夢の中のひと
連続投稿です。
アルバート視点になります。
穏やかな眠りの中、アルバートは夢を見る。
――美しい女性が笑っている。
長い金の髪を揺らし、薄青い瞳を細めて。
それは微笑みなどではなく満面の笑み。
柔らかな色彩を纏っているその女性は、たおやかな外見なのに儚い印象は皆無で、表情をくるくると変えて活動的に跳ねまわっている。
時折見せる怜悧な眼差しが‘僕’をゾクリとさせた。
人の上に立つ者の瞳
‘僕’は憧憬と羨望と嫉妬を感じながらも彼女に惹きつけられてゆく。
幼さを残す顔は出会った頃だろうか。
警戒と少しの好奇心を含んだ眼差しで、背後に同じ年頃の男女を庇っている。
澄んだ美しさと強さを持ち合わせた良い眼
やや時を経て、同じような淡い色彩の子どもたちに囲まれて遊ぶ彼女と‘僕’。
子どもに交じって遊んでいたかと思えば、‘僕’と肩を並べて睥睨するその横顔から目が離せない。
彼女は本物だ
器の違いを見せつけられたような気がして打ちのめされたりもしたけれど、妬む気持ちは憧れにすり替わり、好意に発展する。
どうしたら彼女を手に入れられるか
情緒的とは無縁な集団に囲まれた健全な日々を縫って、二人で会う時間を捻出してゆく。
例えば彼女の知らない菓子で釣ったり、料理を教える……つもりが振舞う一方になっていたり、珍しい本が手に入ったと誘ったり、剣の手ほどきをしたり。
涙ぐましいまでの努力の日々は徐々に報われてゆく。
甘やかな一時。
うっとりと身をゆだね、ゆっくりと眠りから浮上する。
――目覚める直前、緑の閃光が横切ったような気がした。
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