待ち続ける由
あれ……?おかしいです。
これもほのぼのギャグテイストになる予定でした。
なのに……予定は未定であり、決定ではない!
って、ことでご容赦いただけたらと思います。
週に一度の休日を、森の小屋で過ごすアルバート。騎士見習いを経て従騎士になった彼は少年から青年にさしかかり、長身を持て余すように居間の長椅子に凭れ本を読んでいた。
その背後から、妙な節回しの声が掛かる。
「もっし、もっし、アルや、アル坊や~」
「そろそろ坊やは止めて頂けませんか?」
本に落としていた顔を背後に向け、無表情で言い放つ。
「おやおや。いつの間にこんな慇懃無礼な子になった事やら」
大げさに肩をすくめて見せるDに溜息を吐きながら低い声で聞いてきた。
「……いつからだと思います?」
それを聞かなかったかのように、芝居がかった仕草で頬に手を添え、続ける。
「遅い反抗期かの」
「いつからだと思いますか?」
問いを被せたアルバートから、心なしか冷気が漂ってきた。慌てたDはエヘっとばかりに小首を傾げる。
「い、いつかまえ(5日前)、からか?」
アルバートから一気に力が抜ける。手に持っていた本をサイドチェストに置き、背後の人の手を引いて正面へ導いた。
「は~、もういいです。で?」
「ふむ?」
「何かご用があったのでは?」
「そうそう!しばらく使っていなかった器具が見当たらなくてな。心当たりは無いかの?」
「どんな器具ですか?」
「こんな……」
手でフラスコを二つ繋げた形をなぞる。
「ああ、それですか。ずーっと使っていなくて、台から落ちそうになっていたから、落として割る前にここに避難させましたよ」
言いながら居間の隅の戸棚を漁り、ご要望の品を探り当てた。
「素晴らしい!助かったよ!!」
喜色満面のDがそれを受け取る。
「で?」
アルバートの眼鏡がキラリと光った。
「はえ?」
少々間の抜けた声とキョトンとした表情のDを薄笑いで見下ろす。
「お礼は?」
「?助かった?」
「それではなく」
「ありがとう?」
「何故、疑問形?そうではなくて――こちらが良いです」
両手がふさがり咄嗟に動けない相手に、屈んで軽く口付けをした。
「ぉおおおおおおおおお主は幼女趣味か?!」
器具を放り投げて後ずさるDと、素敵な反射神経でそれを受け取るアルバート。
何事も無かったかのように本の横に器具を置き、壁を背にしたDを腕の中に囲う。
「Dは260歳でしょう?」
何かを求めて探るように、あるいは確認するように、紅と黒の瞳が細められた。
「そうだが……見た目は少女だ」
「でも、この額飾りが無ければ20歳位になるんでしょう?」
額の鎖を人差し指ですくい、つっと滑らせ紅い石をもてあそぶ。
「外せれば、な」
「どうしたら外れるの?」
「禁呪が解ければ外れるの」
「どうしたら禁呪は解けるの?」
「術者が滅すれば、あるいは……」
「じゃあ、その術者は、何処に居るの?」
お互い瞳を逸らすこと無く交わされた遣り取りが、沈黙に変わる。
先に目を伏せたのはDだった。
「知らぬ」
Dの視線を追って腰を屈め、若干見上げてくる目は力強かった。
「全く心当たりは無いの?」
「全く、無い」
言い切られて初めて、黒い瞳が揺れる。
「だから私は待っている」
続いた言葉にハッとして、黒い瞳に再び力が燈る。
「あ奴は必ず私の元に、来る」
厳然と言い放った紅い瞳は、決意に満ちていた。
そして若干重めの話は長くなりがちです。
誤字・脱字・意味の読み取りずらい表現など、ございましたらお知らせいただけると助かります。




