才美少女魔法使いと、魔王から奪い取った莫大な魔力があって初めて実現できたことだと言えるだろう。

 その他のカレーとかアイドルのサインはオマケで、おそらくこれくらいなら一般的上級魔法使いならどうにかなるのかも知れないが――いや、待て、これカレーはぎりぎり実現したけど、アイドルの――罪作鏡子(※4)のサイン! 俺は忘れてねえかんな、おい、苦情はどこに言えば良いんだよ!?


 そうや、エアコンのフィルターの掃除とかも頼んだけど、これはどうなったのか確認すらしてないし、今後もするつもりはない。どうでもいいわ。


「言ったよね? 僕の世界の魔法は君のところとは違って、もっと大々的なんだよ。だから魔方陣をどんどん大きくしていって、力を込める術者の数も増やしていけば――理論上はどんなことだってできるんだよ」


「どんなことでも?」


「君はそういうことしか考えられないの?」

 俺がどんなことを考えたのかは一々説明しないぞ。ザッツオール。話を進めよう。

「だから世界を滅ぼそうとか、自分が神様になろうとする――そんな連中だっていたよ。でもやっぱりさ、そういう大それた願いってのは難しいんだよね。準備とかそりゃ何十年とかけなきゃいけないし、目立つから、邪魔に入る連中もたくさんいる」

 ふーん。

 もしかするとこいつは、そのどこぞの異世界でそういった世界を自分の好き勝手にしてやろうってヤカラと戦っていたのかも知れない、となんとなく思った。というか王道っぽい展開だしな。

 そんで相手の計画は失敗させられたけど、魔法の暴走的なものに巻き込まれてこっちの世界に――みたいな?


「あーあ、あとちょっとで世界を滅ぼせたんだよなぁ」

「え? お前そっち側?」

「嘘だよ。君のバカらしい妄想が聞くに堪えなかったから、止めに入っただけだよ」


「で、お前の世界ならできたってのはわかった。別に疑うつもりはないよ」

 お前の存在は疑いたいけど。

「それでさ、こっちの世界で――俺の周囲を魔法で変えているやつがいるってのか? でもどう考えたって、魔方陣なんてねえぞ? そんなもんこの世界でやったら直ぐマスコミがカチ込んで来るからな。わかんねけど、どうせナスカの地上絵みたいな魔方陣が必要になるんだろ?」

「そうだね、ほんの少しでも、世界そのものに変化をもたらすなら」

 つまり、赤須暗真という存在を元から美少女であったと書き換えるためには――ってことか。

「多分、この星が丸々埋まるぐらいの魔方陣が必要になるだろうね」

「で、デカすぎだろ……」


 初めて黒人男優が出てくるポルノビデオを見たときと同じ感想だった。

 恐怖――憧れ、嫉妬を越え、同じ人間であるのか? 俺はこんなやつらと戦っていけるのか? ――という感情とは別に似ても似つかわしくもないんだけど、口から出た感想は同じだった。

 ちなみにゴブリンのそれも同レベル。身体のサイズとの比率でゴブリンたちのがヤバい感じしたけどね。


「待て待て、それじゃあ直ぐに限度が来るじゃねえかよ。この星の人間全員の協力と、この星いっぱいの魔方陣があっても世界を滅ぼすとか無理なんじゃねえの?」

「まあ、大地に魔方陣を書こうとしたらそうだよ」

「は? なに、紙とか粘土板にでも書くわけ?」


「もっと大きくて――それこそ無限に広がるものがあるよね?」

「まさか、……性欲!?」

「空だよ。もっと言うと、宇宙ってことになるのかな」


 なるほど、宇宙ね。でも紙も四十回折ると月に届くって言うし、ほぼ正解みたいなもんだろ。

「全然違うから。それに性欲って何? 面白いと思ったの? それとも本当に正解だと思ったのかな?」

 うるせえな、俺の無限の性欲で黙らせてやろうか。

「でも待て、どうやって宇宙に魔方陣なんて書くんだよ? 星座じゃねえんだろ? あっちとこっちの星がつながってトリケラトプス座ってか? そんなもんなのか魔方陣ってのは」

「違うよ。魔法を使って、空に魔方陣を書く。つまり巨大な魔方陣を書くのにもっと小さな魔方陣をたくさん――百や千じゃない――万や、あるいは億もの魔方陣を書いて、無限に広がる大空に途方も無い巨大な魔方陣を造り上げるんだよ――理論上、限界がないけれど、至るまでの労力も同じく底が見えないものだろうね」


 なんとなくはわかるが、想像を超えてきたので深入りしないで置こう。

 というか、こいつは本当に世界滅ぼそうとして、そういうアホなことしてたわけじゃねえよな?


「で、同じように空だか海だか、まあどっかに魔方陣を書いた奴がいるってのか?」

「いないと思うよ。だって本当に、本当にすっごく時間も力も必要なことをして、どうして君にしょうもない嫌がらせをするっていうんだよ」

「……まあ、そうだな」


 俺は世界レベルのイケメンだし、今でも異世界レベルの美少女だけど、流石にそんなすげえ労力を払ってまで嫌がらせする価値のある人間とは思えない――というかそんなに恨まれていると思いたくない(※5)。

※1 蟲

蟲もなんかエロい。でも俺は触手とかそういうのあんまり好きじゃない。正直いうと中学くらいの時に犬とやってるポルノビデオを見たことがあって軽くトラウマがある。異種姦的なのは昔から苦手だったわけだ。ゴブリンとかドラゴンとか関係なくな。


※2 ノーマン

70点未満の――ああ、忘れていいって言ったな。思い出さなくていいぞ。


※3 ノッキン・オン・ヘブンズドア

余命わずかの男が二人の女の子と同時にセックス(3P)するために波瀾万丈の大冒険をするスペクタクル映画。下着姿で縛られる女性警官が最高にエッチだった。名作だから見てくれよな。


※4 罪作鏡子(ツミツクリ・キョウコ)

おっぱいの大きさと形だけは一流の三流アイドル。つまり、俺にとってはトップアイドルってこと。あープロデューサーになりてえなあ、パイタッチして怒られてえよ。グッドコミュニケーションしてえよ。


※5 そんなに恨まれていると思いたくない

人間生きていれば、多かれ少なかれ誰かに嫌われ憎まれるもんだ。俺みたいなイケメンだと嫉妬を買うことはよくあるし、大切な女性を悲しませてしまうこともある。だからこそ、俺はその分誰よりも人を――女の子を愛していこうと、そう思っているわけなんだ。だから浮気とかじゃない。わかるだろ?

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