外せない円環
連投します。
模擬戦の直後、先程まで斬り合っていた相手が、好奇心むき出しのきらきらしい瞳で訊いてきた。
「アルバートもステディが出来たのか?」
「はい?」
軽く汗を拭っていたタオルから顔を上げ、眼鏡を掛ける。
「とぼけんな!小指のリングだよ!」
指された左手の小指を自身でも確認して、苦笑する。
「これ?違いますよ。ただの痣」
かざされた甲をマジマジと見て、肩透かしを食らった学友はあからさまに落胆した。
「へ?あれ、本当だ。っかしいなぁ。さっきは銀色に光って見えたのに」
「ところで僕『も』という事は、すでに誰かしているんですか?」
アルバートをからかう材料を探していたらしい相手の気を逸らさせるために水を向ける。
「あ?あぁ、この前ボンズが浮かれててさ」
普段うわさ話などしないアルバートに、軽く驚きつつも話を続ける。
「大変だったらしいぜ?それまでは、ふさぎ込んだり胃を押さえてたりでイジイジと鬱陶しかったのが、現金にも有頂天になったって、奴の友達連中が愚痴ってた」
「へぇ」
話を振った当人は、元より興味の無い話題に素っ気ない返事をする。そんなアルバートを苦笑しながら見やり、
「ま、お前がそんな浮いたり沈んだりするとこなんて想像できないけどな!」
学友は悪意無く笑った。
それに薄い笑みを返すに止める。
「浮いたり沈んだり……?あの人相手だと、そんな生易しい物では無い気がする……」
立ち去る学友の背に、服の上からそっと上腕のそこをなぞりながら呟いた。腕輪の意味を思索しながら。
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